第1話 転生
ここは…暗い?…凄く眠い、まるでゆりかごの様な…。
うん?ゆりかご?確か俺は…死んだような…。あれ?だとしたら此処は?
俺としての自我が目覚めると同時に、辺りを覆う黒い膜の様な物が見えた。それは俺を包んでいる様で、恐らくは閉じ込められているのだろう。
「出られ無いか?…あれ?手足が…無い?」
嘘だろ?もしかして入院からの四肢切断でもされたのか?でも、だとするとこの殻は何だ?誘拐でもされたのか?
俺は力を込めて殻を破ろうとした。その結果…見事に殻を破る事に成功した。だが、それは俺の絶望の始まりとも言える光景だった。
「何なんだよ。ここは…水の中?」
《条件を達成しました。新しく称号〈早熟〉を習得しました》
うん?なんだ…称号?ゲームか?だとしても…これはどういう事だ?って言うか…呼吸は?あれ…出来る?と言うか…普通に泳げる。
体を捻じりつつよくよく観察してみる。視界の端には鱗の様な物が見える。それと同時にヒレの様な物が見えた。その結果から察するに、俺は死んだのだろう。しかも、魚に転生するというおまけつきだ。
あれから体感になるが数時間もの時間を理解に要した。何せそういう小説を嗜んでいるとは言え。まさか俺自身が転生するとは思っても見なかったからだ。
辺りを見渡してみると、俺が出てきた卵がずらりとコピペしたかの様に並んでいた。こうもピッシリと並んでいると若干だが恐怖を感じるものだ。
「ってか、ステータスとか有るのか?う~んステータス、鑑定、解析、」
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名前 無し
種族 ベビーミニマムレッサーフィッシュLv1/Lv5
体力 5/5
気力 3/3
魔力 3/3
攻撃力 0
防御力 0
魔法力 0
抵抗力 0
速度力 1
ランク G
固有スキル
天空眼
種族スキル
微生物捕食
汎用スキル
遊泳Lv1
称号スキル
早熟
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「なんじゃこりゃぁ~~クッソ弱いじゃねぇか。ってか速度以外のステータス0とか舐めすぎでしょ?」
こういうのって普通は俺ツエェェェ~とかじゃないの?と言うかこんなの直ぐに死ねって言ってるようなものでしょ?
「でっでも、このスキルがチートって言う可能性もあるし…」
天空眼・天空を見渡すが如くにありとあらゆるモノの真意を読み解く魔眼。効果・対象の鑑定
微生物捕食・通常は見る事すら叶わない微生物を捕食するためのスキル。効果・微生物の捕食
遊泳・水の中を泳ぐためのスキル。効果・水中の遊泳能力の上昇
早熟・本来生まれるべき時よりも早くに生まれた者に与えられる称号。効果・経験値のブースト、スキル習得率の上昇
ベビーミニマムレッサーフィッシュ・フィッシュ系統の中でも最弱の魔物であり、生体ピラミッドの最下層の魔物。だが、進化の先に龍に至ると言われている。
「クッソ弱いと言う事だけが分かった。龍に至る?その前に死んじまうよ。と言うかベビーでミニマムでレッサーとか…神様は俺を殺したいわけか?」
まぁ…微生物捕食と遊泳のスキル意外が何とも強そうなスキルだったのがせめてもの救いか…っていうか、今の状態でどうやって成長するの?
それからスキルを試してみる事にした。天空眼を使って周りの水草を鑑定してみる。そうすると俺が知らないような情報がたっぷりと含まれていた。
名前 ニャクシ草
説明 ガルブ海域に主に生息している水草でありフィッシュ系の魔物が卵を産み落とすために用いられる。
ガルブ海域・アラウンド大陸に接する大海で有り、その場所からは幾匹もの魔物が産み落とされている。
アラウンド大陸・自然豊かであり、狂暴な魔物が多数生息する魔の領域
ミニマムレッサーフィッシュの卵・ミニマムレッサーフィッシュの卵
今ので得られた情報はこの位だ。と言うか狂暴な魔物って海にも居たりするのか?だとしたら一刻も早く進化でも何でもしたいんだけど…どうしたら成長できるんだ?
それからとにかく泳いでみたり微生物捕食を試してみたりとしてみた結果、やはりと言うべきか…微生物捕食をするというのが成長のカギになるらしい。
《レベルが1上昇しました》
《レベルが1上昇しました》
《レベルが1上昇しました》
《レベルが1上昇しました》
《レベルが成長限界に到達しました。進化が可能です。》
「おっと…もう成長限界か、それじゃあ進化先は…」
ミニマムレッサーフィッシュ
「まっ…まぁ分かっていましたとも。この程度の成長じゃベビーが外れるだけだろうなと言うのは察していましたとも。」
けど弱いな…ミニマムレッサーフィッシュも相変わらず生態系の最下層に位置する魔物らしいし。あれからレベルが上がってステータスが上がったとしても、こんなんじゃ直ぐに殺されてしまう…。
「えぇいままよ。此処は進化一択。」
《ミニマムレッサーフィッシュに進化します》
《SPを1習得しました》
《〈微生物捕食〉が消滅しました》
「あれ…凄く眠く…やばい、意識を保てない。」
それから俺の意識は深く沈みこんだ。それからの事は眠っていたが故に覚えてはいなかった。
どうやらあれから結構な時間が経過したらしく、コピペしたかのように綺麗に並んでいた卵からは俺と同じミニマムレッサーフィッシュがその身を蠢かしつつ、必死に泳ごうとしていた。
「と言うかこういう感じの見た目なのね。」
その姿はどこかメダカを思わせる様だった。こうして見ていると何れは龍に至る可能性がある。と言われると何とも龍の各落ち感がしてくると言うモノだ。。
皆さまここまで読んでくださって、ありがとうございます。