休暇編 れい
休暇編・れい
休日、それは王にはほぼ存在しないものとも言える。実際には常に王都を支えている存在でもある為休みなんて無いのだ。
そんな中彼女はその中で唯一作れた2週間という休日をどう過ごそうか考えていた。
もちろん遊びにふけるのもありだ。きっとマグとかはそうしてるだろう。
別にそれが悪いことでは無いがそういうことを何年もしてこなかった為何をすればいいかなんて分からない
だから私は行くべき場所に行くことにした。
"エンド"
それは終焉のドラゴンとの死闘を繰り広げた場所であり、私の実質的な生まれ故郷だ。
終焉のドラゴンがいなくなり静かとなったエンドには過去の面影はほとんどなかった。
私は正しいことをしたのか。まだわからない。
特に何も無い場所だ。何故ここに来たのか分からない。でも、ここに来ないと行けない気がしたんだ。
れい)...私は...
少し呟くとその刹那背後から気配を感じとり驚いて振り返る
れい)...っ!?
そこには白いフードを被った少女が居た。そして周りを見れば同じようにフードを被った人に囲まれていた。
そして私は見渡した後すぐにわかった。
"脱落者"
聖女の選別試験で落とされたものは死ぬかTheseedに閉じ込められることになってるがその魂はエンドに残るという。
"この人達が私をここに呼んだのだ"と
なんで今更...というのも変だろうか。世界の危機だからこそ、もしかしたら呼ばれたのかもしれない。
?)よく来たな、れい。
声が聞こえた方向、つまりポータルの柱の上を見る。そこにはアルファルド達との戦闘以来行方不明になっていたカリマがいた。
れい)...あなたは...
カリマ)もう気づいているとは思うが、我は貴様が思ってるそれで間違いない。そしてここに呼んだのも我だ。
つまりは終焉ノ龍。かつてマグやまみゃによって討ち滅ぼされた世界の支配者。
カリマ)この魂達はもう既に貴様に牙を見せている。後は好きにするといい
そう言うとカリマの言った通り彼女等はそれぞれの武器を構えていた。
れい)つまり全員倒せってわけね...
自分も弓を構えて一人一人に矢を当てていくが...
キリがない。弓では流石に全員やるのは無理か。仕方ないと思い剣を出そうとするが...
れい)...?
精霊の力が使えない
切り替える為に弓を消してしまっていた為反応に遅れ短剣を腹部に刺されてしまう
れい)っ!
短剣をすぐに抜いて刺し返す。
しかしそいつは少し笑っているように見えた。
地面が光り出す。それは自然現象では無い。魔法陣によるものだった。
「邪を払う
滅亡の光よ。
罪人に
制裁を」
その詠唱が終わった瞬間。れいの視界は真っ白に刹那に変わった。
体に激痛が走る。痛みを感じるということは即死では無い。今この瞬間は彼女達も攻撃はしてこないようだ。
痛みに耐えつつ策を考える。
この魔法は強力だ。私が"聖属性"を使用しないのであれば即死級の魔法だった。しかし随分と準備してたみたいだし連発はできなさそうだ。ならばいつもの刀より威力は落ちたとしても接近戦で速攻勝負を決めた方がいいと考え光で剣を作る。
そしてその光を薙ぎ払った。
その無表情で魂しかない彼女達の顔にも少し驚きが見えたような様子だった。
そこからはまるで鬼神の如く魂達を切り刻んでいく。
そして最後の一人____
見覚えがある。試験の時に剣の成績が圧倒的に1番高かった人だ。
綺麗な白髪の中に黒色のメッシュ、真紅の眼にはれい1人を映す。
剣を抜いた。その一連の動作は知り合いの剣を使う誰よりも強者感が合った。
静けさがあったのも数秒、お互いがお互いに向けて走り出した。
剣と剣がぶつかる。お互いの剣の優先度は同じようで武器の差はない。
鍔迫り合いなら勝てると感じたのかれいは力を更に入れる。
しかしそれを狙っていたかのように彼女は回し蹴りをしれいを転ばせその上に覆い被さるように剣を向けながら拘束した。
れい)っ...でも両手を両手で動けなくしてたら、剣が触れないんじゃない?
そう、別に魔法で縛られている訳では無い。物理的に動けなくされているため実質相手も動けないのだ。
?)手が使えないなら牙で
首に激痛が走る。
どうやら噛み付かれたようだ。
抵抗ができない。もう...終わり...
しかし次の瞬間氷の槍が?を貫いた。
??)大丈夫?れい
そこにいたのはピンク色の髪がよく目立つ少女で、そして最後の最後まで私と成績が全く同じだった聖女...そして最初の友達...
れい)ノア...
今のノアじゃない。このノアも魂...いや"意思"だ。
ノア)いつの間に、背が伸びてる
ノアは"あの頃"のままで
れい)色々あった...からね
しかしゆっくり会話している場合じゃない。まだ倒しきれていないのだ。
?)...
血を拭き取ると2本目の剣を取り出した。
ノア)気をつけて、侮れない
?はノアを先に排除しようとしたのかノアに向かって走る
ノア)単純
風の刃で切り裂こうとする。しかしその風の刃は?の双剣によって防がれる
れい)ノア!
前にとび出て剣をぶつける
?)...
片方の剣で受け止められもう片方で刺されそうになる。
ノア)れい...!
ノアは動けないでいた。それはまるでノアがTheseedに入れられる時に何も出来なかったれいのように。
れい)...大丈夫...!
刺されてもお構い無しに剣をそのまま押し斬った。
それと同時に?は消え去り、残されたのはれいとノアだけだった。
静かな時間が流れる
れい)...ノアはどうして、私を助けてくれたの?
少し屈むようにしてそう言う
ノア)......"友達"だから
ノアは認めてくれていたらしい
れい)...そっか。
でもノアは少し悲しそうな顔をして
ノア)でも、私の体が小さくて、れいが大きくなってるってことは、私も魂...だよね...
それを聞いてれいは優しく言った。
れい)...ノアは生きてるわ。貴方はここに残った自分自身の意思なのよ
ノア)それなら、いいな。
表情が戻った。そしてれいは握手を求める
ノア)...いいの?
れい)もちろん。"友達"でしょ?
少し遠慮気味にノアがれいの手に触れる
その瞬間だった。れいの体には激痛が走り耐えられなくなり地面に倒れてしまう。
れい)な...
まさかノアは偽物...!?
ノア)ご...ごめん...
でもそんな感じがしない。
ノア)まだ魔力の制御が上手くいかなくて...触れたものに魔力を流しちゃうの...
だから遠慮気味だったのね...
れい)だ...大丈夫...大丈夫...
そのまま意識が落ちてしまった。
気づけば私は見覚えのある天井の下にいた。
...いつの間にか王都に帰ってきていたようだ。
あれからの記憶が無い。全て夢だったのではないかと思うほどに
気づけばもう既に5日経っていた。つまり休日をかなり寝過ごしたというわけだ。別に損した気分にはなっていないけど。
やることも無いので今まで行った場所を巡ろうと思う。
まずはここ、王都。かつて殺戮の悪魔に滅ぼされた王都出会ったがセゼル討伐後の7年間で元の状態に建て直した。
言うまでもなくとても広い。全ての始まりの場所
少し王都を見渡すと次に向かう場所を決めた。
リリ村 この村は魔王との一戦の際に人狼騒ぎがあった村だ。私も襲われて大変だった記憶がある。今ではかなり平穏に見える
山岳村 過去の拠点であり、今も少し外れた場所に過去に使っていた一軒家がある。この時はかなりドタバタしてた記憶があるがそれも今になってはいい思い出だ。この家には地下があり、「採掘場」「強化付与室」「倉庫」「重要金庫」等がある。地下はとてつもなく広く、近くに洞窟がありモンスターの声も聞こえたりするため、あまり1人で入りたくない場所でもある。一階には私、まみゃ、マグ、ルトラの部屋がある。そして2階にはリビング、地面に近すぎる設計ミスのシャンデリアが特徴的だ。そして外に出れば釣りができる川もある。私達の本当の意味での冒険はここから始まったのだと思う。ちなみにこの村の職人率は9(矢師):1(農民)だ。理由はまぁ...色々あった。そして空中にはここに来るまでに使った移動装置がある。もうこれはひとつのオブジェと化しており、動かすのも勿体ないということでそのまま放置されている。そしてこの村には「縁結ノ桜」が存在し、見た目は桜の木が二本交差してアーチのようになっているものであり、その下を2人で通ると結ばれるんだとか結ばれないんだとか。1部ではあるがそこを通ると殺されるらしい。怖い話だ。
花畑村 私とまみゃが最初に暮らしていた村だ。始まりはこの村なのだが滞在期間もそこまで長くはなかった。そう、それは殺戮の悪魔がこの村に襲撃してきたからだ。今となってはもう村人が住んでいない廃村になっているが、真ん中にあるアメジストで作られた鍛冶屋(ゴミ箱)は健在だ。そしてこの村の特徴は大きい洞窟に囲まれているということだ。片方は中に入るとかなり深いところまで続き大きな空洞に出る。降りた先に見えた土で作られた謎のオブジェクトに少し笑いがこぼれてしまった。
れい)...まだあったのね
かなり昔にマグが立てたと思われる謎のオブジェクトだ。意外と目印になったりして助かっていた。
そしてここには木も栽培している。地下でひきこもっていた時期があったので、木は必要不可欠だった。
次は少し遠いけど...
砂漠村 ラクダを見に行きたいという事で砂漠に向かってみた。めちゃくちゃ遠くて片道で早くとも2週間、遅ければ1ヶ月以上もかかる場所なのだが、れいは今回は1人なので光速で飛んでいき一瞬のうちにたどり着いた。
特に思い入れがある村では無いが、一応訪れた村ではあるし、人目見ておこうと思ったのだ。
そして近所にある"ソンビ村"つまり人間が住んでいない村だ。何故か全員ゾンビ化して、そこから動かない。不気味な村だし、立ち入りが砂漠の村から禁止されているらしいが毎年夏になると肝試しに来る人が少なからずいるんだそうだ。動かないといえど夜の砂漠は危険なのでそもそも外に出ないのが吉だ。
んー...私がゾンビを一掃してもいいんだけど...元は村人さんだったんだよね...
私はどうしてもゾンビ達を一掃する気は起きずそのまま砂漠を後にした。
"神の墓"ここには私は1度も来たことは無いが興味があったので来てみた。特に何も無い、墓石だけがあるような場所だ。何の神、というのはわからないが、遥か昔に果てしない力を持つものが神とされその力を悪用した為封印されたというのが有力な説だ。
"封印"ということは、もしかしたら復活するんじゃないか?そんな説を立てる者もいる。私も一理あると思っているがそれだけ強力な者を封じ込める物なのでそう簡単には解けないであろうと言うのが私の結論だ。それに過去にどれだけ強かろうが今はどうか分からない。もし封印が解けたのだとすれば、私が倒すまで。
そう心の中で思った途端、まるで心臓を冷たい手で触られたような感覚がした。
れい)...ひ...
気味が悪い。早くここから去ろう。
やることが無くなった。何をしようか。いざ休暇となるとやることが思い浮かばない。
ならばそうだ。新たな力を手に入れた今勝てなかった相手に勝負を仕掛けてみるというのはどうだろうか。
勝てなかった相手といえば天界で戦ったあの邪神だ。会えるかは分からないが行ってみる価値はあるだろう。
天界にやってきた。1度来た事があるとなればここに来るのはそう難しくは無い。邪神がいなければ用などないのだがどうやら前と同じ場所にいるようだ。
れい)邪神。私と勝負しなさい!
名前を忘れてしまったので目の前に立ってはそういい。
...反応がない。眠っている。
れい)...本当に神なの?
そんな疑問を口に零すがそんなことはどうでもいい。不意打ちだろうが勝つことに意味があるのだ。最初から全力ということでマナに向けてゼロポイント・アビスを放つ。
その斬撃は確実にマナに当たり空間内にマナを閉じ込める。
"勝った"私はそう確信した。この空間自体が無限の為破ることはまず不可能だ。
そして次に結界の破壊を行おうと弓を構える。
矢を放った。結界に矢が届く。
そして結界は破壊された。はずだった。
マナ)ボクが眠っている時に仕掛けてくるなんて酷いじゃないか
いつの間にか背後に廻られていた。
何故?どうして?脱出する術はなかったはず...!
マナ)安心して♪前みたいに魔力は流してないよ♪
笑顔を作るようにしてそう言う。
れい)...どうやって脱出したの...?
疑問を口にする。
マナ)簡単な話だよ♪"無限"の概念を"書き換えて"それを"変換"しただけだよ♪
何を言っているか一切分からない。
れい)...何を言っているの?
マナ)ま、仕組みなんてどうでもいいよね。んで?なんでボクに攻撃を仕掛けてきたの?
目の前に現れそう言う
れい)貴方と戦いたかったから。それじゃダメかしら
寝ていたあなたが悪いというように
マナ)ふーん。ボクがキミと戦ってボクにメリットとかあるの?
つまらなそうに言う
れい)メリットは...ない...けど
マナ)じゃあこうしよっか。もしボクが勝ったら絶対にマグ君を連れてくること!それでいいね!
マグはきっと嫌がるだろうが知ったことでは無い。
れい)それでいいわ。
ただ私は戦いたかった。自分よりも強い彼女と
そこからは会話を必要とせずマナに向けて弓を放った。
マナ)前と同じじゃつまらないよね〜♪どうせ耳栓かなにかして対策してるんだろうし
そう言うとマナに刺さるはずだった矢は突然反転しれいに向けて飛んでいく。
れい)っ!?
咄嗟に反応してギリギリで避けるが何が起きたのか理解できなかった。
マナ)おー。よく良けれたね!すごい凄い!
舐められていることが伝わる。確かに囁かれることへの対策はしてきた。それしか技を見ていなかったからだ。逆にそれ以外何も無いんじゃないかとも思っていたがそんなことは無かったらしい。
邪神に小細工は通用しない。なら真っ向勝負するしかない!
れいは刀を再度取り出すと構えて
マナ)刀か〜。ボクあんまり接近戦得意じゃないんだよね〜
少し不満げに言うが彼女もどこからか剣を召喚し
れいはマナに向けて刀を振るう
その刀は剣に防がれる。しかし鍔迫り合いになるということは力はほぼ互角か。そう思われていたが次に瞬きした時、れいの刀は鞘に収められていて、マナの剣がれいの腹部を貫通していた。
れい)え......?
その光景を信じられなかった。"ありえない"あの一瞬で私の刀を鞘に収め腹部に刺すなど。
そして邪神は、"私を殺しに来ている"と
マナ)これでゲームオーバーだね?
邪神がそう言い終わるとまた次に瞬きした時には傷が塞がっていて邪神の剣も邪神の手元にあった。
れい)何が...起きてるの...?
私は幻覚だと思っているがそう思う反面幻覚にしては出来すぎていると思ってしまう。
マナ)ボクはただ書き換えただけだよ?
"書き換えた"まるで意味がわからないがそれが事実なら傷がふさがったことにも納得が行く。
マナ)それとボク、最近"メタ的領域"?ってやつにアクセスできるようになったんだよね。
私は邪神が言っていることに何一つ理解ができなかった。今に始まったことでは無いが何も分からない。
マナ)んまそこにアクセスすると何ができるかって言うと。
何かを試すようで
マナ)こういうことが出来るんだよね
特に何も起こっていない。もしかしたらただのデタラメだったのかもしれないのでそこにホーリーアローを打とうとするが。
"出来ない"弓自体が出てこないのだ。
そして次の瞬間に手元には剣、さらに次の瞬間には服装が黒ずくめに...ってこれ騎士時代のマグが着けていた装備...!?
マナ)ていう。ボクも"権能"的には理解してるけど脳では理解できてないからよく分からないんだけど、"データ"?ってやつを読み込めるみたいなんだよね〜
ということは、私が今使える技は...
れい)霊気...解放?
全身が冷える感覚がした。そして、体が軽い。
つまり今の私は"マグそのもの"だ。
かと言って言ったらなんだがこの時のマグはすごく弱い。さっきの私でダメージを与えられなかったのにどう戦えばいいと言うのだ。
れい)出来ること?って言うのはわかったから戻して欲しいのだけど...
マナ)はいはーい。戻しますよーっと
次の瞬間全てが元に戻る。
もう何が起きているかわからない。
異次元すぎる。どうやっても勝てる気がしない。例え王国騎士全員で挑んだとしても、かすり傷すら与えられないのだろう。
れい)...でも、私は違う
次の瞬間地面が強く光り始める。
マナ)魔法陣!?
珍しく驚いたように
れい)邪を払う滅亡の光よ!罪人に制裁を!
詠唱を終えるとさらに光は強くなり邪神を埋めていく。
確実に邪神に効くはずだ。私に耐性があったように弱点というものは存在するはずだ。
マナ)ご馳走様♪
すると次の瞬間光が消える。
れい)なんで!?
結局かすり傷すら与えられなかったようで。
マナ)魔法ってことはつまり魔力が使われているわけだから、それを変換し続けたんだよ。だからボクはこの通りピンピンしてる♪
規格外すぎる...
れい)...降参です...
諦めたようにそう言う
マナ)じゃあ今度マグ君を連れてきてね!
目をキラキラさせてそう言う。
れい)え、えぇ...色々片付いたらね...
疲れてしまった。色々規格外過ぎて全盛期のノアとはまた違う詰みゲー感を感じる。
それからの休暇日は全て修行に費やし、"その日"に遂になってしまった。