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秋葉の空  作者: 毒舌メイド
第二話 ベビーフェイス“正義”
20/34

女が三人集まると姦しい。四人になるとやかましい



というわけで午後六時半。



姫島家の門前には僕を含めて三人が立っている。どうしてこうなってしまったのかな。僕の本能が正しければ新たな修羅場が待っている予感がする。



マジで不幸体質なんじゃないだろうか? 幻○殺しの能力に目覚める日もそう遠くない気がする。と、現実逃避はここまでにして。



さて、母さんと妹にどう説明しよう? いっそ開き直って嫁候補が増えましたとか爽やかに言ってみるか?



どこのエロゲだってコブラツイスト極められそうだな。っておい、野々山! まだ考えがまとまっていないのに勝手に玄関を開けるなよ!



「……ただいま」

 


お前、マジで帰れよ!



「おかえりなさい。遅かったわね。あら、そちらの子は?」



「初めまして、釘宮志穂です。あたしも勉強を教えていただきたく、馳せ参じました!」

 


馳せ参じるって時代劇かよ! こうなったらなるようにしかならねぇ。



「母さん、こいつもしばらく泊まりたいって言うんだけど、無理だよな? 無理だと言ってくれ! そして二人とも帰るべき家に帰ってもらおう!」



「別に良いわよ。夕飯たくさん作り過ぎちゃったし、今さら一人や二人増えたところで大差ないわよ。でも、部屋はないから政宗の部屋で良ければ歓迎するわよ」



「お世話になります! うおっ、おっきい犬だぁ!」

 


リビングからのっそりと現れたエリザベスはこちらを一瞥して鼻を鳴らした。家族だから言いたいことは分かる。訳すと「帰りが遅いから心配して出てみれば、また新しい女を連れてきたのかい。まったく、この甲斐性なしには付き合っていられないね」だろう。ついに愛犬にも愛想を尽かされてしまった。



まぁ、否定はしないよ。僕が断りきれなかったから二人も部屋に抱えることになってしまったわけだし。我が家で一番の常識人ならぬ常識犬であるエリザベスは、釘宮に抱きつかれても嫌がらないところを見ると、何だかんだ文句を言っても彼女の本質を見抜いて認めてくれたみたいだ。



「ただいまー。あ、美少女が増えてる?!」

 


タイミング良くというか悪く妹が帰って来る。もう説明するのも面倒だ。



「初めまして、釘宮志穂です!」



「釘宮……? ってまさかあの――」



「この子ってママの妹さん? 超可愛いじゃん!」



「え、超可愛い? あたいが?」

 


目を丸くして普段あまり言われない褒め言葉に妹は釘宮の手を握って、



「お姉さまと呼ばせてくれ!」

 


簡単に籠絡されやがった。安い妹だな、お前。もう大特価みたいに買収されまくりやがって。本物の兄としてはお前の将来が少し不安になってきたよ。



「おうよ、妹! いつか嫁ぎに来るからよろしく!」

 


何を勝手に宣言してやがる。ああ、妹だけでもうるさいのに、騒がしい奴が増えてしまった。今日から姫島家は賑やかになりそうだぜ。それにしても、さっきこのみは何かを言いかけていたみたいだけど……まぁいいか。



夕飯を食べ終え、先に風呂に入ってから部屋に戻る。今頃、姫島三姉妹(?)はあの狭い風呂場で仲良く背中を流し合っているのだろうなんて妄想を膨らませながら、煩悩退散と勉強に取りかかる。



部屋の隅に並べて置かれた美少女二人の荷物の中には当然ながら下着とかも入っているのだから、無用心にも程があるよな。僕がパンツを被って変態祭じゃー! と怪しい踊りをするとか想像しないのだろうか?



いや、もしかしてその醜態を見たいからわざと置いて行ったのかもしれない。



冷静になれ、姫島政宗。これは罠だ。



僕の度胸が試されているに違いない。踊らされるな、そして踊るな! 社会的に死ぬことになるぞ!



そういえば昨日野々山と添い寝をしたときに同じシャンプーを使ったはずなのに良い匂いがしたな。女の子って不思議と良い匂いを放つ生き物だよな。



いかんいかん、野々山相手に何を考えているんだ。あいつは僕の中では女の子というよりもペットに近い存在じゃないか! しかも愛犬のエリザベスよりも格下の。エリザベスを女性扱いしている僕でも、野々山を女の子扱い出来るかと訊かれたら即答で「いいえ」と答えられる。釘宮は……まぁ、今まで女の子扱いしていなかったわけだし、今後もそれを貫けばいいだろう。



うむ、このあと同じ部屋で寝るのは美少女の皮を被ったペットだ。擬人化したペットに欲情するほど僕は餓えても落ち潰れてもいない。大丈夫、僕はやらないだけでやれば出来る男なんだから!



自身に言い聞かせて、去年使っていた古国のノートを広げる。二人が戻ってくる前に試験で出されやすいポイントをピックアップしておこう。こういう復習試験は、過去に出された問題の応用などが使われることが多いからね。時間もないし、ポイントを絞って教えた方が効率的だし。



黙々とノートを整理していると、二人が部屋に戻ってきた。



「お風呂いただきましたぁ」



「……ました」

 


湯上りだからか、二人の上気した頬が妙に艶かしい。それに何か良い匂いがする。



「じゃあ、始めるぞ。過去の試験を参考にして、試験に出やすい問題を作ってみたから、まずはこれを二人で解いてくれ」

 


二人はテーブルの前に腰を下ろす。



「おい、何かおかしくないか? っていうか狭いんですけど」

 


どうしてわざわざ僕を挟んで座りやがる?



「だって分からないところを教えてもらうなら近い方がいいじゃん」



「……政宗の隣は私の定位置」

 


いつからだよ。隣に座るのは教室だけにしてくれ。そうじゃなくても四六時中ひっついているんだからちょっとは遠慮しろよ。



「何か暑くなーい?」

 


言いながら釘宮が大胆にパジャマのボタンを上から二つ解放する。すぐ隣にいるので、角度を変えれば中身の未熟な果実が見えてしまいそうだ。っていうか、暑いのは風呂上りだからだろう。



「……ん、暑い」

 


野々山も頷いてパジャマのボタンを上から三つ解放した。



「――ッ?!」



「……ふん」

 


何これ。外したボタンの数を争っているんですか? 同級生の男子がいる部屋でやることじゃねぇだろ。二人ともそんな破廉恥な格好で近づくなよ。



両腕に柔らかいものがあああああぁッ!



あれ、これってもしかして。



「あのさ、女子にこんなことを訊くのはどうかと思うんだけど、お前らブラジャー着けておりますか?」

 


緊張して日本語がおかしくなった。



「寝る前なのにわざわざ着けないよ」



「……私は外出するときしか着けない」

 


釘宮がともかく野々山の意見はどうなの? え、女の子ってそれが常識なの? ということは、現在僕の両腕に密着しているのはパジャマ越しの生モノですか? 女子高生の、しかも美少女たちの生おっぱいでございますか?!



しかも開けたパジャマから伝わるこのしっとりとした感触ってほとんど生で触っているようなものだよな?!



おっぱい祭じゃああああああああぁッ!



……はっ、いかん! 少しだけ我を忘れて桃色空間にトリップしてしまった!



いいか、姫島政宗。この部屋にいるのはペットだ。ペットに欲情するわけにはいかないだろう。って、どうしてさらに二つボタンを外しやがりますか、釘宮お嬢さま?! 一番下のボタンしか残ってないじゃねぇか!


これじゃ丸見え……って、ぎゃああああああああああああああぁッ!



「野々山、それはまずいって! どうして全開なんだよ?!」



「……別に政宗に見られても減るものじゃないし」

 


秩序はどうした? この数ページで僕にどれだけ叫ばせれば気が済むんだよ。誰か、この二人に恥じらいと女性らしい奥ゆかしさを教えてあげてください。マジで理性が限界寸前なんですけど。



「野々山さん、それはズルイよ! ならあたし脱ぎます!」

 


いや、脱ぐなよ! 右隣で衣擦れ音。まさかマジで脱ぎやがったのか?



振り向けない。視界の正面にいる野々山が谷間をこちらに向けながら口を半開きにしているところを見ると、恐らく視界の外にいる釘宮はマジで半裸になってしまったようだ。



「……むぅ、私も脱ぐ」



「脱ぐなあああああああああぁッ!」

 


叫びながら部屋を飛び出した。でも立ち上がる際に一瞬だけ見えてしまった釘宮の裸は脳内フォルダに永久保存しておこう。このまま盗んだバイクで走り出したい衝動で廊下に出ると、騒ぎを心配した妹がこちらにやってきた。



「お兄ぃ、どうしたの?!」



「純粋な心を穢されそうになった……」

 


妹に縋り、泣きつく情けない兄の頭を優しく撫で、このみは僕の部屋を開けた――直後に閉めた。



「……お兄ぃ、何が起きた?」



「……僕が知りたいよ」



「さんぴー?」

 


それは中学三年生の女子が軽々しく口にしていい言葉じゃない!



あらぬ誤解を招いてしまったので、彼女たちが脱皮するまでの簡単な成り行きを説明すると、妹は力強く頷いて親指を立てた。



「よし、だいたいの事情は分かった! あたいがお兄ぃを救ってやる! 最終兵器を持ってきてやるからそこで待ってな!」

 


五分後、僕は暗闇の中で部屋に戻った。



「待たせたな」



「……何それ?」

 


野々山の声が聞こえるが、生憎こっちは真っ暗で何も見えないんだ。手探りでテーブルに戻ると、再び両サイドに柔らかい素肌が触れた。こいつら、やっぱり半裸のままだ。お前らは裸族かよ!



「さぁ、二人とも。気を取り直して続きを始めるぞ。分からないことは問題文を含めて何でも訊いてくれ」



「……どうして目隠しするか」

 


そうですよねー。まずはその質問がくると予想していたよ。



「理性を保つためだ! お前らの裸を見て狼にならない自信が僕にはない! それと問題で分からないことだけを訊いてくれ! この格好、結構恥ずかしいんだぞ」

 


妹の秘策というのはもうご理解いただけたよな?

 


そう、僕は目隠しをして裸の美少女たちがいるハーレムへ戻ってきたのだ。チキンだと思うなら好きなだけ罵倒しやがれ! その場の勢いで一線を越えてしまう恐怖よりは百倍マシだ!



「あたしはママなら……いいよ」

 


暗闇の中でそんなことを囁かないでくれ。視界が断たれて妄想がいつもの三倍働いているんだから。



「…………めっ!」

 


野々山が代わりに窘めてくれた。やることはめちゃくちゃだけど、こういうときのお前は本当に頼りになるよ。



問題を二人に分かりやすく噛み砕いて解説してやると「なるほど!」「……政宗は教えるのが上手。……将来は先生になる」と褒められた。



目隠しをしてからどれだけ経っただろう?時計が見えないので、今が何時かも分からないけれど、一通りの解説は終了した。



「さて、本日の勉強はここまでにしよう。二人とも、さっさとパジャマを着て寝なさい」



「……やだ、今夜はこのまま寝る」



「それならあたしもこのまま寝るー」

 


というやり取りがあり、僕は目隠しをしたままベッドに横になった。この目隠しを外せるのは明日、二人が制服に着替えた後になりそうだ。

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