表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/26

第7話 新たな知り合い

 国王からの依頼を無事成し遂げた翌日、エクムントはグラッドの工房を訪ねていた。


 中は暦の上では春になったばかりでまだ肌寒い日が続くというのに蒸し暑く、職人たちが汗を拭きながら熱い鉄をハンマーで叩く音がそこかしこで聞こえていて、


 活気のある所だというのが素人目で見ても分かる位だ。


 その鍛冶職人の中に混じって作業をしているドワーフの肩を叩き、話を始めた。




「お仕事中の所、失礼しますよグラッドさん」


「よぉお前さんは……たしかエクムントだったな! お前さんあの国王を説得してくれたようだな。


 急にガレッガ鉱山産の鉄鉱石を持ってきたのにはビックリしたがアイツもようやく鉄の事が分かったみたいで良かったよ」


 そこには初対面の際に見せた険しい表情はどこへやら。それとは正反対の終始穏やかな顔をしていた。


「ちょっと話したいことがあるんですがお時間はよろしいですかね?」


「ああ構わん。お前さんの頼みならいくらでも聞いてやるぞ」


 グラッドは汗を拭きながらエクムントと一緒に応接室へと向かった。




「……で、話というのはどういうものなんだ?」


「まぁ手続きとしては数分で終わるような内容なんですが、あなたの同意が必要な事なので今回声をおかけしました」


 そう言ってエクムントは持っていた(みが)き抜かれた石板のような魔導器具と、辞書のように分厚い本を取り出す。


「こいつは……何だ?」


「この石板みたいなものは契約した人と私が通話するために使う魔導器具で、この本は契約した人を呼び出すための召喚術が書き込まれた本です。


 単刀直入に言えばグラッドさん、あなたと契約を結びたいと思って今回まいりました」


 エクムントはそう説明する。




「ふーむ。通話に召喚ねぇ。お前さんと話ができるというのは別に構わんが、召喚っていうのが引っかかるな。俺は魔法に関してはド素人だからな」


「召喚する前に通話をしてあらかじめいつ呼び出すかは決めますし、された後も仕事が終われば自らの意思で召喚された場所に帰ることもできますから呼び出されたらそのまま。というわけではありませんのでご安心ください」


「なるほど、つまりはお前の人脈になれってわけか?」


「察していただいてありがたい限りです。要はそういう事です。


 契約さえしてくれれば私が持っている仕事や人脈の紹介なども致しますので、グラッドさんにとっても良い話だとは思うのですがいかがいたしましょうか? もちろん強制はしません」


「うーむ……」


 グラッドは腕を組み黙る。しばらくして……。




「よし分かった、契約しよう。他でもないお前さんの頼みだ。断るのも悪いからな」


「ありがとうございます。では……」


 エクムントは石板のような魔導器具を操作し、グラッドの前に出す。


「では石板に手を当ててください。それで契約は成立します」


「ん、分かった」


 グラッドは言われるがまま石板に手を当てる。石板が淡い白色の光を放った。




「では次に召喚術の契約ですね。この本にあなたの名前をサインして下さい」


 エクムントはそう言って本の既に何人かの名前が書かれたページを開き、それと同時に携帯型のペンと墨壺(すみつぼ)を差し出す。グラッドは言われるがまま無骨な文字でサインをした。


「これで終わりか?」


「ええ終わりです。これであなたとはいつでも通話できるようになったし、召喚にも応じられるようになりました。時々話をしますのでその時はどうぞよろしくお願いしますね」


「ん、分かった。話はこれだけか?」


「ええ、これだけです。ご対応いただき本当にありがとうございます。では失礼します」


「お前さんは冒険者だからまた旅に出るのか? その年で大変だなぁ。まぁいい困ったらいつでも連絡よこしてくれよ、力になるからな」


 そう言って2人は別れた。




【次回予告】


王国に隣接するとある領主が治める地、そこでも事件は起きていた。解決のためエクムントが動き出す。


第8話 「緊急クエスト 息子の捜索 前編」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ