今日から訓練 クリアランス
「凄い技術ですね。あれだけあった打ち身アザが、痛みも含めて消失している。医学とは何なのか考えさせられる『技術』ですね、長官。」
「それは、あなたの『現志力』ですよ。あなたが、『自分はこうあるべきだ』と言う自らの『想い』を『力』に、自身の肉体を戻したのですよ。心三。」
そうと答えるのは、最初に説明をしていた長い黒髪の女性だ。パパーニャ長官と名乗り、5人の中で最も巨大な双丘……むしろ、ラグビーボール? とも言える物をお持ちだ。
「だからこそ、疑問です。何故、格闘技訓練を拒否したのです。心三。」
「時間の無駄だからです。そもそも、付け焼刃の技術など実践では、何の役にも立たない。むしろ、未熟な技術がある事で、先入観に繋がります。あるだけ邪魔ですね、長官。」
「ですが、格闘技は、数多現存します。それらは、長い時間をかけ、試行錯誤の上に、成り立つ『最適化』された『技術』です。学んで無駄になりますか。心三。」
「長官の意見は、『生兵法は、大怪我の基』と言います。もし、理想に叶うようにするならば、10年の訓練が、必要になります。よって、『時間の無駄』と言ったのです、長官。」
「……止むを得ません。格闘技訓練は、別メニューに、置き換えます。いいですね、心三。」
「少なくとも、身体能力を向上させるのも、3年以上かかります。それも含めてやめるべきだと思います、長官。」
「では、私から、他の者達では、クリアランス不足で、話す事が出来ない内容を説明します。」
「はい、長官。」
「実は、『パローム・エン本国』は、今現在、『ガウスレーゼ』の攻撃を受けています。」
「確かに、『ガウスレーゼ』が、『装置』である以上、1つとは限らない。ですね、長官。」
「ええ、ですから、『パローム・エン』に帰還する事も、援軍を頼む事も、危険を伴います。」
「確かに、下手をすれば、『パローム・エン』を攻撃中の『ガウスレーゼ』と、挟み撃ちになりかねない。そうなると、本国の戦況が気になる所ですね、長官。」
「連絡は、取り合っています。が、本国の戦況は、芳しくありません。ですから……」
「こちらの『ガウスレーゼ』を撃破し、『倒し方』を『確立』させたい。ついでに、僕にも参戦して欲しい。ですよね、長官。」
「……よく気が付きましたね。その通りです。心三。」
「僕は、『命がけの無料奉仕』をしない主義です。とは言え、報酬の内容は、未だ決まっていません。保留でお願いします、長官。」
「構いません。よく考えて下さい。」
こうして、今日の訓練メニューは、全て終わった。
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次回予告
第14話 定期報告会(1)
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