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秋葉の空  作者: 毒舌メイド
第三話 プリティフェイス“天使”
23/34

釘宮、覚醒!



残りのページ数も少ないから、途中経過は省かせてもらう。この空白の間に僕の黒歴史が五つほど増えてしまったけれど、それはそのうち後続が決まったら紹介させてもらうとしよう。あまり思い出したくはないけれど、いつか何かの拍子に掘り返されることがあるかもしれない。



そんなわけで、無事に試験を終えた僕らは職員室へ向かっている。生徒会選挙への出馬申請をするためだ。



そう、野々山も釘宮も見事に赤点を回避してくれたのだ。といっても、去年習った部分なので赤点をとること自体が論外だったわけだけど。野々山なんて全教科で満点をとる極端な結果を残し、結果が廊下に貼り出されたときは学園を震撼させた。まさか教えた僕よりも順位が上だなんて。



ちなみに僕は二位で、釘宮は八位。全員が上位十名に入る快挙となった。それに、これから生徒会長に立候補しようというのだから学年一位という今回の結果は選挙活動において大きな武器になる。



明日の朝には立候補者が朝礼で紹介され、イメージアップ作戦が本格的に始動する。そんなことを考えながら、自宅に歩いていたのだけど。



「どうしてお前らは未だに僕の家に居座ろうとしているんだ?」

 


二人は僕の隣を離れようとしないのだ。



「試験が終わるまでの契約だっただろう? もう僕の家に泊まる必要ないじゃないか」



「そないつれんこと言わんといてやぁ。あたしら友達やろぉ? 友達の家に泊まりに行くのに理由なんていらへんやんか」



「いや、お前らの場合は泊まりに行くんじゃなくて居座ってんだよ!」

 


試験のストレスから解放された釘宮は口調がエセ関西弁になってしまうくらいキャラがブレていた。野々山は序盤から性格が幼児化するし、お前らキャラ設定とか無視し過ぎだろう。当初、他人に無関心だった僕が言えることじゃないけどさ。でも野々山は基本、無口というルール(?)は今でも守ってくれているみたいだ。っていうか、いきなり釘宮並に話されても引くんだけど。



釘宮も今さら口調を変えるのは語り部である僕と、ここまで辛抱強く読み進めてくれた読者の皆さんに迷惑だからやめてくれ。



「ただいまー」



「……ただいま」

 


お前らマジで自宅へ帰れ。



「あら、おかえりなさい」

 


どうして母さんまで馴染んでいるんだよ! 二階の自室へ上がり、当然のように入ってくる二人を恨めしく睨み、小さく嘆息する。言って聞くような奴らなら初めから素直に自宅へ帰っているよな。



「ほな、始めよか。これよりこの部屋は秋葉ちゃんの生徒会役員選挙対策本部とさせていただきます!」

 


ほら、もう勝手に話が進んでいる。もうツッコむ気も萎えたよ。



「まず我が紅白学園の生徒会役員選挙についておさらいしましょう」

 


突然、真面目な口調になった釘宮がまとめた生徒会役員選挙の仕組みはこうだ。



生徒会長に立候補した者は最大二人まで自分を支援する補佐をつけることが出来る。補佐に選ばれた者は、選挙当日に立候補者のスピーチ(立候補者は十分間)の前後に五分間だけ助演説をすることが出来て、実際にそれは意外に効果があり、助演説によって得票数を増やしたという例は過去にたくさんあるらしい。つまり、優秀な補佐を選ぶことも選挙を勝ち抜くための手段なのだ。



そして、副会長は会長に当選した者の指名で決定する。歴代の生徒会長の中には野々山可憐の名前もあり、その代の副会長は釘宮早苗、つまり釘宮のお姉さんが務めていたそうなので、詳しいことは可憐さんや釘宮に聞くのが一番早いかもしれない。その他の役員は会長の推薦や、立候補によって募集されるそうだ。



ちなみに任意の役員とは違い、副会長に指名された者には拒否権がなく、有無を言わさず就任が確定するという恐ろしいシステムらしい。一年以上もこの学園に通っているのに僕はそういう事情をまったく知らなかった。っていうか、僕には無縁の話だったから知ろうとしなかったというのが正しい。



「というわけなんや」

 


いつまで関西弁を続けるつもりだ。



でも、これなら不器用で自己アピールが苦手な野々山にも好機があるというわけだ。優秀な補佐さえ味方につければ勝機はある。



「ちなみに秋葉ちゃんの補佐はあたしとママだから」



「え?」



「……申請書にもう書いて提出した」

 


少しくらいは手伝うつもりでいたけれど、まさか強制参加だったとは。



「まずは宣伝ポスター作りからよねぇ。デジカメあるからポーズとってね」

 


言いながらいつ用意したのか分からない襷を野々山の肩にかける。赤い襷には『野々山秋葉でございます』と白い文字(この可愛い文字は釘宮のものだろうか)が書かれてあった。どうしてだろう、おバカキャラだったはずの釘宮が今はとても手際が良い。っていうか、優秀過ぎる。試験のストレスってここまで人格を崩壊させるだけの破壊力をもっているのだろうか?



撮影係に任命された僕は、野々山にデジカメを向ける。



キメ顔(もちろん無表情だが)で腰に手を当て、右手でこちらを指差したところをまず撮影。なんだろう、よく知らないけれど、これが王道という感じなのかな?



撮影された画像を三人で覗き込むと、これはこれで様になって見えるから不思議だ。



「全然ダメね。インパクトが足りないわ」

 


いきなり監督(釘宮)のダメ出しが入る。



「どこがだ? 僕はこれ結構いいと思うんだけど」

 


欧米風の大袈裟な溜息を吐いて肩を竦ませた釘宮の目はいつになく真剣だった。お前、マジでキャラがブレまくってるぞ。



「分かってないなぁ。こんなんじゃ普通すぎるのよ。突き詰めれば王道と言えるけど、今の秋葉ちゃんに必要なのは王道じゃなくて、他の候補者を圧倒するインパクトだと思うのよ。実際、秋葉ちゃんは出馬するだけでも十分なインパクトがあるはずなの。それなのにポスターが普通過ぎるとそれだけで生徒たちの期待を裏切ることになりかねないのよ」

 


パねぇ。釘宮さんマジパねぇわ。こいつってこんなに頭良かったっけ? もしかして、この数日の勉強会で彼女の中に眠っていたカリスマ性が目覚めたのだろうかと感心した僕だったけど、次の台詞を聞いてそれは落胆へと変わる。



「秋葉ちゃん、ちょっと座ってみて。いや、そうじゃなくて足は横に流して……うん、上半身は手をついて支える感じ」

 


ちょっと待て。これって僕のベッドの下に眠る秘蔵のグラビア写真集でよく載っているポーズだよな? でもとりあえず撮影。



「まだ弱いわねぇ。秋葉ちゃん、シャツのボタンを二つ外してみようか。そう! いい感じ」

 


言われるままに野々山はボタンを二つ外してリボンを緩める。シャツから覗く谷間が彼女の艶かしさを強調していた。さらに要求はエスカレートしていく。スカートを太股が見える位置まで上げ、ブレザーを着崩すなど、野々山がだんだん剥かれていく。



これ以上剥かれてしまう前に一枚。こんな姿を撮られて恥ずかしいのか、頬が朱色に染まっているところが彼女の秘められていた妖艶さに磨きをかけているようで、何の撮影をしているのか目的を見失いそうだ。っていうか、釘宮は既に目的を見失っているだろう。



途中からは部活から帰ってきた妹も加わって、完全に趣旨を間違えた着せ替えファッションショーになってしまった。



総撮影時間、二時間半。撮影枚数は二百六十七枚に及んだ。



そして、僕が流した鼻血の量が致死量に至る手前で、夕飯の支度が整ったので撮影会は中止となった。危うく失血死するところだったぜ。



いるはずがないだろうが、野々山ファンのためにいくつかご紹介しよう。



学生服から脱皮した野々山は、たらこ、ビキニ、浴衣、巫女装束、ナース服、ミニスカポリス、スケバン、メイド服、チャイナ服、OL風、初○ミクなど多彩な要求に応じたのだった。中でも浴衣とビキニとミニスカポリスは個人的にヤバかった。可憐さんの妹というだけあって、素のポテンシャルが高いこいつの浴衣は特に破壊力が高かった。



ちなみに衣装提供はすべて僕の妹このみである。まさか妹にコスプレの趣味があるとは知らず、というか知りたくもないことを知ってしまった気がするけれど、この画像は一生デジカメから削除されることはないだろう。何故なら僕が死守するからな。万が一に備えて後でパソコンとスマホにも画像をコピーしておこう。



「やっぱり最初の王道スタイルが一番かな。ごめんね、あたし途中から暴走してた」

 


結局、最初の一枚が採用された。っていうか、お前が暴走していたのは始めからだろ。



「僕の二時間半と大量に失われた血液を返しやがれ!」

 


同じく暴走して興奮のままにシャッターをきり続けた僕が言えることじゃないけどさ。



またいつか浴衣着てくれないかな……なんて下心を抱えながら、今夜の夕飯も終始賑やかなものだった。



今夜は見たいバラエティ番組があったので野々山たち(お馴染みの三姉妹となりつつある)が先に入浴している。いつまでこの共同生活が続くのか分からないけれど、今回の展開からすると恐らく選挙が終わるまでは同棲することになりそうだ。釘宮いわく、姫島家が対策本部らしいからな。

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