祝賀会~大使館
「では、心三君の試験が、無事完了した事を祝して、乾杯!」
様々な飲み物を収めたグラスを掲げた。そして、ぐいっと飲む。
「さぁ、日本では、『駆け付け三杯』と言うそうですよぉ。心三くぅん。」
ローストビーフで、野菜の酢漬けを沢山巻いたものを、よくかんでから飲み下した。
「酒瓶に烏龍茶を入れて、未成年者に勧めるのは、よい冗談とは言えませんよ。一等書記官。」
「それも含めて楽しむものですよぉ。心三くぅん。さぁ!」
空のグラスをつきだした。注がれた液体の組成を調べ、ウーロン茶だと確認してから飲む。
「ういうい。『物質組成調査器』の調子は、良さそうなんだぞ。心三。」
「道具が揃っていて、作り方さえ教えてもらえれば、この程度の『小道具』を作るのは、問題ありません。むしろ、博士教え方、道具のおかげです。」
「ういうい。そりゃよかったんだぞ。でも、今日は、おまいさんの学業好成績を祝うんだぞ。」
「それは……」
台詞を途中で遮ったのは、ウェスタン・ラリアットと、見まがうほど乱暴なハグだった。
「どーした! 楽しんでるか! シンゾー!」
酒臭い呼気に、辟易と《うんざり》する。なんで、こんな所だけ、地球人を模倣するんだ。
「……痛いです……解放して下さい。……一等武官。」
「おっ、なぁんだ。そんなに、苦痛耐性訓練をしたいのか。シンゾー。」
「こら、やめんか、ペーネル。」
「はいっ! じゃ、俺はこれで。」
ようやく、解放された……一息入れよう……
「疲れたか。心三。」
そこに、差し出されたサーモンマリネが盛られた皿を受け取った。
「ありがとうございます。副長。」
ウーロン茶を、飲み干し、サーモンマリネを食べる。
「騒がしくて疲れたろう。だが今日は、お前の試験結果を、自分の事の様に、喜んでいるんだ。今回だけは、大目に見てくれ。心三。」
「はい……では、今回だけです。……そう言えば、地球の食料は、『異世界人』の口に合うんですね。副官。」
「問題ない。調査したが、動植物、大気、水などの組成は、ほぼ同じだったぞ。心三。」
「成程……そう言う事か、見えてきたな。『パローム・エン』のシナリオが……。」
等と言う無駄口を叩かなかった。
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次回予告
第40話 第4の敵
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