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縁結び神社の巫女さん

作者: てきとう

 ――――隣町との境界となる山には縁結びの神がいる。

 それはこの町の古くからある言い伝えだ。


 町の歴史が記された書物を紐解くと、この神社は大政奉還が成される以前には様々な縁

を頼りに参拝者が訪れ結構な賑わいを見せていたらしい。

 しかし、明治維新以降の海外からの文化の流入による急激な変化の流れに、神社に頼り

切りだった町は徐々に廃れていった。その為、町が次第に神社を頼らない発展の仕方へと

考えをシフトさせていったのはある意味自然ながれで、仕方が無ない事だったのかもしれ

ない。

また、これによりそれまで神社のある山をを中心に四方に広がって繁栄していた町は、や

がて山を区切りに袂を分かち各々が一つの町として発展して行くようになる。

 だが、人々はこの神社に名も無き神が奉られており、その神の御使いたる巫女が代々「

縁を結ぶ」力を用いて参拝者達の力になり続けていた事を忘れなかった。

 そのお陰で町人たちからの心遣いにより神社は寂れはしたが、廃れる事は無く現在まで

存えているのだ。


 そんな寂れた神社が、不思議な事にここ最近大いに賑わっている。

 見渡せば参拝に来る者たちはおしなべて若い女性であり、その殆どが制服を着ているの

をみるに多分町の学生達だろう。それも一つではなく幾つかの学校の制服に分かれている

ことから、それなりの範囲で一時の流行が出来てしまっている様だ。

 そして若い娘達の事だ、気になるならば少しばかり耳をそばだてれば理由など容易に聞

こえてくるだろう。 

 彼女たちは口々にこう語る。


 ――――この神社にお参りすると恋が実るらしい、と。



◇◆◇◆◇◆◇

挿絵(By みてみん)



 私はここ最近の”一日で前年比400%位の収益”という夢見たいな出来事に、かなり

の時間現実逃避をしていた。

 けれども、1日経ち、2日が過ぎ、それ以降も結構な数の参拝者数が続いたので流石に

おかしいと思い始めた私は、面倒だけど情報に聡い幼馴染に確認を取ってみる事にした。

 その結果判ったのは、最近巷ではかのような噂がまことしなやかに囁かれているとの事

だった。彼いわく”この神社にお参りすると恋が実るらしい”と。

 頭の痛くなる話だが、この久しく見なかった人だかり(数十人だが)はその全てが悩み

を抱えた参拝者などではなく、「恋愛成就!」という己が欲望に目をぎらつかせた野獣共

という事らしい。……もう夏なのに。

 まあ、ある程度はそういった欲望煽ってる部分もあるんで何とも言えないんですけどね。

他人事では無い分判断が……。

 

 ふと気がつけば境内の方が騒がしい。遠目に見遣れば、拝殿にある賽銭箱の前にかなり

の人数が陣取って騒いでいる姿が目に入った。また、その所為で後ろにいる方が参拝でき

ずに困ってる。一応、後ろの人も一応通らせて貰えないかというような事を言っているみ

たいだが、巡りの邪魔している連中は話に夢中で全く取り合おうとしていない。むしろ話

しかけてくるのを迷惑そうにしている位だ。……どうやら現状を如何にか出来そうな人間

は今の所居ないらしい。従業員は如何した。主に神主。

 私は仕方なしに社務所の定位置から立ち上がるとガラス窓を閉め『休憩中』札を下げ窓

をしめる。それから、戸口に立て掛けていた(えもの)を手に取って境内へと出る。

 ゆっくりとした足取りで(主観的に)優雅に歩んで行くと、賽銭箱の真横にたち止まる

や否や手にした箒を袈裟気味に振り下ろした。

 

 姦しく騒ぎあっていた人だかりは振り下ろした箒の音に何事かと驚き飛びのき、あるい

は飛びのいた人に驚いたのか、一斉にこちらを見た。

 私は結果に一応満足すると、その不躾にこちらを眺める視線を軽く受け流しながら作っ

たスペースに陣取ると、人だかりと対面したのだった。

「満員御礼とはよく言いますが、面白半分の参拝は迷惑です。そもそも参拝後に井戸端会

議をなされるのでしたなら他所でやって下さいますか?」

 憮然とした表情でそう告げると空いた手の方で手をしっしとぞんざいに振ってみた。

 ……出来ましたら文句など言わずさっさと帰って下さると私も楽なので。

 まあ、流石にこの対応で納得して引き下がるはずも無く、怒りだした参拝客の一人が怒

鳴ってきた。

「な、なによ! 私達お参りに来て賽銭も払った、いわばお客様よ?!」

「そうよ! なのに何なのよその態度は!!」

「あんた何様のつもり?!」

 一人の客が言い返すと、それに便乗した者達が口々に喚き始める。

 こういう時は無駄に団結されるのは性能の無駄遣いとか悪い例とかそんなだと思う。や

られた方はとてもとても対応するのが面倒なので止めて欲しい。

 最近は似たような事がたびたび起こっていたので対応には慣れて来てはいるのですが、

余りの煩さに若干眉をひそめてしまう。

 取り合えずもう一度黙らせる為に地面に箒の柄を思いっきり叩き付けた。

 再び声が止み境内が静まり返る。

 怒鳴るのは面倒なので予定通りおとなしくなって良かった。

「一応、参拝者を「客」と言う事もありますが、それはあなた方の言うそれとは定義が違

います。」

 まだ何か言い返そうとするのが見て取れたのでそうなる前に即座に畳み掛けた。全く余

計な労力を使わせて。

「それにもしお客様という立場だったとしても後からやって来るお客様の邪魔をして良い

わけが無いでしょう!!」

 流石に自制が出来なくなってしまい怒鳴り気味になってしまった。ちょっと反省。

 あと、いい加減もう面倒なんで彼女達の後方を指差し一言告げる。

「御覧になられればお解かりになったと思いますが?」

 見れば判る、そちらには散々待たされて流石にかなりご立腹な表情をされた方々が。

「それにここは町の外れではありますが、結構ここでの噂は早く街に広がりますよ?」

 若いとはいえ「女性」。やはり周りの評判は気になるらしく悪態を吐きながらではあっ

たけどどうにか立ち去っていってくれました。

 もう、次からはこの手だけで行こう。普通に言っても絶対に理解してくれないだろう

し。

 いや、持つべきものは幼馴染。こういった悪巧みは私にはとても考えつきません。で

も大概奴は面倒なトラブルも持ってくるので差し引きマイナスな気もする。


 境内が一応の落ち着きを取り戻したので、周囲を見渡す。何故か父が遠めに見ても明ら

かに落胆している姿が端に映った。その表情が自分の考えた策略が潰えた人の感じに似て

いる気がするのは穿った見方でしょうか。

 ……もしかして、最近のこの惨状はあの父親(バカ)のせいなのかもしれない。

 ふとそう思い至ると、後でお伺い(・・・)(肉体言語)する事を視野に入れる。

 何故かそう思った直後、父が急に顔を青ざめさせて周囲を見渡し始めた。

 でも、とりあえずは境内の掃除をしなければなるまい。先ほど軽く見渡しただけでも菓

子のクズや袋が落ちているのが伺えたし。

 私は、とりあえず父への折檻の事は一先ず隅に追いやる――――はずもない。どういう方法

で追い詰めるか考える位は境内を掃除しながらでも出来るのだから。

 ……最後まで手伝いに来なかったしね。

 そこまで考えると、思いっきり背伸びをして気分を切り替えゴミを掃き始めるのだった。



◇◆◇◆◇◆◇


 この神社には縁結びの神様が居られます。真剣に願うならばきっと神様は手助けをして

くれるでしょう。しかしご注意ください、「縁」とは恋愛のみではありません。むしろ、

恋愛が絡む縁の方が少ない程です。まあ、低コストでハイリターンだからどこの世界でも

恋愛を事業に絡めたがるのかもしれませんね。

 ……世の中が面倒に感じてきました。

 まあそんな何が言いたいのかと問われるなら、要はウチの神様は「恋愛の縁」を結ぶの

は「出来ない」んですこれが。というか、そんなん出来たら自分のをまず結ぶと思います

常識的に考えて。なんで未だ彼氏の居ない私を見て理解できないのか不思議で仕方が無い

今日この頃。


 それが誰にもいえない神様と私達だけの秘密。

それにも拘らずやって来る恋愛相談。いつの間にか出しゃばてる幼馴染。

そりゃ知らないんだから仕方ないですけど。それなら、やらかした本人が責任を持って下

さるなら一向に構わないんですけどね。未だにしぶとく途切れない言い伝えの所為で、何

故か最後の尻拭いは私がさせられるという。呪われてるとしか言いようが無い負のサイク

ルが!

 いや、お陰で私が今までのうのうと生きてこられたのは理解しておりますけれど。

 でもね、流石にリスクがリターン追い越してると思う。最近特に。

 商店街歩くだけで女子高生の7割に射殺す様な視線を受けるんですよ?

 

 ……もう、毎日が憂鬱です。 

素人の読みにくい文章に最後までお付き合い頂きまして誠にありがとうございました。

宜しければここを気をつけるとマシに書けるみたいなコツとかがありましたら、ぜひ教えて頂けると嬉しいです。

……やっぱ前もって基本的な事くらいは勉強するべきだったよなと。


それでは長々と失礼いたしました。



以下駄文。



この話、元々はかなり昔に買った電撃だかの3つのお題で考えるSSみたいな奴で適当に考えたネタのものです。

因みに本来は主人公が登場すらしなかった幼馴染の方。

巫女さんは無口というか物静かな方でした確か。


今回、小説書くのは初めてだし直ぐに書けそうなのをと

巫女視点でさわりを書こうかと思った所なぜかこんな結果に。


流れ的には、

・主人公が神社に行く。

・適当に恋愛成就を願う女の子を巫女さんが鼻で笑ってあしらったりしながら状況説明。

・中盤で真剣に恋愛の縁を結んで欲しいと願う女の子が登場。

・でも、その子は意中の彼とは縁自体が繋がっていない。

・そこで何故か普段とは違い必死で縁を繋げようとしだす巫女さん。

……確か、女の子と自分を重ねて見たかなんかそんな理由。

・諦めそうになる巫女さんを主人公が励ましたりしながらも、

結局は恋愛の縁は結べなかったり。

けど、仲良くなれて全く無かったはずの縁が繋がったので恋愛に発展できるかはこれからの頑張り次第だよみたいな感じな話だった様な……。


巫女さんは主人公が好きだったはずなんだけどな。



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