一つ目の話⑶
えー、現在、私はレイア様とコビットがお住まいになられている邸宅に辿り着きまして、
素敵な御食事で饗されております。
大木を縦に真っ二つに割った物を支えるためだけの丸い棒を4脚つけたようなワイルドなテーブルの上には
たくさんの木皿が並んでおりまして。
その各皿の中には、パンが二片、
野菜の茹で汁に塩を溶かしたようなスープ、
シンプルに茹でた野菜たちは、
こじんまりとパンの横に添えられております。
おっと、台所を確認しますと、
翌日に食べる野菜たちと一緒に煮込まれていたようで、
お鍋の中には残りのお野菜たちがゴロゴロと!
以上、現場よりお届けしました。
と、誰に向けてなのか謎のナレーションを終えたあと、
コビットの幸せそうに食べる姿が目に映り、
目の前の人物の状況を英訳しなさいと問題出されたら、
cobit looks happy.because,Cobit can eat delicious food.といったところかな。と考えていると
「明日はミルクを使った美味しいスープの日なのです〜!」
コビットは、目の前にある食事より明日の食事!のタイプだったらしく、私は、そっちか〜!と和やかな光景に
思わず微笑みを…溢しそうになった。
其れを停止させたのは
レイア様からコビットに送る視線だった。
悲しそうというよりは、何処か冷めた目をしていた。
その姿に私は背筋を誰かになぞられたような
ゾワッとした感覚をおぼえた。
「レ、レイア様…」
急に声をかけられたレイア様はその目つきのまま
此方を向いたせいで私はたじろぎ、
勢いよく背もたれのない椅子から倒れてしまい、
頭をぶつけそうになったところを
いつからそこにいたのか
コビットが床との接触を大きな毛布で防いでくれた。
ようやくハッとしたのかレイア様も駆けつけて
「大丈夫でしたか!?」
さっきとは違った今にも泣き出しそうな目で
此方を見ていた。
「え、あ、その…」
どちらも彼女なのだろうが、
どちらが本来の彼女だろうかと思うほどの変わり様に
動揺しているとコビットがレイア様に向けて
「コラぁぁぁぁぁ!」とチョップを下していた。
それからレイア様をポカポカしながら
「彼女はこの世界に来るのは初めてなのですよ?!」
「ええ、そうね。だから、説明する為に彼女を此方に…」
「それだけならあそこで全部説明して良かったのですよ!」
自分より身分が上のはずのレイア様に向かって
説教をしているコビット。
止めなきゃ、でもどちらを?
目の前の状況についていけない私は
朦朧とした意識の中で、
色々考えながら気が遠のいていった。
お読みいただき、ありがとうございます。