人生はここから
「シルティ様! 何をなされているのですか! まだ、完全には治っていないのですから、どうかお部屋でおやすみください!」
そう言って駆けつけてきた執事は私から、持ち物を華麗に奪い去り、そのまま部屋へ押し込んだ。
私の自殺の主な原因は、恋愛関係からきたものだった。そして1週間が経った時のことである。
心も身体も調子が戻り始めた頃、なまった身体を動かそうと、部屋から出てみたら必ず誰か一人に呼び止められた。
そして、何か用があるなら自分を呼んでくれと言われ、半ば無理やり部屋に連れ戻されるのは言うまでもない。
私の名前はシルティ・アーディルト。それが今世での私の名であった。シルティはとても穏やかな少女で、自分で言うのもなんだがとても自己主張の少ない人間であった。
そんな私は、こちらへ遠征にきたという公爵令息に対し、恋心を抱いてしまった。彼も同じような想いだと勘違いした私は逢引を何度も重ね、デートをした。
想い人と過ごす日々はとても幸せだった。
しかし、そんな幸せも長く続くことはなく、ある日突然裏切るかのように冷たい態度を取られ、突き放された。
それは、王都に帰る日の出来事である。
私は見事に捨てられたのだ。
突然の別れにショックを受けた私は、そうして自殺を図ってしまったのである。
脆いわ! 私の心!
あの後駆けつけた両親に私は事情を説明したところ、公爵家へ申し出に行こうと言われたがそこは丁寧に断りを入れておいた。
そうして、一週間が経ったのだ。
さて、私が今回この世界がゲームの世界だと、気づいたのにはその以前大好きであった公爵令息、ディーゼ・アレステッドにある。
彼は公爵家の次男で、そしてゲームでの攻略対象者の一人であった。
ゲームでの設定は、彼は公爵家当主と愛人の子供であり、5歳のときに養子に迎えられた。しかし、正妻である母からは十分な愛情を恵んでもらうどころか、虐げられて育っていた。
そんな風に生活を送っていた彼はいつの間にか女性不信になっていた。
そして多くの女性に愛を求め、そして女性に対し復讐を果たしていたのである。
さながら、私もその被害者の一人であろう。
齢13にして、とても整った顔立ちに、陶器のような肌は儚さを醸し出している。そして、はちみつ色の髪と翡翠の瞳はどこかの国の王子様のようだった。
そんな彼はヒロインに出会うまで多くの女性を傷つけていくのだろう。
そう思うと、ゾッとした。どうか、自殺者まではでませんように!!
多少ながらも、恨みはあるものの、彼のおかげでここがゲームの世界であると認識したのである。
「それにしても、暇だわ」
昼下がり、執事に部屋へ押し戻さた私は、ベッドで穏やかなに本を読んでいた。
「ゲームが開始するのは、2年後だし」
2年後、普通の町娘だったヒロインはとある出会いを果たし、この世界を救う旅に出る。
そうして、数多くの困難を乗り越え、敵 と戦いながら攻略対象者と恋をして、心を通わせていくのだ。
「でも、いいこと考えた! 私、王都へ行こう!」
前世のようにただ淡々と毎日を消費して行きたくない私は、ただの伯爵令嬢として生きるのには勿体なさすぎる。
それならば、以前から興味があった王都へと駆り出そうではないか。
「よし、今からお父様に相談しよ! 私はもう元気だって、伝えなきゃ!」
本を勢いよく、閉じて放り投げると、バタバタと令嬢らしかぬ行動で、お父様の書斎へと駆けつける。
思い立ったら、即行動だ。
王都へもし行けたら、細やかな復讐もついでに彼にしようとひっそりと企てた。