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第一話 奇跡の兆し

犬の整体師をご存知ですか?

この話はフィクションですが、実際に存在する方を題材として模索しながら書き上げました。

人の人生は二度死ぬと言われています。

呼吸が止まった時と、皆んなの記憶から居なくなる時。

一つの幸せにも、二度目があって欲しい。

そんな思いでつけました。

『二度目の幸せ』


あなたの大切な人を思いながら、

この作品を読んで頂ければ、より一層小さな幸せに出会えるかなと思います。

また、愛犬家の方々はこの犬の整体師と二度目の幸せを見つけることが出来ると良いですね。

田舎町に佇む整体院で、元整体師の高田智樹はひっそりと暮らしていた。

かつて人間を相手に腕を振るっていた彼だが、

過去の手術の失敗がトラウマとなり、今では遠ざかっていた。


しかし、ある日訪れた幼なじみの友人とその愛犬シロが、彼の心を再び動かすことになる。


友人の愛犬であるシロは、年齢を重ねた影響で歩行が不自由になり、元気だった頃とは違って階段を登ることも難しくなっていた。


「散歩にも行けなくなるのかと思うと…」と寂しそうに語る友人の言葉に、智樹は心を揺さぶられる。



「よし、できる限りのことを試してみよう」



智樹はシロを施術台にそっと乗せ、まず全身の触診を丁寧に始めた。


犬の整体に詳しくなるために学んだ知識を元に、シロの背骨や脚、関節の状態を慎重にチェックしていく。

シロの背中を指でたどると、硬くこわばった筋肉がいくつも感じられ、痛みを和らげるために力が入っているのがわかった。



「シロ、少し触るけど、痛かったら教えてくれ」 と心の中でそっと語りかけながら、智樹はシロの肩甲骨から背中にかけて軽く圧を加えていく。 


シロの表情を細かく観察しながら、リラックスさせるためにゆっくりと施術を進める。


すると、シロは少しずつ呼吸が落ち着き、智樹の手に身を委ねるように体を緩めていった。


次に、智樹はシロの脚に移り、特に関節が固まっている膝と股関節の周囲をほぐし始めた。


親指と指先を使い、円を描くようにマッサージを施し、筋肉のこわばりを解きほぐしていく。

加齢による関節の変形も少し見られたため、無理のない範囲でゆっくりと可動域を広げるように関節を動かしながら筋肉をほぐした。



施術の途中、智樹はシロの反応に細心の注意を払った。

痛みや不安が見られたときには手を止め、シロの目を見つめながら「大丈夫だよ」と声をかけてリラックスさせた。


その一方で、シロが気持ちよさそうに目を細めた瞬間、智樹の心にも久しぶりの安堵が広がった。



「少しずつ、筋肉がほぐれてきたみたいだ」と手応えを感じた智樹は、最後に背骨全体のアライメントを確認し、体のバランスを整える施術を行った。


これによりシロの姿勢が自然とまっすぐに戻り、全身が軽くなったように見えた。


施術が終わり、シロを床に降ろすと、

シロは一歩、また一歩と 

友人の方へと歩み寄った。


その歩みはまだ慎重だったが、以前よりも明らかに軽やかで、友人の目には驚きと感動があふれていた。



「シロ…ありがとう、また一緒に散歩ができそうだ」



智樹は友人がシロを抱きしめる姿を見守りながら、施術によって誰かの大切な時間を取り戻す手助けができたことに、深い満足感を覚えた。



そして、シロの穏やかな瞳を見つめながら、彼は自分の手が再び癒しの力を持っていることを確信し、胸の奥に静かな希望が芽生え始めたのだった。


幸せはあなたの気づきから生まれます。

それではお楽しみください。

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