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異世界転生バトルロワイヤル  作者: ミセスココア
1章 はじまり
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6話 神具

『まだ力を求めるか…神に背いた業を…お前達には悪いがここで消さしてもらう』


 そう骸骨が言うと大剣の炎が大きく燃え広がり始めた。地面からは紫の灯りが漏れ出している。どうやらこれが魔素というものらしい。何か体の中でほんのりと暖かく感じるのだ。血行が良くなるような感覚に似ている。


 骸骨の炎は体中に燃え広がっていく。しかし、骸骨も渾身の力で大剣を握り締め、こちらに向かって切り込む構えを取った。


 大技がくる。奴の最後で最大の攻撃が…俺の直感がそう言っている。多分この攻撃をかわせば俺の勝ちだ。だが、かわせなければ…死が待っている。


 骸骨が構え最後の一撃を放つ瞬間、後ろから何かが当たった。

 骸骨は一瞬気を取られ振り返るが、そこには何もない。


 田中だ…田中が時間を稼ごうとしてくれたのだろう。


「ソトニ…ソトニ…ソトニ…」


 俺は再び大量のハエを召喚する。やれれる事だったらなんでもやってやる。


 何度も何度も早口で詠唱を繰り返す。


 唾液が減って、噛みそうになるが構わず唱え続ける。

 

 骸骨はまだ、田中を探してキョロキョロしている。

 俺は短刀を骸骨に投げつけた。


「よそ見してんなよ」


 体は炎で全身を焼かれている。しかし、赤く光る眼光は静かにこちらを見つめている。

 骸骨は物凄い勢いで空間を切り裂いた。


 俺はハエで壁を作った。できるだけ密度を濃くし、厚みを作った。俺一人だけ守れれば良いのだ。


 しかしその時俺は理解した。避けれるレベルの攻撃ではなかった。

 考えが甘かった。そもそもあのダークエルフが神具と言っていたのだ。

 強力な武器であることを理解しておくべきだった。


 平行な炎の線が近づくにつれて大きくなる。初段は何とか『呪言虫』のハエの壁で耐えていたが、

徐々に層が焼かれていく。5層分作った壁は徐々に薄くなっていき最後に1層になっていった。


 ここで…終わりなのだ。でも相打ちだ。


 この状況でよくやった方だ。俺は自分を慰めた。そうして、下を向き目を瞑った。

 その瞬間頭の中で謎の言葉が浮かんできた。俺はその言葉をそっと小さく呟く。


「ニヒル」


 気が付くと目の前には奇妙な模様が見えた。これは…羽だ。

 俺の目の前には大きな蛾が存在していた。そうして蛾は大きな羽でそっと俺を包み込んだ。


 洞窟内の炎は消え去った。あの骸骨も存在していなかった。


 そこには一本の大剣が地面に刺さっている。あの骸骨の大剣だ。

 俺は近づき引き抜いた。その時、脳内に情報が流れ込んできた。


 ここは…さっきの洞窟とは違う空間にいた。

 周りには建物一つ見えない。草原が広がり、優しい風が髪を靡いている。

 ずっと向こうには丘陵が見える。自然豊かな場所にいた…

 

 これは…誰かの記憶の中か?

 

 俺の前には一組の男女がいた。

 女の方はエルフだった。


「これはあなたが持ってほしいの」


 女のエルフはそう言って、男に大剣を手渡した。

 これは…あの骸骨が持っていた大剣だ。


「だめだ…」


「いいえ。あなたが持つべきなのよ。あなた以外持てないわ。人は皆心が弱いもの…」


「僕だって強くない…」


「あなたは強いわよ」


「どうして君が…ミューレ。君がどうして罪を背負う必要があるというのだ?」


 女のエルフはミューレというらしかった。


「私が望んだのよ。それより、エリック私が先に死んじゃうなんてね」


「嘘だ嘘だ…」


ミューレはエリックという男の額に口づけをした。

そうして、男の首に金色の首飾りを掛けた。


「あなたには酷な事を押し付けてしまうわね。」


「おい!おい!」


 俺ははっと意識を取り戻した。

 気が付くと田中が隣にいた。


「倒したんだな!!流石だな!!」


「ああ」


 今のは何だったのだろう…


「ほら、ワープゲートが出てきた!?ミッションクリアだ!!急いで帰ろう!」


「そうだな」


 俺はワープゲートに入る前に菊池を背負った。菊池は骸骨の炎で体が燃えていた。俺は上着を脱ぎ、菊池に掛けてそのまま背負った。


 少し熱い・・


 そう言えば、菊池の右腕はどこに行ったのだろうか?

 俺が辺りを探し歩き回るとそこには金色の首飾りが落ちていた。どうやら、あの記憶は骸骨の物だったらしい。


 エリック…あの骸骨はそういう名前だったのだ。


 そうして、俺達はワープゲートに入っていった。

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