Ⅷ
助けを求めてまずお母様を見る。
「う〜ん!焼きたてクロワッサン、サイコーにおいしい〜〜〜!」
母はパンに夢中でした。
つ、次はお兄様!お兄様なら助けてくれるはず!
期待を込めてお兄様を見れば。
「ぐはっ、なにい………ゲホゲホゲホッ!!!」
盛大に咳込んで使用人に背中を摩られていた。
い、一家の大黒柱!お父様!
縋るように見れば全てを受け入れる父性溢れる笑顔のお父様。
救世主がいた!!
うるうると感激で目が潤む私にお父様は力強く頷いて下さった。
「ラードン君」
「他人行儀ですよ。フェイって名前で呼んで下さい。お義父さん」
ヒィィィ!?もう、「お義父さん」呼ばわりしてる!!
こいつの中で私の位置付けがどんなことになっているのか恐すぎる。
動揺し、青ざめる私をよそにお父様は余裕の笑みで彼のざれ言を受け流す。
「お父様と呼ばれるとは光栄だ。ミリ−に兄が増えたよ。ねぇ、ミリ−もそう思うよね」
彼の発言を軽く聞き流した上に実の息子扱いで私への変態求婚すらなきものにされたお父様、流石です。
コクコクと必死に頷く私に一瞬、彼の動きが止まる。言外に却下された彼が見せた動揺らしきものはその一瞬だけで、すぐに嘘くさい爽やか笑顔を浮かべた。
「僕は妹がいないからそう言って頂けると嬉しいですよ」
にこにこニッコリ。
幸せそうにクロワッサンを食べるお母様と今だに咳込みから回復しないお兄様を除く三人はお互いに笑い合った。
若干、あたしの笑みは引きっていたが気にしない!