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なんで、こう、物事は自分の思うとおりに進まないのだろうねぇ~~~。


「はぁ………………」


十歳とは思えぬ重く低いため息は様々な感情が込められていた。主に遠くに離れていながら存在感抜群なはた迷惑求婚を繰り返すフェイとかフェイとかフェイとか!!が原因なんだけどね………!!


「ふ、ふふふっはははっ……………はぁ~~~~~~~」


何とか気分を高揚させようとするがどうにもあがらない。

コテンと机に頭を乗せてつい数日前に届いた手紙をペラリと指に掴む。それは王都に住む父方の叔母からの手紙でありそこに書かれている内容が私の気鬱の原因だ。


「はぁ~~~~なんだろう。どうしてだろう。なんで、どうして………」


関わりたくないのに。出会いたくなんてなかったのに。どうして私たちは出会ってしまったのだろうか。

近日中に私は両親と共に王都に住む叔母を訪ねることになった。それはとても喜ばしいのだけど問題は王都には「彼」がフェイがいることだ。

兄にも連絡は行くから私が王都に来ることをフェイが知る可能性は高い。(いくら隠そうとしてもあの兄はこと妹のことに関しては駄々漏れなことが多い)

また、出会う。

彼に。『彼女』の魂を持つ人に。


胸に走る痛みに泣きたくなった。


目を瞑れば鮮やかに思い出せる、遠く過ぎ去った日々。優しい思い出も辛く苦しい思い出も全てこの胸の中にある。

『彼女』の最期も私は覚えている。

『彼女』の命の終焉を見届けた『彼』の嘆きと後悔と悲しみも全部全部覚えている。


もう、動かない彼女を抱えてただただ『彼』は自問していた。


本当ならこんな血に手を汚すような女じゃなかった。大切に大切に護られ綺麗で優しい世界に生きるはずの女だった。

こんな戦場で、何の地位もない男を庇って殺されるような女じゃなかった!!

幸せに、そう、幸せになれるはずの女だった。自分にさえ、出会わなければきっと、笑って穏やかに伴侶や子供や孫に見取られて人生を全うしていた。


それを、『俺』が奪った。


そう、悟った瞬間狂いそうなほどの後悔が襲った。

『俺」のせいだ。『俺』が殺した!!護ることもできずにただ『彼女』を戦場に死に追いやってしまった。


『う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


あの日、魂から叫んだ『彼」の慟哭を、『私』だけが知っている。


「だから………」


記憶が嘆く。出逢ってしまったことに。また、同じことを繰り返すのかと怯えている。


「出会いたく、なかったよ………きみにだけは関わりたくないよ………」


『彼」と『私』は違う。また『彼女』と『フェイ』も違う。


だけど、どうしようもなく怖い。刻まれた記憶と後悔、嘆きがあまりにも大きかったから。

『俺』が『彼女』の死の原因になってしまったように『私』が『フェイ』を死に追いやるような気がして………。


「こわいよ………」


隠せない怯えに私は震えた。

違うけど、ありとあらゆることが違うけど………それでも『彼女』の魂をもつ『彼』と関わることはとてつもなく、怖かった。

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