定期報告会(1)
「では、これより本日の報告会を始める。」
議長は、副長の役割だ。会議室内には、5人の『パローム人』が、揃っている。
当然の様に、心三は、既に就寝している。
「ういうい、まずは、あたぁしゃからだぞ。お手元の資料1を参照するんだぞ。」
「これが、心三が、初日に、叩きだした成績か。全員、間違いないな。」
『鉄面皮』の異名を持つにしては、珍しく貌をしかめる副長だった。
「間違いありませぇん。知能は、100点満点中69点でしたぁ。」
「俺の見立てた身体能力は、12点だ。」
「『現志力』は、37点だぞ。」
「では、総合39点……と言う事になります。長官。」
ここで、長官へと報告する副長だった。
「おかしいわ。」
会議室内に、充満したのは、戸惑いの空気だった。
そして、尚も続くであろう長官の発言を、餌を待つ雛鳥の如く待つ一同。
「私は、確かに心三と会話しました。しかし、総合39点と言う印象は、受けていません。むしろ、何か、途方もなく……途轍もない……『何か』を感じました。」
「では、自分を含めたこの場の全員が、『誤診』したと言う事でしょうか。長官。」
「ここから先は、あくまで私の『直感』に基づく、『仮説』そう考えて下さい。」
全員が、堅い唾を呑む。それ程、『直感』と言う言葉は、意味が重い。
「いいえ。…………恐らく、心三の『欺瞞』でしょう。」
今度は、疑惑と疑念と疑問の空気だった。
「ですが、彼は、16歳の『平凡』な高校生です。自分達全員が、『欺かれた』とは、信じがたいですね。幾ら、長官の『直感』が、あろうとも、です。」
「かもしれません。ですが、警戒を怠らない事、私からは以上です。」
「では、各自問題点と今後の対策を報告する事。」
「俺から、身体能力が、低すぎます。しかも、やる気が全くありません。そこで、苦痛耐性訓練を実施します。何故なら、この世界の人類は、『痛み』を感じると、動作が鈍ります。」
「しかし、操縦席を攻撃される事でも想定しているのか。」
「ういうい、それについては、あたぁしゃからだぞ。機体との『リンク』が、強くなり過ぎて、機体損傷の『フィードバック』が、懸念されるんだぞ。」
こうして、今後の方針が、軌道修正されていった。
* * *
次回予告
第15話 日記(1日目)
ご愛読ありがとうございます。
面白ければ、ブックマークと、星をお願いします。
励みになります。