思い出の遊園地
「見える……見えるぞ……間違いない。6歳の誕生日に、家族で日帰り旅行に、行ったんだ。あの『遊園地』……何もかも、懐かしい。」
より、鮮明に『思い出す』……そうだ、遊具の1つ1つ、風船配り、屋台、ポップコーンの香りに至るまで。
「お誕生日おめでとう。心三。」
当然、両親もいる。僕の身長もあの時まで、『縮んで』いた。
「『現志力』ってのは、人の記憶を鮮明にする事まで出来んのかよ。」
などと言う無粋な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「コーヒーカップを回すのは、父さん。母さんは、僕を膝の上に乗せていた。」
コーヒーカップが、回転する。その目まぐるしい世界に、浸った。
「父さんの笑顔だけが、鮮明に見え、他の物は、流れて見える。僕達だけが、別世界に来たかのように見えた。」
終わった後、三半規管への負荷から、世界が、ぐるぐるするのも、含めて好きだった。
「次は、メリーゴーランドだ。視界が、一気に高くなった。これも記憶のままだ。」
残念ながら、身長制限で、『乗れなかった』ものもあった。
「ミラーハウス……これだけ盛大な、『合わせ鏡』も、初めて見たな。」
更に、進む。今度は、ホラーダンジョンだ。お化け屋敷ではない。
「そうだ。ジェットコースターの様な、乗り物でトンネルを、ゆっくり進む。様々な趣向で、客を驚かすものだった。客が、自分で歩く訳でない為、一定間隔で客を入れる事ができた。」
作り物のお化けが、妙にリアルで、リアルな悲鳴も聞こえたな……
「でも、楽しかった。お昼ご飯は、フードコートで、お弁当を食べる。これは、飲食店の混雑が、予想されたからだ。母さんの料理は、冷めても美味しかった。」
風船を手に、遊園地巡りを楽しむ。ガスが、入っている為、手放すと空へ飛び去る。
「その儚さが、好きなんだ。そう言えば、おやつは、アイスクリームだった。」
バニラと、チョコレートと、ストロベリーの3段重ねなど、初めて見た。
「とは言え、6歳児の胃腸では、お腹を壊す。半分父さんに食べて貰ったな。」
最後のシメは、観覧車と決まっていた。僕も最後は、観覧車に乗る事に、納得していたっけ。
「ハイ! 楽しんでくれてるかなぁ。心三くぅん。」
これが、『現志力増幅装置』同士の共鳴現象を、応用したと分かっていたので、無言だった。
「凄いですねぇ。ここまで鮮明な記憶、これで、『訓練』を本格始動できる所まで来ましたぁ。そこで、これから指示する通りに、やって下さぁい。心三くぅん。」
* * *
次回予告
第31話 第3の敵~敵機来襲
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