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王都へと続く道。


私は王都に行くのは初めてだが「彼」の記憶がその道に刺激された。

長い長い年月に道は整備されたが遠くに見える山や広がる小麦畑に昔の名残があった。

今は小麦畑が広がるこの光景が無数の屍が地を覆い、敵軍が容赦なく埋め尽くしていた姿を「彼」は見ていた。


第十三小隊。


はみ出しものや平民上がりの兵の寄せ集め。実力はあるが手を焼く問題児ばかりの部隊であったこの小隊は一人の小隊長が赴任したことで変わった。


赴任一年前に十三小隊に配属された想い人を追いかけて自ら志願し、権力とこねと脅しをフルに使い小隊長の座をゲットしたのはうら若き公爵令嬢。


荒くれものばかりの不良兵たちに泣かされて帰ってくると思われた公爵令嬢はしかし、部下全員を叩きのめし、力ずくで認めさせるという荒業をもって小隊を掌握してみせた。


『お~~~~~~~~~~~~~ほっほっほっほっ!!この程度の腕でわたくしに膝を付かせようなどとは笑止!せめてわたくしの鞭に翻弄されないぐらいになってくださらなければ部下として使えないですわ!』


高笑いと共に嬉々として隊員達を調きょ………げふんげふん。

見事実力にて信頼(下僕)を得た公爵令嬢。


規格外にもほどがあるお嬢様でしたよ。本当に。


(まぁ、もっとも「俺」に外聞完全に無視して迫りに迫ったもんだから今度はこっちがほかの隊員から妬みの報復を喰らったが)


俺らの女王さまに迫られるなんてなんてうらやましぃぃぃぃぃぃ!!


うらやましくなんぞ、ない!!俺は迷惑してんだぁぁぁぁ!!


もてない男の恨み辛みその身に味わぇぇぇぇぇぇぇ!!


ちょっ!!投げるな!!棘つき鉄球は殺傷能力高すぎだからまじ投げるなぁぁぁ!!


当時の騒動の一部と恐怖を思い出し、思わず遠い目になってしまう。本当に、あの頃は闇討ちやら襲撃やらで大変だったなぁ………。


馬鹿みたいなことで騒いで喧嘩して、戦って勝って酒のんで暴れて、酷くなると隊長である「彼女」が鞭で沈めて。


馬鹿みたいににぎやかな日々。

たった数年だったけどとてつもなく濃い年月を過ごした。


馬鹿で下品で女好きばっかりで………だけど皆、いい奴らだった。


『………ば~~か。だか、らお前は、はん、にん、まえなんだよ………』


あんな風に野ざらしで死体をさらされる死に方なんてするような奴らじゃなかった。

その考えはあいつらの覚悟を貶しているとわかってはいても今を生きる私はそう考えてしまう。


あの時、ともに戦場を駆けた連中。

捨て駒とされ、死地に屍を築き、歴史に名を残すことなどなくただ今は私の記憶にのみ残る遠い追憶。


誰も覚えていない。誰も知らない。笑いあって馬鹿をやったあの愛おしい日々、そして訪れたあの地獄のような戦いと終焉の光景。


私と同じ追憶を抱えるものなど誰もいない。

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