12話
菊池はとある森の中に転送された。周りには人が見えない。
一体今度はどこに転送されたというのか…ここも魔素区域なのだろうか。
まずは人を探さなくては…
地面の落ち葉を踏みしめながら森の中を進んでいた。
それにもしても静かな森だ。先ほどのダークエルフの説明だと、どうやら今回のターゲットは半人半獣の魔物のようであった。そうしてターゲットの神具は『氷湖の弓』らしい。
『氷湖の弓』
キーワードは氷と湖と弓か?言葉通り氷の弓なのだろうか?そういった属性が付与されているのか?
だとしたら、俺のスキルと相性がいいかもしれない。
とりあえず、湖を探す必要がある。この森のどこかにきっと湖がありそこにその魔物はいるのだろう。
暫く歩いていたが、人影一つ見当たらない。
やれやれと菊池はポケットから煙草を取り出し、火を点けた。
箱の中を確認すると残り2本しかなかった。
俺は前回のミッションで乾に助けられた。気が付くとベッドの上で知らない女が立っていた。また、女か…と菊池は内心思った。
別にトラウマがあるわけではない。そうではないが、やはり女に殺されてこの世界に来たことを考えると少し身構える物はある。
その女はエリカと名乗り、この世界について詳しく教えてくれた。エリカに俺は一つ重要な事を尋ねた。
「なあ、タバコはあるのか?」
「あるわよ」
森の中で吸うたばこは格別だ。煙を吸い込む際に透き通った空気も同じように吸い込める。
俺が空に煙を吐き出すと後ろから女に声を掛けられた。
また、女だ…
「あれー、いけないんだぁ。山火事の原因になるんだよタバコは」
「別にポイ捨てしなければ問題ないだろう」
その女は金髪の髪をしていた。顔は幼いが整ている。露出の多いワンピースを着ており、首元に黒のチョークとハートのペンダントを付けており、下している髪が揺れている。
酷く挑発的に下からこちらを覗いてくる。
「へえ、口答えするんだあ。ルーキーのくせに。殺しちゃおうかなぁ」
菊池は急いでタバコを一吸いすると、握りしめた。右手の拳が赤く燃え上がる。
「へえ、いいスキルだね、冗談だよ。お兄さん一人なの?」
「ああ」
菊池は短く答えた。
「私も一人だし一緒に行動しない?私は夏希有、よろしく~」
彼女はそう言って手を差し出した。
どこかつかめない女だ。外見からして18歳くらいだろうか?高校生ぐらいに見える。
菊池が彼女の差し出した手を見つめていると、一つの悲鳴を耳にした。
「へえ、もう始まったんだぁ」
菊池は急いで走り出し、悲鳴の元に向かった。
そこには死体の山が連なり、一人の男が死体を触っていた。
今回のCランク帯の参加者だろうか?
その男の後ろに10人ほどの集団がいた。
数名は後ずさりしながら、死体をあさる男を眺めている。
そ うして、その集団は走って逃げようとしたがその男は身動き一つせず右手の平をそちらに翳した。
「駄目だよ」
そうして、男の手のひらから蜘蛛の糸のようなものが飛び出し、その集団を覆った。
彼らは身動き取れず、絡まり合っている。
それが奴のスキルなのだろうか?
「あーあ、やばい奴に合っちゃったね」
夏希は静かににやにやしながら口を呟いた。どこか楽しそうだ。
「知ってるのか?」
「いや、知らない。でも匂いがするよ」
「匂い?」
「やばい奴の匂い。私そういうのわかっちゃうんだぁ」
そう言って彼女はへらへら笑っていた。要領がつかめない奴だ。
菊池は急いで蜘蛛の糸に捕まった集団に近づき、右手の炎で焼き払った。
「ねえ、邪魔しないで欲しいんだけど」
男は静かに菊池を見つめていた。男の顔には血が付いていた。死体でも食っていたのか?
死体は内臓が飛び出し、体は裁断されていた。
「死体でも食っていたのか?」
その問いかけに男は菊池に向かって蜘蛛の糸を飛ばしてくる。しかし、菊池は右手の炎で再び焼き払った。
「相性が悪いみたいだな」
「へえ、君面白いスキル持ってるね。欲しくなってきちゃった」
そう言って男は首を鳴らした。
「お兄さん気を付けた方がいいよ」
「何が?」
「あいつのスキル多分、蜘蛛の糸だけじゃないみたいよ」
「は?」
「死体の切り傷見ると多分違うんじゃない?」
彼女はそう言って落ちている死体を観察しながら答えた。
「ご名答。君賢いね。ハンデとしと教えてあげるよ。僕のスキルは『貪欲者』食べたスキルを自在に扱えるんだ」
そう言って男は右手を翳した。また、あの蜘蛛の糸が来るのか?そう思った時、菊池物凄い勢いで右手に吸い込まれた。その勢いのまま男は左の拳で菊池を殴り飛ばした。
「ははは…これ使えるかも」




