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11話

 転送された先は、静かな湖がある森の中だった。針葉樹が生い茂ったその森を大きく揺さぶる風が吹く。湖の水面もそれに合わせて揺れる。遠くで何か鳥のような鳴き声がする。


 ここも、魔素区域なのか。 

 自然豊かな場所だ。空気がおいしく感じる。

 

 どうやら魔素区域にも生物は繁栄しているようだ。


 俺の周りには今回のミッションの参加者数名集まっていた。こいつら全員Cランク帯なのだろうか?その中に菊池も田中も見当たらなかった。


頭の中にノイズのようなものが流れ込む。それを合図にダークエルフの声が聞こえた。


『今回のお前達のターゲットはこれだ』


 俺の目の前には一体の魔物の姿が映し出された。

 

 半人半獣のその魔物は四足の馬のような下半身と屈強な男の体をしていた。

 そうして、その魔物は薄い空色の大型の弓を有していた。

 成人男性ほどの大きさだ。


「ケンタウロスか」


 誰かがそうつぶやいた。


『一つだけ今回はアドバイスを送ろう。そいつの弓は気をつけろ。それでは検討を祈る。』

  

 プツンという音とおもにダークエルフの声は消え去った。 


 俺は湖に近づく。底が見える程水は透き通っている。魚影が見え俺は屈んで魚の行方を追うと魚はこちらに気づき、どこかに泳ぎ去ってしまった。


 水面に俺の姿が映し出された。そういえば、こちらに来て初めて自分の姿を見た。ここであまり鏡を見る事はなかった。


「おい。あんまり湖に近づくなよ」


 一人の男が俺に声を掛けてきた。振り返りそいつの顔を見ると、俺は身構えた。

 その男はカエルのような顔をしていた。というかカエルであった。顔はカエルで胴体は人間。


 こいつも魔物か??


「おいよせ、俺は魔物じゃない。これだから新人は嫌なんだ」


 俺が身構えた事を察し、カエル男は手を上げて敵意がない事を示した。


「やれやれ、お前の世界にカエル顔の男はいなかったのか?」


「地球でどこ探したらそんな奴いんだよ」


「やれやれ、そうか。君も地球からか… 」


こいつは何を言ってるんだ?というかこいつは何なんだ?頭があまり追い付かない。


「まあ、それはそうと湖に近づくな。安易に近づくと見つかるぞ」


「何に?」


 俺がそう言うと、水面が揺れ始めた。


 水面は中央で円を描きながら波を起こしている。そうして徐々にその波の揺れが重なり合い、ケンタウロスは顔を出した。


 その目はこちらを一点に見つめている。薄いブルーのその瞳は俺を冷たく鋭い。俺は足がすくんだ。まるで足が凍り付けされたかのように感じる。これは奴の能力なのか?


 それとも、ただ俺が怖気づいてしまっただけなのだろうか?

 

「ほら…言わんこっちゃない」


 カエル男はため息に混じりそう言った。


「おい!いたぞ!あいつがターゲットだ」


「向こうから来てくれるならありがたい。探す手間が省ける」


 ケンタウロスが水面から姿を現した。水面は揺れる波の状態のまま凍った。

 俺は急いで立ち去ろうとしたが、足が動かない。よく見ると波が足先に到達しており、靴底も凍っている。


「おまえも早く逃げろ」


 カエル男は大声で叫ぶ。


「ダメだ。足が凍ってて動けない」


 ケンタウロスは俺に標的を変え、弓を放った。


 あの矢はまずい……


「仕方ねえな」


 カエル男は自身の口に手を突っ込み、一本の剣を取り出した。そうして、しゃがんみ飛び上がった。とんでもないジャンプ力だ。5mは優に超えている。とんでもない運動神経だ。


 カエル男は綺麗な剣裁きで、ケンタウロスの弓を上空で弾き落した。


 そうして、俺の足にこびり付いた氷を剣先でそぎ落とすと、俺をお姫様抱っこした。


「え……ちょ!?」


「一旦引く。このままじゃ分が悪いからな。このままいくぞ」


 されるがままに俺はそのままお姫様抱っこされて、森の中へと逃げていった。

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