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一目惚れ
「あーーーー!!!」
声にならない声で。
この煩わしい装飾のついた袖口で口を覆う。
「なんで、この俺がっ!!」
なんだかとてつもなく悔しい気持ちになるけど、その気持ちがなんなのか良くわからなくて。
でも、なんとなくわかってしまう感じがして、それでまたものすごく悔しい気持ちが込み上げてくる。
袖口で口を覆ったまま、グッと目に止まったその先を見る。
見つめる。
「なんなんだよ、これ…」
カァっと顔が熱くなってくるのを感じて。
全身がどこからか熱くなってきて、普段は全然気にしたこともない心臓のドキドキがやけに自分の身体中を駆け巡るのを感じて。
ゴクっと唾を飲む。
「マジで勘弁してくれ」
この俺が?
そんなことある訳ない。
こんなこと、あっていいわけがない。
冷静沈着。
氷の騎士。
人の心を持たない男。
市井、学院内、騎士団内、王宮内。
どこでもそんな印象を持たれて、異性に興味がなく、男色なんじゃないかと散々言われてたこの俺が。
こんなこと、あるわけない。
何かの間違いだ。