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ワンシーン  作者: 倉崎 柚葉
3/3

月の眩しさが気になる日だった。


夜、寝る支度をする。

歯磨きをして、後は寝るだけ…に。

閉じてたカーテンの隙間から漏れている月の明かりが、いつもは気にならないのに、今日はなんでか気になって。


「そういえば、今日って月が大きく見える日なんだっけ…」


特に深く考えもせず、自然と手が動いてカーテンを開く。

窓を通しているのに月の明かりが輝いて見える。


「綺麗…だな」


月って…


「こんなに綺麗だったっけ…」


導かれるように、その月明かりから目が離せなくなる。

じっと見ることって、あんまりないかもしれない。

見るって言うよりも、魅入る、そんな感覚に襲われる。


「ーーーーて」

「ーーーぁてーー」


「え?」


どこからか、声が聞こえる?


「ーーーあけ…て」


気のせいじゃなく?


「ーーたーけて」

「ーーーあけて」


「たすけて?って?」


意識しだすと、徐々にはっきりと言葉になって届いてくる声。

自分以外いないこの場所。

どこからか聞こえてくる声に不思議さを、怖さを感じると言うよりも、どうにかしてあげたいって気持ちにさせられるような、この感覚。


「ーーたすけーーあーけてー」


聞き取りやすくなってくる言葉。

どこから…?


月明かりに奪われていた目を、その声の元を探すように部屋の方に向ける。


「……これって…どういう…」


月明かりを背にして、部屋の床に自分の影が映し出される。

見慣れたはずの自分の部屋。が。


「ーーあけてーーたすけてー」


床に見えるのは自分の影だけじゃなく、床に照らされた窓枠。じゃなく、扉。

あるはずのない、扉。

しかも、さっきまではどこから聞こえて来てるのかわからなかった声が、扉を認識した今ではそこから聞こえてきてるように思える。


「ここから?だよな?」


床にある扉。

その扉のノブに手を伸ばす。

シンプルな棒状の取手で、影になってるはずなのに月明かりの影響を受けてるのか、鈍く光ってる。

普通に考えれば、怖いとか、おかしいとか、抵抗があるかもしれない。

けど、不思議とそういったことはなくて、極々自然に。


カチャ


握ったドアノブを回すと、静かな部屋の中に硬い音が響く。


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