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【本編完結・後日譚更新中】人外になりかけてるらしいけど、私は元気です。  作者: 山法師
本編

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71/107

65 分断

「直に見てないから知らないけど」


 白に黒の縞模様が入った、短めのハネ髪。歳は十二歳くらいに見えるのが口を開く。


「まあ、そうじゃないとこうはならないよなぁ」


 にやりと笑うそこから、てつほどじゃないけど犬歯というには鋭すぎる『牙』が見えた。

 上は袖の無い白銀の着物、下は足首辺りで絞った袴。腕にも、金属製に見える平たい腕輪を幾つか。


「本当……」


 今度は、十歳くらいの赤い振り袖を着た子が、顔をしかめながら口を開いた。


「前の奴と言い、これと言い。人間って凄い迷惑で馬鹿な事ばっかりしてくれるわ」


 煌びやかなその着物は、袖だけじゃなく裾も長く、床について広がっている。

 同じく床に届きそうな髪は燃えるような紅で、緩いウェーブが余計に炎を思わせる。


「それが巡り巡ってコレだ。楽しいなあ?」


 その白と赤の間に二人。

 片方は赤と同じくらいの背丈で、教科書で見た狩衣みたいな形の、艶のある蒼の着物を着て。

 同系の、少し翠が混じった髪を肩口で結んで、前に垂らしてる。


「……」


 表情が全く動かないし、気も読み難い。


 そして、最後。一番背が低い、小学校にも上がってないくらいの年齢に見える子。

 艶のあるその黒髪はおかっぱで。

 黒に金銀の模様がついた、なんだろう、中華風の着物?を着てる。多分男物の。


「……っ」


 眺めてたら睨んできた。気分は良くないよね。

 でもそっちも、凄みながらじろじろ見てるよね。


 別に、悠長に観察してる訳でもない。目が逸らせないから見ていた、と言った方が正しい。

 今、視線を彼らから外す。それは死を意味すると、直感的に理解した。

 殺気とは違う。だけど、『逃がさない』と気が物語っている。

 加えて、威圧感や畏怖の念。得体が知れないなりに上位の、平伏し、その(めい)を待つべき存在だと。身体の奥底から、そんな訴えをされる。

 それをなんとか堪え、四人を睨み返す。


「……へぇ。やっぱり変わってるな」


 興味深そうに、白いのがまた笑みを作る。

 結局ここはどこなんだ。てつ達はあの山に居て、私だけここにいるんだろうか。


「前の奴も、頭は下げなかったな」


 だとしたら、てつとあの人の偽物が一緒にいるままかも知れない。それはマズい。


「やたらにこにこしてたけどね。アホみたいに」


 なんとか、距離くらいとれないか。今、ほんの数ミリ動くにも気を使う。


「……お前」


 高く澄んだ声が響いた。一番幼く見える容姿に違わず、それはどこかあどけない。


「っ……」


 けれど、この黒。


「自分以外の、心配をしている?」


 四人の中で一番、圧がある。

 この子がリーダー?最強って事?


「聞いている?お前、人間」


 ゆったりと、豪奢な裾をさばきながら近寄ってくる。


「……まあ、仕事中だったので」


 出入り口らしき扉は、斜め右奥。どうすれば、意味不明に竦む身体を動かせるか。


「ここ、どこですか?」

「余裕だな。あ、違うか。隙を探してんのか」


 白が扉に目を向け、肩を上下させる。


「うん、頑張れ」


 うざいな、君。


「その気力、そのまま保たせろ。生きたいと願え」


 気付けば黒が、すぐ目の前まで。

 いけない、緊張して視界が狭まってた。


「それが『材』の質を上げる。際の際まで、苦しみに耐え抜け」


 不穏な事を言うこの子達から、少しでも離れてどうにか──


「あの目にも耳にも煩い狼が、ここにやって来るまで」


 恐ろしいほど美しい笑みとその言葉に、私は息を呑んだ。




「さて、ここがどこだか」


 板と畳が混じり合うように敷かれた床を踏みしめ、遠野(とおの)はぐるりと視線を巡らせる。


「どなたか教えていただけませんか?」


 遠野を囲むのは人ではない。鬼、巨大な生首、鶴、目玉、デカい鼠に爬虫類らしき者まで。

 刀や槍やらを構えた彼らは、友好的とは程遠い気配でこちらを見据えてくる。


「……残念」


 どうにも互いに牽制する雰囲気を見せている彼らに、遠野は大仰に肩を竦ませた。


「言葉は通じている気が」


 そして捉えられる範囲の意識を手繰り寄せ、


「するんですが」


 一気に引き抜く。

 糸が切れたようにバタバタと倒れていく者達を眺め、遠野は軽く息を吐いた。


「異界ではあるんでしょうが」


 さてそのどこか、と呟き、近くに倒れた人型三つ目の手から刀を取る。そして振り向きざまに振った。

 カシンッ

 軽い音が響き、二つに折れた矢が足下に落ちる。


「……」


 壁を背に、刀を構える。

 先ほどより少ないものの、奥からまた異界の者が集まってきた。




 ここはどこだ?

 いや、知っている。覚えがある。

 覚え?


 「…………」


 ああ、周りがうるせぇ。ごちゃごちゃと。また山に、……違う。

 あれは何だ?

 お前は、

 違う。知らない、


「やめろ!!」


 ……あぁ、静かになった。


 帰らなければ。

 ……帰る?どこに?

 俺の……俺? 俺、は、


「……?」


 また、煩くなってきやがった。懲りねぇなぁ……なあ?


「……──……?」


 いない。居ない、どこ行きやがった。

 また適当にほっつき歩いて──

 違う。


「……」


 あぁ、居た。 違う、

 やっと  ちがう

 見つけた


   違う!


「あぁあああぁぁああ゛!!!」


 ……消えた…………

 ………………どこ行った?





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