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サクラ・ライゼンは諦めない~スーパーロボットが作りたいので魔法世界も魔改造していきます~  作者: アラタアケル
第三章『リックドラック・サンディルムは屈さない』

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3-5「フレーレ遺跡・中層」

 フレーレ遺跡の探索は続く。

 スケルトン遭遇から小一時間、スケルトンの群れやゾンビの群れに遭遇するも、変わらず苦戦する事は無い戦いばかりで、無難に切り抜け前進していた。


 それなりに強力な魔物が出ると言う話だったが、今の所その兆しは無い。少々拍子抜けしてしまう程だった。


「そういえば、ルーナは炎魔法を使っておるな?

 それなら光魔法も使えるはずよな。アンデッドにはそっちの方が有効ではないのか?」

「うっ」


 周囲に敵の気配は無く、緩んだ空気の中で何となく気になった事を雑談の話題にしてみた。

 火の魔法は赤色第一系統に属する。第二系統が光属性だ。魔法の適正は色ごとに定められているから、火属性が使えるなら光属性も使えるのが道理だ。しかし、ルーナはフレーレ遺跡に来てから火球《ファイアーボール》や火矢《ファイアーアロー》など炎を用いた魔法しか使っていなかった。

 指摘を受けたルーナは冷や汗を流しながら渋い顔をする。

 隣で聞いていたラウルは苦笑し、ニーダは愉しそうに笑っていた。


「こいつ、第二系統の魔法は軒並み苦手なんだよ」

「ち、違うって! 青色魔法は得意だもん! 赤と黄色が苦手なだけだよ!」


 青色と言えば水と氷、黄色は土と闇だったか。なるほど、適性があっても得意不得意は別というものらしい。

 考えてみれば、魔法の根源はイメージ。それが上手くいかなければ如何に適性があっても無意味なのは道理だ。事実、我も適性だけで見れば赤色系統の魔法が使えておかしくないのだから、身をもって理解できる。


「ていうか、そういうニーダは魔法全滅じゃん!」

「俺はいいんだよ、身体強化と弓矢があれば十分強いからな」

「アンデッド相手にパニクってたのは誰だっけー?」


 二人のやり取りを微笑ましい目で見守りながら、我らは前進を続ける。

 ラウルはいつもの光景なのか苦笑しつつも我関せずと言った風にスタスタ歩いていた。


 フレーレ遺跡も半分ほど踏破したかという頃、まだ形が残っている建物を発見し、中を調べてみる事にする。

 宿屋か大店かと思しき建物の中は、当然ながら全てが朽ちており家具の類は原型を留めていない。

 残骸を漁ってみるが収穫物も無さそうで、諦めて外に出ようとしたところで何かの気配に足を止めた。


「こいつぁ……いるな、大きいのが」


 ニーダの額から冷や汗が垂れていた。軽口を叩けなくなるような存在を感じているようだ。

 壁に隠れて敵の姿は見えない。慎重に、敵の姿を伺おうと気配を押し殺してゆっくりと壁の向こうを覗き込む。


 そこには人間より二回りほど大きいサイズの全身に鎧を纏った首無しの騎士がいた。

 首に当たる部分からは青白い炎が漏れており、一目で人外の魔物だと分かる。

 両手には大剣と盾を持っているが、スケルトンのような廃棄寸前の錆びたものとは異なり、立派な装飾が施されており、真新しいとは言わないまでも刃こぼれの類は見られない。


「あれは俗にいうデュラハンか」

「いやいやいや。普通のデュラハンは人間サイズだよ。あんなデカくねぇ」

「特異個体……だな」


 どうやら通常のデュラハンより大型らしい。

 大きい事は良い事だ。肉がなく金属のみで動く見た目はロボットに近しく少しだけ親近感を覚える。

 だが、少しだけだ。所詮は魔物。せめて頭部があったならもう少し譲歩しても良かったかもしれないが、目的の為には倒すしかないただの敵だ。

 そして、特異個体という事はここまで外ればかりだった魔石収集に光明が見えたという事でもある。


「つまり良質な魔石を期待してもいいというわけだの」

「頼もしいな。だが気をつけろ。あの鎧、恐らく魔法はあまり効かない」

「通常のデュラハンがそうだから、多分間違いないと思う」


 ラウルとルーナから警鐘が鳴らされる。魔法に強いだけでなく、金属で覆われた全身は物理攻撃にも高い耐性がありそうだ。防御面に死角なし、といったところか。


「倒し方はあの首んところから剣をぶっ刺すのが定番だ」


 などと思っていたらニーダから弱点を教えられる。確かに剥き出しの首元から中を狙うというのは分かりやすい弱点だ。


「つまりコアの位置はスケルトンなどと変わらないというわけか」

「そういう事だ。生者を気取ってるのかもしれないな」


 人と同じ心臓の位置に弱点がある。そこにも何かしらの意味があるのかもしれない。

 そんな事を考えながらデュラハンの姿を目で追う。我の身長とデュラハンの足の付け根あたりまでがほぼ同等の高さだ。上から弱点を攻めようとなると、些か高さに難儀しそうだ。


「一つ聞いてよいか。やつの鎧は売れるのか?」


 攻め手を考える中で、疑問が浮かんだので確認を取る。

 我の問いかけに、ラウルは首を振って答えた。


「魔法に強いのはデュラハンの特性で、あの鎧自体は普通の鉄鎧のはずだ」

「あの大きさじゃ転用もできねぇだろうし、鉄くずとして買い取ってもらうしかねぇな」

「つまり、多少壊しても問題ない、と」


 それだけ分かれば十分だった。

 勝ち筋が頭に浮かび、ほくそ笑む。その姿をどう受け取ったのか、ニーダは困り顔で静止してきた。


「おいおい、いくらサクラが馬鹿力の持ち主でその斧が強いっつっても限度があるぜ」

「ふっ、残念ながら今回はこの斧は使わん」


 力任せにいくと思われていたようだ。どちらかと言わずとも我は力より知恵で戦うタイプのはずなのだが、なして皆が皆、我をパワーファイターと思いたがるのか。

 ただまぁ、せっかくのギミックウェポンたる《バトルハルバード》の活躍の場が無いのは我としても不満がある。今回は仕方ないとしても、どこか機会があればかっこよく振るってやりたい。


「えっ、まさか素手?」

「そんなわけあるか! まあ、そこで見ておれ。彼奴は我一人でやってみせよう」


 我の言葉をどう解釈したのか、ルーナはとんでもない勘違いをしているようだった。

 ツッコみを入れながら、三人を制止しつつ表に出る。

 どこを見ているのか不明だが、未だこちらを捉えている様子の無いデュラハンに正面切って啖呵を切る。


「デュラハン! 我が相手だ!」


 ゆらり、と幻影のように鎧をゆらめかせ、デュラハンがこちらと向かい合った。

 大剣と盾を構え、戦闘態勢に入ったのが分かる。

 だが、こちらも既に準備は出来ている。両手でメガネの位置を調整し、胸を張り、かっこいい発射体勢をとった。

 後は思う存分に叫び、放つだけだ。

 すなわち――


「必ず殺すと書いて必殺! 目からビーム(グラスラインレーザー)ァァァァ!」


 シュピイイィィィィィィン――


 我の咆哮に応えるように、二筋の閃光がデュラハンの胸を穿つ。

 レイニーと試し撃ちした時とは違う、レンズ全体から放たれる大口径のビームだ。


 グラスラインレーザーは、左右のレンズをつなぐブリッジ部分に魔石が埋め込まれている。

 その魔石を通じてフレーム部分に浸透した魔力は空気中に含まれる無数の成分を収集。それらを解砕する事で数種類の分子をレンズの表面に精製する。更にそれらの分子を合成・解砕していく事でサクライズ粒子が生まれるのだ。

 そうして生み出されたサクライズ粒子はレンズの中央部分に集積され、圧縮される。高密度に収束されたサクライズ粒子は亜高速で直進する。この際、超高熱粒子と化したサクライズ粒子は触れる物全てを消失させるエネルギーの塊=ビームとなるのだ。


 ちなみに、魔力の操作を苦手とする……もとい操作不能の我が如何様に魔道具を使っているのか。

 それは魔法封じの腕輪改の力である。

 魔力の体外への排出を妨害している魔法封じの腕輪だが、我が設計した『改』では我の思考によって我の所持している魔石へのルートが解禁されるのだ。もちろん、流通させる魔力量も思考に合わせられる。つまり、外的に魔力を制御できる腕輪という事だ。

 元々の効果である魔法封じの時点で魔力を制御できているのだ。ならば少しの改造で自由度を上げられてもおかしくあるまい。


 もう一つ余談だが、名称にレーザーとビームがごちゃまぜになっているのは敢えてだ。開発者としては正しい単語の活用をすべきなのだろうが、我はそれよりもスーパーロボットの浪漫の方を重んじる。


 何が言いたいか。それは語感だ。

 かっこいいが全てに勝るのだ!

 故に、我がかっこいいと思う方を採用する。それがジャスティス。


 ズシャアアアン!!


 おっと、我がグラスラインレーザーの仕組みについて反芻している間に、デュラハンが崩れ落ちたようだ。

 弱点である心臓部を一撃で貫いたのだから、当然だ。

 彼奴には悪いが、実戦での試験運用はこれで果たせた。魔物相手にも十分通用する。この事実は大きい。


「な、な、ななな……」


 試験結果に満足していると、背後から間抜けな声が聞こえてきた。声というより鳴き声か。

 振り返ると、ラウルたちが揃って棒立ちになっていた。


「なんじゃありゃぁぁぁ!!?」

「魔法に強いデュラハンの鎧を一撃で……!?」

「い、一体何をしたんだサクラ!?」


 三者三様、混乱して我に説明を仰いでくる。その姿の何と心地よい事か。


「クックック、これぞ我が必殺兵器! グラスラインレーザーだ!」

「だから何なんだよそれ!?」

「魔道具……だよね。こんなの初めて見た。どこで手に入れたの?」


 変わらずツッコみを入れ続けるニーダに対し、少し落ち着いたらしいルーナは我のメガネに手を当てながら興味深そうにマジマジと見つめてくる。

 どうやらどこかで調達したものと思われているようだ。この世界で魔道具を自作する者は希少らしいのでそう思い込むのも仕方あるまい。だが、間違っている情報は訂正せねばならない。


「手に入れたのではない。作ったのだ」

「作った!? まさか、スーパーロボットってのがこれ……なのか?」


 驚愕するラウルだが、中々いい勘をしている。

 我の夢をしっかり覚えてくれているところも好感が持てるポイントだ。


「そうではないが、その過程ではあるな。少しは我の作ろうとしている物の偉大さが伝わったかの」

「これが過程……サクラちゃんはとんでもないものを作ろうとしてるんだね」

「その通り。目指す頂きはとんでもなく遠いがの。いつかは辿り着いて見せるつもりだ」


 まだゴールには程遠い。必殺兵器がこれ一つでは足りないし、大型化と魔力に変わる代替動力を用意しなければならない。何よりまず、兵器を扱う本体も必要だ。

 それでも、一歩一歩着実に進むしかない。

 その為にもまずは、このフレーレ遺跡を攻略し魔石を集める所からだ。


 決意を新たに、我はフレーレ遺跡の最奥へと視線を向けるのであった――

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