半死で転生
初投稿です。
「蓮!京野蓮!聞こえてるのか!?」
俺はぼーっとする意識の中、聞き慣れた声のする方へと顔を上げる。
確か、今俺はドラゴンを倒して伝説の武器「ゲルゼル」を手に入れたと思っていたんだが。
「あれ?先生・・・。どうしてこの世界に?」
ペシッ
丸めた教科書で頭を叩かれた。
「いつまで夢見てるんだ?」
あははは
と笑い出すクラスの仲間達。
つんつん
と後ろを友達につつかれる。
「おい、教科書23P。お前今あたってんぞ!」
「岡村の授業で寝るなんて、あいつ大物だよな」
「すご~い」
「マネできないわ」
おしりをがじがじとかいて、ゆっくりと立ち上がったが・・・・
しかしどこを読めばいいんだ?
つんつん
また後ろをつつかれる。
「4行目だよ」
そう囁かれ、慌てもせずにぼんやりと教科書を読んだ。
その後、バケツでなくなぜかモップを両手に持って30分廊下に立たされた。
地味に辛い・・・
ここは昭和の学校か!
放課後、俺は委員会をさぼって真っ直ぐ家に帰ることにした。
委員長でなく、単なる図書委員だったが。
「おい蓮」
だがそっこーで担任の矢崎先生に見つかった。
「なんスか?」
「これ成績表だ。次回はもっと頑張れよ」
そう言って渡されたのは2ばかり並んだものだった。
(そんなこと言われたってな)
帰り道に成績表を眺めながら角を曲がる。
ぷぷぷぷーーー
目の前に大きな物体が黒く映った。
えっ・・・。
それがトラックなのだと分かる頃には俺は意識を失っていた。
これが夢だったならどんなにいいか。
そんな思いで目が覚めた先が、岡村の授業中だったならそれもまた我慢しよう。
でもその先に待っていたのは
「起きんかワレーーー!」
げしっ
誰かに頭を蹴られ、急いで起き上がる。
最初ぼやけていた人物の顔がどんどんはっきりしていく。
や、や、や、
「蹴ってから起きるまでの時間がながいっぞゴルァ!」
やくざ
俺の目が間違ってなければ、俺は今ヤクザに絡まれている。
でも何で??
確か車に跳ねられたはずじゃ・・・
ああ、そうか。
ここが地獄か。
「地獄じゃないぞコルァ」
「まだ何も言ってません」
「わしを見た奴の大抵の一言が、「ここは地獄ですか?」じゃコルァ!何年も案内人やっとれば分かるぞコルァ!」
語尾がいちいちうざいヤクザ。
「京野蓮!15歳。間違いないか?オルァ!」
「はい。何で俺の名前を?」
ヤクザは名刺を差し出してきた。
〔神直属 あの世の案内人 コロネ〕
「コロネ???」
「そうだ、わしのプリティな本名だ」
!?
「み、見かけによらないっスね」
「見かけ通りだろ!ゴルァ!」
「あの世からの案内人ってことは、俺は・・・」
もしかして
「安心せい、まだ死んどらん。半分しか」
「半分?」
コロネとかいうヤクザに頭をポンポンと叩かれる。
安心させてくれようとしてくれてんのか、それとも優しく殴られているだけなのか。
「よし、今からお前に生き返る権利を与える!」
「本当か!?」
「ただし、現実のお前は病院に居る。かろうじて生きてはいるが、足の骨が折れて、これからは車イス生活だがなゴルァ」
そんな・・・
「おいコロネ!そんなの生きてるって言わねーよ。むしろあの世へ送ってくれ」
「人の話は最後まで聞け!もう1択ある。それは異世界へ転生することだ」
転生と聞いて俺の心臓はトクンと跳ね上がった。
こういうのを待ってたんだよ。
退屈で暇な日常。
嫌味な教師。
何で生きてるのか分からない人生。
そんな世の中には飽き飽きしていた所だ。
「望むところだコロネ。俺は異世界にトリップでも転生でも何でもしてやる!」
「ふうっ、これだから非リア充は」
コロネは巻物を取り出すとサインを要求してきた。
急いで名前を書く俺に、迷いは1%くらいしかなかった。
サインをしてざっと文章を読み上げると、そこにはいくつか「女」という文字が書いてあった。
「女になって生まれる・・・って、あ!?」
「ちなみに次生まれる場所は異世界フューゲル。こっちの手違いで今日死ぬ奴は女やと思ってて。せやかて神が手違いした~なんて世間様に言えんやろ?っちゅーわけで女として転生してもらうで」
「何で急に大阪弁混ざってるんだよ!俺は男だ。神の失敗なんか知るもんか!」
「そんなら車イス・・・」
「絶対ヤだ!」
「わがまま言うなやオルァ。どっちかしかお前の生きる道はないんや。女として憧れの異世界へ生まれるか、それとも男のままだが車イス生活で過ごす残りの人生を歩むか。あと5秒で選ばんと死亡人扱いするで。はい、5.4.・・・」
俺はオカマのけは1ミクロたりともない。
女なんて皆心が汚いし、オシャレだって興味ない。好きな男の話ばっかしてるし、団体で行動する奇妙な生き物だ。
かといって5体満足で生きられないなんて絶対に嫌だ。
「・・・1.終ーーりょ」
「わ~かった!分かった!!」
「おっ、ついに決めたか」
「転生させてくれ。例え親に会えなくても、今まで通りに生きられないなら女の体になった方がマシだ」
「よっしゃ!それならこの輪の中に入れ」
コロネはフラフープのような物を差し出してきた。
意味が分からず輪をくぐるようにする。
ブン
一瞬で辺りの景色が変わる。
まるで中世ヨーロッパのような光景が目の前に広がっていた。
城があり、村があり、竜が飛ぶ。
・・・胸と股に違和感がある。
急いで胸を触ると、やはり女性特有の膨らみがあり、股にはあるはずのモノが無かった。
ヤクザなのに名前可愛いです。