8話 見知らぬ男
扉の先から光が入り込み眩しい明かりに瞳孔が開き思わず目を瞑った。
そこには街が存在していた。
そこは交易で栄えた街のようであった。
レンガ造りの建物に沿って屋台が並んでいる。人々が生活をしていたのだった。
驚いたのは行き交う人々だった。
多種多様な人種で溢れていた。人もいれば、魚人のような見た目、爬虫類のような見た目の人間が普通に歩き買い物をしながら生活をしていた。
「ここは…?」
「驚いた?ここにいる人達…みんな私達と同じ異世界転生者よ」
「へ?」
「ここにる奴らはCランク以上の異世界転生者ってわけよ。まあ、商人や店主は奴隷と難民だけどね」
奴隷か…そういう世界観なのだろう。
確かに商人の後ろに首輪のような物を付けた者が目に付く。
「あんたら二人で散歩でもしたら?私はこいつを病院に連れて行くから」
「まじか!?」
田中は嬉しそうに前のめりになって喜んでいた。
いやいや待て待て。どうやってそのあと集合するんだよ。こっちはスマホ持ってないんだぞ?
「いいけど…どうやって集合するんだ?」
「終わったら連絡するから」
「どうやって?」
彼女は俺の質問に答えず手を上げて去っていった。
まあ、向こうからアクション起こしてくれるのだろう。
俺と田中は二人残される形になった。俺は田中の顔を見た。田中も俺の顔を見た。浮足立つ顔をしていた。
でも…多分俺も同じ顔をしている。
「俺達ってまじで異世界に来たんだな?」
「ああ、こういうのを…待っていたんだ」
暫く二人で街をブラブラした。色んな屋台や店がある。
屋台の店主は多種多様な人種でもちろん言葉を話していた。しかし、言葉は不思議と理解できる。看板の文字も不思議と読める。この世界の文字は象形文字に少し似ている。
けれど、その言葉の意味が分かるわけではない。ルビが振られているのだ。奇妙な異世界文字の上に日本語が表示されている。これも魔法なのか?
「おお! うまそうなもんがある!? 腹減ってたんだ!!」
田中は美味しいそうな匂いがする屋台に向かっていってしまった・。
俺が後を追いかけようとした時、一人のカエル頭の男が話しかけきた。
「おいそこの兄ちゃんどうだいこの干物? なかなかとれない奴だ。一本どうだい」
「いくら?」
「3Gだ。お得だよ。」
3Gか。大した額じゃない。
案外物価は安いのかもしれない。
「おーけー」
俺は了承した。3Gなんてはした金だ。
だが、どうやってこれ支払うんだ?
「あの…どうやって支払うんすか?」
「なんだよ兄ちゃん、お金持ってないのか?」
「いや…あるんだけど。多分…」
俺はステータスを表示しながら顎に手を当てながら見つめていた。
いや…これまじどう払うの?
「所持Gの部分をタップすれば現物化する金額が選べる」
「へ?」
親切にも後ろから教えてくれたようであった。そうか他にも異世界転生者はいるんだったな…
俺は言われた通りタップしてみた、すると引き出す金額が表示される。
俺は3Gと入力すると、金貨が3枚でてきた。
「ありがとうございます。」
「いやいや困った時はお互い様さ。僕も昔君と同じように教えてもらったんだ」
その人は優しそうな顔をしていた。黒縁メガネをかけ、髪は少しパーマがかった黒髪のマッシュヘアをしている。
身長は180cm程あるだろうか。すらっとした手足がまるでモデル体型のように見える。
「あなたは?」
「リフル・レント。君と同じ異世界転生者で…Sランクだよ」
そう言って彼は優しく微笑んだ。多分俺が女だったら惚れてたかもしれない。
名前からして日本人じゃないのだろうか?外国人か?
「立ち話もなんだし、一緒にお茶でもしないかい?」
俺は迷った。田中に一声掛けた方がいいじゃないだろうか?
しかし、まあ後でエリカが声かけてくれるのなら後ほど集まるのだろう。
というかもう見失ってしまったからどうしようもない。
「分かりました」
俺はリフルに付いていくことにした。