1.鹿出村(しかでむら)への引っ越し
今日は雨。静かな雨。まるで本当に僕のためだけに用意されたような雨だった。
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俺は、笹島 晴樹中学3年生だ。
今、一度も見たことない景色を車で見ながら、公立中の鹿加嶋中学校に向かっている最中だ。
今は紅葉した葉で、歩道が埋め尽くされている。
そう、俺は中学3年の秋という中途半端な時期に、この鹿出村に引っ越してきたのだ。
俺は元々、何回か親の転勤で引越しを経験していて、転校にも慣れっこだった。
だけど、今回だけは嫌だった。
どうしても引っ越しはしたくなかった。
別に、前にいた学校から離れたくなかったわけじゃない。
ただ、何故かわからないけれど俺はこの街に引っ越したくなかった。
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あ、もう見えてきた。
すごくでっかい学校だ。
やっぱり田舎だからかもな。
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鹿加嶋中学校で…
ざわざわ ざわざわ
「おーいみんな、席につけー。今日からこの学校、クラスに仲間入りする生徒の紹介だ。」
シーン
なんだ。
俺が入ってきた途端、このクラスの全員が一気に静かになったぞ。
驚いているようにも見えない。
ただ、気の毒そうな目で見られてる。
「こんにちは。昨日この街に引っ越してきた、笹島晴樹です。よろしくお願いします。」
パチパチ パチパチ
一瞬遅れて拍手の鳴る音がする。
「よし。じゃあホームルームを始めるぞ〜」
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キーンコーンカーンコーン
シーン
おかしい。
チャイムが鳴ったのに誰一人として俺に話しかけてこない。
それに誰も喋らない。
俺はかっこいいイケメンでもないが、今まで
「どこから来たの?」
「何部に入ってたの?」
とか、
必ず誰か一人は挨拶した後に聞かれてた。
だが、今はそれが一切ない。
まあ、俺としてもこのままの方が楽だからいいけど。
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放課後…
キーンコーンカーンコーン
俺は部活に入部することは3年の後半だからもうない。
それに、もうすぐ高校受験本番だ。
「はぁー。」
ついついため息が出てしまう。
両親は共働きだから、家に帰っても楽しくないしどうしようか。
勉強をするとしても教室でやるのは気が引けるし、図書室に行きたいと思ってもまず、学校のどこに何があるのか一度も聞いてない。
普通はクラスの委員長がそうゆうのやるんだけどな。
鹿加嶋中学校は1学年に1クラスで、
1ーA、2ーA、3ーA
だけしかない。
そして、俺のいる3ーAは俺も含めて24人だ。
男子13人、女子11人、
男子の方が人数が多い。
そして、この学校には委員長というものがそもそもなかったらしい。
思い違いではない。
やっぱりこの村は何かがおかしい。
少なくともこの学校は…
初投稿です。
よろしくお願いします。