ディア・セーナン ~~~人体から魔力(マナ)の抽出に成功~~~
2018/10/13
全面的に手直し。
まったく別物になりました。
952年、9月4日となりました。
本日も、ワタクシが異世界ニュースをお届けいたします。
解説はみなさまもお馴染みの
「俺だ」
よろしくお願いします。
では、トップニュースです。
~~~人体から魔力の抽出に成功~~~
魔力が血液に宿るというのは樹歴935年に大魔術師コンラドラーが発見して証明しましたが、今回のニュースはより大事件となっているようですね。
「ハッキリ言うと、これで魔術の在りようが変わるからな」
と言いますと?
「今までの魔術は、魔術師の魔力総量に依存していた。しかし、これからは特化した個人ではなしに、人数に重きが置かれることになるということだよ」
もうすこし詳しくお願いします。
「星降らし、という大魔法を知ってるか?」
世界樹の実を落とす、伝説の大魔術ですよね?
「そう、大魔術だ。曰く魔力を万単位で消耗するらしい」
万、ですか…。
とんでもないですね。
「とんでもない、からこそ伝説なんだ。しかし、それも変わる。今までは万もの魔力を必要とする大魔術は、それだけの魔力総量をもった大魔術師しか行使できなかったが、これからは魔力総量が低かろうと、人数さえ揃えてしまえば、星降らしを連続で発現することすら可能になった」
なんとなく分かりました。
つまり万の魔力総量をそなえた大魔術師がいなくても、100の魔力総量しかもたない落ちこぼれを100人集めてしまえば代用が利くようになるということですね?
「そういうことだ。これからは魔術を大量に使用する時代になるだろう」
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まるで地獄だった。
心臓と頭さえあればいい。そう判断されて四肢を切り落とされた裸の男女が100メルの小屋の向こうまでズラリと転がされている。
そんな彼等彼女等の心臓付近には太い注射針が打ち込まれて、常にチューブを伝って血液が抜き取られていた。
血…魔力を抜き取っているのだ。
「う、ううう…」
怨嗟の声。
嘆きの声。
彼等彼女等はれっきとして意識を保っていた。
魔力は死者に宿らず、同様に、意識なき肉人形にも宿らない。
だから、薬で強制的に覚醒を促されていた。
「う、ううう…」
自死できぬように舌を抜かれているので、喋ることすらできない。
ただただ。
血走った眼で。
わたしを、睨む。
「ヒッ!」
情けないことに、わたしはたたらを踏んで尻餅をついた。
「お怪我は?」
震えるわたしに、手が差し出される。
護衛の騎士だ。
わたしは助けを求めるみたいに、その手に縋りつた。
「こんなことになるなんて!」
想像だにしかなった!
わたしは救いたかったんだ。
魔力総量が少なかったせいで、貴族の家を継ぐことが適わなかった幼なじみ。
魔力総量が少なかったせいで、市井に捨てられた弟や妹。
あの子たちを必要とする世界にしたかっただけなのに…。
「う、ううう…」
わたしのせいで世界から必要とされるようになった1人が、憎悪の表情でわたしを睨む。
「あなたは…」
あの幼馴染なのですか?
それとも。
幼い頃に生き別れた、わたしの弟なのですか?
この地獄のなかには、果たして妹もいるのでしょうか?
わたしは騎士の手を借りて立ち上がった。
改めて地獄を見る。
これは
「わたしのつくりだした世界だ」
もう逃げられない。
護衛の騎士は、わたしが起き上がった後も、手を放すことが無かった。
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〇樹歴952年
魔力保有者から血液を抜き取る施設が大陸各国で建設され始める
あわせて市井におちた貴族を国が強制収容するように
〇樹歴955年
ルコニア国とアラゴス自由都市同盟が干戈を交える
この戦争で互いの国が大魔術を使用。ルコニア国は王城を含む広範囲が底の見えない地底に沈み、アラゴス自由都市同盟は中心都市ヘパに被害。ヘパ市そのものは無事であったが、住民8500人が消失してしまう事態に。
のちにこの戦争は『はじまりの戦争』と呼ばれるようになる
〇樹歴956年~
大陸の各国で戦争が連鎖して起きる
大魔術が乱発され、大陸はまたたくまに荒廃した
〇樹歴959年
4年にわたる動乱が自然終結する
大魔術の乱用によって、2000万から3000万人が死亡
これは大陸人口の約3割に相当する
〇樹歴960年
各国の血液抽出施設で相次いで収容者が蜂起
もはや国に対応するだけの余力はなく、貴族や王族が捕らわれ、私刑を受ける
〇樹歴967年
人体から魔力を抽出させた天才、ディア・セーナンが捕縛
世界を崩壊させた魔女として、協会がディアを糾弾
罪状1級の罪人として、生きながら海へと流される罰をディアは受ける
〇樹歴968年
協会が世界平和宣言
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ディア・セーナン。その絵姿は現代にも残っている。
如何にも繊細そうな金髪の女の子。
齢12歳にして世界的な発見をした天才にして、世界を崩壊させた魔女の姿である。
違う!
これだと