『現志力増幅装置』
驚くべき変化だ。今朝目覚めた時の事だった。
最近ようやく生えてきたばかりの髭が、消失していた。
更に、洗顔したばかりの様に、さっぱりしている。髪もきれいに整っていた。これは……
「……と言う事が、あったんです。これは、治癒だけに有効だと教えられ、そう解釈していた。『現志力』の影響でしょうか、一等書記官。」
「あぁら、凄いじゃない。心三くぅん。もう、そこまで『現志力』を使いこなすなんてぇ。」
「やはり、そうでしたか。ですが、それでは整形手術だって、自由自在でしょう。ある日、突然友人や同僚の顔が、変わったら、大変でしょう、一等書記官。」
「鋭いですねぇ。ですが、その様な使い方は、『違法』とされていますぅ。いいですかぁ、心三くぅん。」
「納得です。で、今回用意した『装置』は、何でしょう。『ネックレス』の様に見えます。一等書記官。」
勿論、この程度であれば、どんな『装置』かなど、一目で分かる。が、この世に存在すると言うもの……『様式美』に鑑みた。よって、敢えて質問した。
「『現志力増幅装置』ぃ!」
『ピカッ! ピコピコピコン』
アイテムを取り出す際に、効果音が聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某猫型ロボットとも無関係に相違ない。
「おひおひ……お前の言う『様式美』ってのは、これかよ……」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「では、これを首から、下げて下さぁい。心三くぅん。」
言われた通りにした、特に、違和感も無い。
「で、これから何をするのです、一等書記官。」
「あなたが、今まで感じた中で、一番『楽しかった』『嬉しかった』『美味しかった』そう言った『記憶』を思い出して下さぁい。心三くぅん。」
「? これは、『訓練』でしょう。楽しくていいんですか、一等書記官。」
「それはぁ、『先入観』ですよぉ。心三くぅん。」
「『先入観』……ですか、一等書記官。」
「特に、『軍人』さんに、顕著に表れるんですよぉ。『訓練』とは、『過酷』な物だってねぇ。が、実際には、『努力家』より『愛好家』の方が、より力を発揮しますぅ。心三くぅん。」
そう言うものかと納得し、言われた通りにした。
* * *
次回予告
第30話 日常 思い出の遊園地
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