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造られた世界(仮)  作者: マグ
最終章・世界を超えた刺客
40/44

造られたモノの使命










空間の歪む感覚。私には人間には無い感覚が存在する。分かってしまう。何か良くないものがこの要塞都市へやってこようとしている。警戒態勢を取らせるように兵士達を防壁の前に立たせる。

そして現れる。空間を歪ませ、禍々しい雰囲気を纏い現れた。

黒鎌)クフフ...これはこれは盛大なお迎えな様で

そこに現れたのは悪魔。空中から私達を見下すように見てくる。

アルファルド)総員放て!

遠距離兵器をフル稼働させ黒鎌に向けて放つ

命中する。砂煙が上がるがその砂煙は切り裂かれ黒鎌は服に着いた砂を払う。

黒鎌)どうやら挨拶もまともに出来ない人間共の様ですねぇ。いいでしょう。

私が絶望に陥ったのは、この瞬間だった。喉が凍るようだった。

悪魔がそう言い放った刹那的確に兵士達の首を1人残らず跳ねていたのだから。

アルファルド)なっ...そんな...

防壁の上で見ていたアルファルドはその様子を信じられないように。

黒鎌)あぁ...実に哀れだ...

無表情でそう言ってはアルファルドの方を見て

黒鎌)さて、少しお話をしましょう。

其奴はまた上空からそう言う

アルファルド)貴方と話すことなんてない...!

地を強く蹴り跳び上がる。霊気纏を発動させては大きく黒鎌に向かって剣を薙ぎ払う。

黒鎌)自身の周辺の空間を操る力。悪くは無いと思いますが...

時間操作の霊気纏が黒鎌を捉えた瞬間その霊気纏はガラスのように割れて

黒鎌)私には効きませんね

蹴りが腹部に刺さる。防壁まで吹き飛ばされる威力だった。

アルファルドは防壁に叩きつけられた。骨が軋み、血が口から滲む。

それでも彼は、目を逸らさなかった。

黒鎌は空に浮かびながら、飽きたように嘆息する。

黒鎌)あぁ…これだから人間は困る。まずは話を聞いてから反抗するべきですよ

アルファルド)貴様が言葉を交わすに値するとでも?

黒鎌)もちろんですとも

黒鎌は片手を挙げる。瞬間、空間に裂け目が現れ、その向こうに──異様な光景が映る。

焦土。燃え尽きた王都。泣き叫ぶ人々。聖女が血に濡れ、崩れ落ちる映像。

アルファルド)これは──ッ!?

黒鎌)未来ですよ。あなたが私と“契約”しなかった未来です

黒鎌は口角を上げた。

黒鎌)どうです?お話の続きを聞く気になりましたか?

アルファルドは再び立ち上がった。膝をつき、血を吐きながらも、剣を構える。

その瞳にあるのは、恐れではない。拒絶と怒り。

黒鎌は肩をすくめた。

黒鎌)──まだやるのですか。まあ、いいでしょう。では遊戯を続けましょうか

黒の気流が空を走る。その先端から放たれる黒鎌の刃は、歪んだ軌道で襲いかかる。

だが、アルファルドは──それを避けた。

いや、“間一髪で”避けた。

黒鎌)……ほう

次いで放たれた三連撃。上下左右からの包囲。

それすらも、アルファルドは身体を僅かに捻るだけで抜けていく。

黒鎌の目が細められる。

(──これは)

黒鎌)……妙ですねぇ。今のは、絶対に避けられぬ角度で設計したのですが

黒鎌は宙に浮かびながら、わずかに後方へ退く。

攻撃の手を緩めるわけではないが、その目には明らかな警戒が宿っていた。

(致命傷になる一撃だけ、毎回──まるで“未来が見えている”ように、避けている)

アルファルドの息は荒い。体勢も崩れ気味。

だが、それでも立っている。

黒鎌の口元に、薄く笑みが戻る。

黒鎌)……やはり、あなた、“ただの人造人間”ではありませんねぇ

黒鎌は目を細め、ついに“それ”を使う決意をしたようだった。

黒鎌)……そろそろ“遊戯”は終わりにしましょうか

その声音には、もはや楽しげな色はなかった。

黒鎌が片手を掲げる。

空が歪み、黒い円環が出現する。その中心から、禍々しい黒鎖が四方に走った。

黒鎌)《死絶ノ縛鎖》──絶対に抗えぬ、死の呪い

アルファルドの周囲に、闇の縛鎖が突如出現する。

彼女が動くより早く、それは四肢に巻きついた。

手足が裂けるほど締め付けられ、膝を折る。

(──動けない……!?)

黒鎌)拘束完了。残り、二秒

黒鎌の声が、まるで死神の宣告のように響く。

黒鎌)これで、終わりです

闇の鎖が収束し、一本の杭と化す。

鋭く、真っ直ぐに──アルファルドの胸を貫かんとする。

その瞬間。

アルファルドの瞳が、恐怖に染まり、震え、絶叫した。

(兄様...──兄様ッ...!!)

──ズゥンッ!!

鎖が心臓を貫いた音が響いた。

……だが。

その杭が、空を裂く一歩手前、ほんの一瞬の“狂い”と共に、

アルファルドの姿が──消えていた。

鎖は空を刺し、爆ぜるように四散する。

黒鎌が、声を漏らした。

黒鎌)……? いえ……まさか……

そして、確信へと至る。

黒鎌)あなた──もしかして、“未来死”を...?


── ── ── ── ── ──


――ぐちゃ、という音と共に、何かが砕けた。


胸を突き破った黒い杭。心臓が潰れ、意識が白く染まっていく。

息ができない。痛みではない。“終わり”だと分かる絶望だけが、重く重く、首を絞めるように覆いかぶさる。


暗闇に落ちる感覚。


……次の瞬間、時間が巻き戻る。


世界が“それより少し前”に戻る。

自分の身体も、傷も、空間も、元に戻っている。


(……またか)


アルファルドは、静かに吐きそうになるのをこらえた。

手が震えている。心臓が、今はまだ動いていることがわかる。


けれど、もう**“殺された後”の記憶**が刻まれてしまっている。


砕かれる瞬間の感覚。血の味。

心臓が握りつぶされるような痛みと、終わることへの本能的な恐怖。


そして、目の前にはまた──黒鎌。


(逃げろ。動け。今度こそ……!)


動く。けれど遅い。


束縛。締めつけ。

2秒後──また死ぬ。



……再び、死ぬ。


そしてまた戻る。


そして、また死ぬ。


……また、戻る。


◆◆


……死ぬ。

砕かれる。貫かれる。

肺が潰れ、視界が赤に染まる。


戻る。


次は足を引き裂かれた。

次は顎を砕かれた。

次は頭を──


(いやだ……やめろ……!)


声が出ない。出した覚えがない。

なのに喉は枯れている。


◆◆◆


何回目だ。分からない。

足が震える。視界がぼやける。

何度死んだのか。


いや、“死ぬ”というのはもう感覚として曖昧だ。


ただ、壊れていく自分の記憶。

境界がぼやける。

自分の体は“今、生きている”という実感が薄れてきている。


◆◆◆◆


(……兄様……)


思い出す。


温かい手。背を押してくれた人。

弱かった自分に、希望を与えてくれた存在。


それだけを思い出して、立つ。


足が動かない?関係ない。

心臓が止まりそう?関係ない。


殺された数万回のすべてが、喉元にへばりついて離れない。


それでも。


「──まだ、だ……ッ」


アルファルドは歯を食いしばり...


視界が再び、黒に染まる。

空間を裂く音。鎖の震える気配。


数万と数える間に、アルファルドはすでに**“死の構造”**を知っていた。


束縛された腕。締め付ける足。首に巻きつく冷たい輪。

そして──杭が生まれる“タイミング”。


刺さるまでの2秒。


その1.82秒目に、空間の左側にわずかな“緩み”が生じる。

束縛の強度が一瞬だけ、不安定になる──

そのことを、死ぬたびに神経に焼き付けてきた。


だから。


束縛された腕のわずかに動く角度、

呼吸とともに上がる肩の位置、

背中に走る反動を、全て“訓練された反射”として体が覚えていた。


(今……今しかない──ッ!)


0.18秒の自由時間を、アルファルドは**“跳躍”**に変えた。


いや、正確には跳躍ですらない。

束縛されながら、体を半回転し、関節を逆にねじって反動を殺さずに地面に倒れ込む。


黒鎖は、その直後の空間を真っ直ぐ貫いた。


鎖の先端が、地を抉る音だけが残る。


……避けた。


だが、当然そこには代償があった。


アルファルドの肩は完全に外れ、右足の骨が砕け、血が口からあふれ出る。


それでも、彼女は生きている。


(間に合った……“だけ”だ……)


自分の肉体がボロボロになっていく音が、やけに冷静に響いていた。


上空。

黒鎌の瞳が、初めてわずかに見開かれる。


黒鎌)……避けた、だと?


一呼吸遅れて、彼の口から言葉が漏れた。


黒鎌)あの速度で……“あの拘束下で”? そんな馬鹿な……いや


そして、ぽつりと呟く。


黒鎌)あなた──もしかして、“未来死”を...?


ーーーーーーーーーーーー


未来死。それはかつて魔王として君臨したマグが使用していたスキル。自身が死亡した際、それを「そういう未来を見た」ということに留め、死への恐怖を代償に約2秒前に遡れるスキル。しかし、かの魔王マグですらこのスキルの限度は3回、それを超えると精神崩壊を起こし、生への執着を意識することが出来なくなる。つまりは死が訪れる。


アルファルド)...私は貴方には屈しない...負けはしない...!

アルファルドは霊気で剣を作り出す。今迄使用しなかった所謂固有武器である。

黒鎌)...いいでしょう。いくら貴方が未来死を持っているからと言って、私を倒すことはできません。

黒鎌はどうやらアルファルドの実力を認めたのか、剣を消しては大鎌を取り出す。

黒鎌)後何回、貴方は死を体験するでしょうか?

黒鎌はアルファルドに向かって飛び、鎌を振って斬撃を放つ。速度的に避けることは出来ない。しかし未来死を発動させることが出来るアルファルドはありえない反射神経のようなもので避けては鎌本体の攻撃を剣で防ぐ。

アルファルドが剣を突き立てた大地から、今度は淡い青黒い光が広がっていく。

それは“霊気”とは違う、もっと生理的に不快で、冷たい波動だった。

アルファルド)……貴方のような存在に、痛みを知らないままでいさせるわけにはいかない

アルファルドの言葉が、怒りでも、悲しみでもない。

ただ、“決意”そのものだった。

「《死共感》──発動」

瞬間、地面から黒鎌の足元へと細い影のような鎖が伸びる。

それが彼の足に触れた瞬間、音もなく“繋がった”。

黒鎌)……? 今のは……何をしたのです?

アルファルドは答えない。

ただ、霊気の剣を構え直した。

黒鎌が眉を潜める。

黒鎌)ふん……まだ悪あがきですか

そう言って、黒鎌はアルファルドの肩を斬り裂くように鎌を放つ。

――ズバッ

鎌が浅く、肩を裂いた。

アルファルドの口から血が噴き出す。

同時に。

黒鎌)……ッ!? これは……ッ

黒鎌の左肩にも、何の接触もないのに、同じ切り裂き傷が走った。

肩の筋肉が裂け、骨の中まで響く“斬撃の実感”が、彼の神経を直撃する。

黒鎌)これは……まさか……ッ!?

アルファルド)貴方が与えた痛みは……これから、すべて“あなたにも届く”

アルファルドは、血を流しながら、なおも真っ直ぐに見上げた。

アルファルド)私が約3万回、受けた痛みを──あなたにも、少しずつ返していく

黒鎌は、僅かに後退しながらも、信じられないという表情で肩を押さえる。

黒鎌)……痛みを、共に感じさせる? バカな、それでは──攻撃する度に……私も……ッ

その手がわずかに震えているのを、アルファルドは見逃さなかった。

肩を裂かれ、呼吸を荒げながらも、黒鎌はなおも笑っていた。

だがその笑みには、最初のような余裕はない。

“共に痛む”という発想が、彼の根幹をかすかに軋ませ始めている。

「ふふ……ならば──」

一歩、黒鎌が前に出る。

その足音に、空気がつられるように重く揺れた。

「私だけが、苦しむなど──御免ですので」

静かに、大鎌を高く掲げる。

空が染まる。

まるで夜が一瞬で落ちてくるように。

「《双極葬鎌・終ノそうきょくそうれん・おわりのしき》──」

大気が逆流し始めた。

アルファルドの頬に当たる風が、焼けつくように熱い。

「生と死を、共に呑む」

鎌の柄が二つに割れ、宙に浮かぶように“対”の鎌へと変わる。

そのまま、空間そのものが鎌に吸い込まれていく。

「どうせ貴方も、立てないでしょう? 私だけ死ぬくらいなら──」

アルファルドを正面に捉えながら、黒鎌は宣言する。

「せめて相打ちを!」

鎌が放たれる。

双つの斬撃が、左右から螺旋を描いて収束し、

“一点”を撃ち抜く滅びの波動がアルファルドを呑み込もうとする。


双つの鎌が、空間を割るように迫ってくる。

空が裂け、風が泣き叫び、世界が死に染まろうとしていた。


アルファルドの身体はもう限界だった。

意識が遠のく。


――もう、ダメかもしれない。


(……兄様……)


意識が沈む、その刹那。

背後から、確かに“誰か”が肩に触れる感触があった。


「ここで終わるのか?」


静かで、あたたかく、しかし真っ直ぐな声。


アルファルドが目を向けると、

そこには兄様──マグの姿が、淡く立っていた。


「あいつに屈してしまうのか? お前が?」


マグは笑っている。優しく、しかし誇り高く。


「……けど、お前は強い。誰よりも優しい、俺の妹だ」


アルファルドの膝が震える。

もう動けるはずがない身体なのに──

その言葉だけが、心の奥に火を点けた。


「大丈夫だよ。兄様がついてるからな」


その言葉と同時に、

アルファルドの胸の奥から黒と青の霊気が溢れ出した。

まるでマグとアルファルド、二人の魂が重なるように。


「……兄様……」


立ち上がる。

崩れたはずの足が、力を取り戻す。

折れた剣が、眩い光に包まれて形を変える。


それはまさに──兄の意志を宿した剣。


「黒鎌……これが、私(俺)たちの“答え”だ──ッ!!」


双鎌が迫る。


だがアルファルドの剣は、ただの一振りでそれらを粉砕した。


空が裂ける。

闇が退く。


その一閃は、黒鎌の奥義《双極葬鎌・終ノ式》すらも貫き、打ち破る。


「なに…!?」


その表情には、初めて浮かんだ“恐れ”が刻まれていた。


アルファルドは声を上げながら黒鎌に向けてその剣を放った。その技は、"名も無き技"

それは強く光を放ち、王都にもその光が届いただろう。


「私は...兄様の役に...立てた...かな...」


そう呟くと力尽きたように、その場に倒れた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「おはよう。れい。」

眠らされてしまってからどのくらい経っただろうか。私はその声で目が覚めた。

れい)おはようまみゃ。

どうやら私より早く起きていたまみゃは私を起こしてくれたようだ。

まみゃ)私達はルート確認だっけ?皆起こして早く行こーよ!

まみゃが先程よりも元気だ。睡眠不足で機嫌が悪かったのだろうか。しかし何処かその目にはまだ虚ろげな物が...

そして私達は全員起こしてから、れいとまみゃ、ルトラとマリアでルート確認を行うのであった。












◇◇◇◇


れいとまみゃが調べるのは崖際ルート。この大陸の端である。崖下にある"黒海"は、未知で強力過ぎるモンスターが生息しているとされていて、嵐で遭難してしまった船が巨大な何者かに食いちぎられた残骸が流れ着くことも珍しくはない。そして、時折その巨体が上空に投げ出されるように飛び上がり、津波を発生させることもある。つまりはこの海に落ちたら一巻の終わりというわけだ。

この説明をマグから聞いていた為、危険な場所ということもあってれいとまみゃが出向くこととなった。

「にしても随分と狭いね。ここで戦闘になったら海に落ちるのが怖くてまともに戦えないよ」

まみゃは崖下の黒海を覗くようにみては

「ちょっと落ちないでよ?私だって怖いし...」

あんな話を聞いてしまったら恐怖もあるがちょっと気になってしまう。

「ホーリーアローとか海に打ち込んだらなんか反応したりするのかな」

れいは気になってホーリーアローを海に放った。

しかしそれはただ海を貫くだけであり、何か変わったことはなかった。

「なーんだ。本当は何もいないんじゃない?」

まみゃが少しつまらなさそうに言った。

「まぁ何もいない方がいいでしょ。」

と言った刹那

「ブォォォォォォォォォォォ」

鼓膜が破れるかと思う程の巨大な咆哮が海から飛んできた。

何事かと思って海を見てみると黒くて巨大な体を持った鯨に似た生物が高く飛び上がっていた。それが再度海に潜り込むと巨大な波が生まれ、崖上まで水飛沫が飛んでくるほどだった。

「な...何あれ...」

れいは震えた声で言った

「ちょっかいかけない方がいいね...幸いバレてないみたいだし...」

まみゃも震えた声で続けて言った。

それからは出来るだけ海の方を見ないようにルートを確認していたが、敵は一向に出てこなかった。





◇◇◇◇◇



中央ルート:ルトラ、マリア


「えぇっと...マリアさん...でいいんだよね?」

ルトラは気まづそうにそう言った。

「うん。それで、大丈夫。」

相変わらず区切り区切りにそう言葉を紡いでは

「私はルトラ...さっきはその...ごめんね?」

マリアの気迫合ってかそれともただ気まづいのか何時もよりもルトラが大人しい。

「気にして、ない。今は、ルート確認」

無表情でマリアがそう言うからルトラは気にしてるんだと思ってもう何も言えなくなってしまった。

ある程度開けたところまで来ると、敵軍が配置されていることに気づいた。その中心には、"本持"どうやら此方に仮面はいないようだ。

「敵多いね...」

ルトラはその敵の多さに怖気付いたのかそう呟く

「そう、だね、倒す?」

無表情で首を傾げる。

「でもルート確認って言ってたしなぁ...あんまり騒ぎは起こさない方g...」

その瞬間マリアが剣を抜く

「え...?」

ルトラの方へ向けられていた為ルトラは反射的に目を瞑った。

しかし、次目を開けた時に映っていたのはルトラの背後に潜んでいた敵の死体だった。

「こいつ、潜伏してた。」

既に剣は締まっていたが、警戒しているのは見て伝わった。

「助かったよ。ありがとう!」

ルトラはホッとしたような表情でマリアにそう言った。

「ここ、危ない、かも、早く、戻ろう」

ルトラの手を引いて拠点の方へ引き返した。もしかしたら先程の敵が既に位置をばらしている可能性があると思ったからだ。











◇◇◇◇◇◇◇











まさかここに来る日が来ようとは。

水神の遺跡。それは水神の心が眠る場所。かつては勇者がその水神の心を授かり、この世界に光を齎したという...なんて素晴らしい逸話は無く、"厄災の象徴"なんて呼ばれている。「全く不名誉な事を」と水使いであるマグは思った。とりあえずこの水神の遺跡を封鎖結界で封じられたら完璧だ。アイツが来る前にここを塞げれば水神の心を万が一にも授かられる心配は無い。封鎖結界は発動に1時間程かかるものの、その代わり絶対に破壊されない結界である。勿論7日間という制限付きだが、十分だ。そして水神の遺跡の入口である階段を下る。内部は真っ暗であり、基本何も見えない。遺跡の中は至って簡単な構造で、階段を下ればすぐそこに水神の心が眠っている間に辿り着く。逆に言えばその間しかないのだ。そろそろ暗さに限界が来たのでマグは魔法を唱えた。

「ライト」

簡易光魔法だが、この程度の広さなら優に照らせる。明るくなれば水神の心をお目にかかれるはずだ。

しかし、そこに映ったのは水神の心だけではなかった。

「来ると思っていたよ。もう1人の"俺"」

此方を見ずにそう言う偽物のマグ

「...遅かったか...いや、まだ水神の心を授かれていないな?」

そう言うマグに対して偽物は平然と言った。

「まぁな。この代物は厄災の象徴である分、授かる為にもかなりの魔力量を要求される。まだもう少し時間がかかりそうだ。」

態々そう言う偽物

「そうか。その魔力提供止める訳には行かないもんな。」

マグが偽物に向けて魔法陣を展開した。

「なら強力な魔法は使えないな!」

巨大な炎の球体を偽物に放つ

「お前等魔法無しでも事足りるわ!」

偽物は剣を取り出すと魔法の核を斬り、述べた通り魔法無しで相殺して見せた。

「霊気解放!超スピード!!」

マグは偽物に向けて突進し、アルンソードを取り出しては強く振りかざす。

「っち...流石に分が悪いか...!」

偽物も油断していたのだ。先程剣を交えた時とは話が違う。何故ならマグはこの世界の能力等も使えるようになっているから、実質偽物とあまり変わらないのである。

「これで終わりだ!!」

力をさらに強め偽物の剣を弾き左上段から右下段に切り付けた。

「やったか!?」

しかし不思議なことに、偽物の体からは血は出てこなかった。人間である偽物ならば、その現象は当然起きることのはずなのだが...

「残念だったな。」

その体は一部を一瞬水に変えることによってダメージを無効化し、再生したのである。

「勿論消費魔力は抑えてある。全身を変えたわけじゃねぇからな」

千載一遇のチャンスを逃してしまった。今仕留められて居れば、全てを終わらせられたのに

「もう一度だ!」

剣に魔力を乗せて強く振り続ける。

新しく生成された剣に防がれ続けるが魔力に破壊特化の魔法を埋め込み剣を破壊し、次は防がれまいと全身を水に変えられても問題ないように炎魔法を剣の先端に生成し、その剣を押し付けた。

「偽物は本物には勝てねぇんだよ!!」

これなら、全身が水に変わっても蒸発してしまうと考えたからだ。

その炎は強く爆発し、当たりが煙に覆われる。

「今度こそ...」

確かに手応えがあった。確実に当たった。

その煙が少しづつ晴れていくと、そこにはもう人影は無かった。

「やった...」

早い段階で偽物を始末することが出来た。

これであとはボスを失った手下を倒すだけ...

しかしその刹那、水溜まりの水が人の形を象るように動き始めた。

「...嘘だろおい...」

その水は偽物のマグの形を象り、それは偽物が復活したように

「残念だったな?倒せなくて。」

「何度生き延びても同じことだ!!」

マグは再度剣を構え突進する。

しかし

「遅い。」

先程の水溜まりがつるのように伸びてマグの四肢を拘束した。

「まさか...」

マグは水神の心のあった場所を見ると、それが無くなっていることに気づく。

「どうやら俺は水神に選ばれたようだ。」

偽物は笑いが堪えきれなくなったようで

「くそ...止められなかった...!」

どうにか体を動かそうとするも、うごかない。それどころかその水のつるが氷出して、マグの体をも凍りつかせようとする。

「あぁ。さっき偽物は本物には敵わないって言ってたよな。」

マグに近づきながらそう言う

「確かにそうかもしれないな?だが今俺は!」


「水神となり!完全なるオリジナルとなった!!」


声を荒らげてそう言う。

「...狂ってる...」

そう小さくつぶやく

「俺が狂ってる?何処が?力を手に入れて、この世界を破壊するのが楽しくて仕方がねぇんだよ!!」

ついに本性を表した。

「...俺が死のうが、お前は絶対に負ける。アイツらを舐めるなよ...!」

表情すら凍りつきそうだが無理やり睨みつける

「今の俺を止められる訳ないだろ?負け惜しみは止せよ」

水神はマグに向けて魔法陣を生成し

「じゃあな"元"オリジナル。現世では俺が代わりになってやるから安心して逝けよ。」

(...皆...後は任せた...)

「"雫滅ノ序"」

水神が片手を掲げ、指先から小さな水滴がぽとりと落ちる。

水滴が地面に触れる瞬間、時間がスローモーションになり、周囲の色彩がモノクロ化。

音が完全に消え、「水滴が落ちる音」だけが世界に響く。

雫が地面に触れた瞬間、中心から透明な衝撃波が球状に広がる。

衝撃波は空気を切り裂き、触れた全てを粉砕。建物は細かな水粒に変わり、地形すら削られる。

球体の内部は真空状態のように音がなく、光すら屈折して歪んで見える。

その破壊は遺跡の破壊できないはずの壁すらも壊し、遺跡が崩壊し始めた。既にそこに水神はおらず、マグはその下敷きとなった。







「わずかな雫が、すべての終わりを告げる“序章”となる。」
























次回:キングウォーズ








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