初陣
「餓っ鬼ぃーん!」
その声が、戦闘開始の合図だったかの様に、突撃して来る敵だった。
「速いっ!」
咄嗟に、左腕で装備した盾で、辛うじて敵の剣を受けた。
「熱っ!」
受けた盾が、剣から発せられた高熱で、炙られる。
「パージ!」
咄嗟に、左腕の肘から先ごと盾を捨てた。当然、敵に投擲する。
更に、後方へと飛び退った。
左腕を回避した敵との対峙……
「ふぅー。」
大きく息を吐く。だが、息が荒い。呼吸を整える努力など無駄だ。そうと知りつつも、呼吸に意識が向いてしまう。
「これが、『初陣』と言う物か。」
ゆっくり、横滑りするかの様に位置を、ずらす。
「餓っ鬼ぃーん!」
またも、高熱を発する『剣』を振りかぶりつつ、突進する敵。
「『逃亡』と言う『選択肢』は無い。迎え撃つしかない。が、あの『剣』、厄介だ。受けた盾諸共、身体を焼き切られる。どうにかして、防御手段を編み出すしかない……」
むき出しの地面で、土を蹴る。本来なら、敵の顔面目掛けてやる物だ。が……
「よし、『剣』に命中……即座に、蒸発か……『解析アプリケーション』へ情報追加。急いでくれ。回避し続けるにも、限界がある。」
何とか、『剣』を回避し続ける。
「餓っ鬼ぃーん!」
今度は、学習能力を発揮する敵だった。
「! こいつ、『剣で土埃を舞い上げた(僕の真似を)』!」
周囲を、土埃と砂塵が舞う。視界は、ほぼ無い。
「この手は。取っておきたかったのだがな。皮肉にも、先んじて、使われてしまった。こいつ、本当に『AI』か。しかも、こうなると、迂闊に動けない……」
落ち着いて、周囲を見渡す。この視界不良も、時間の問題。敵は、必ず仕掛けて来る。
「要は、その兆候を見逃しては、ならない訳だ。」
その瞬間……
焼き切り裂かれる土埃と砂塵。それも、背後から、無言でだ。
「来た! 敵の斬撃! これを待ってたんだぁ!」
* * *
次回予告
第2話 外務副大臣
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