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【本編完結・後日譚更新中】人外になりかけてるらしいけど、私は元気です。  作者: 山法師
本編

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40/107

37 ローテーブルを囲んで


続けて読んだ方が分かり易いかと思い、36、37と二話更新しています。

こちら最新37話となりますので、先にこっちに来てしまった方は一つ前からお読みください。

(2020/7/6)

「ああ」


 てつは深い青緑の目で私達を見下ろし、腕を組む。堂々たるその立ち姿は何。


「何故急にその姿に」

「今ならいけそうな気がした。狭いのもあったが」


 キラキラもふもふして分かり難いけど、結構ガタイが良い。筋肉ついてる。前の小さい姿は細めだったのに。


「……よし移動しよう、座ろう。芽依めい

「ぁ、うん」


 芽依の背を押し、部屋へ向かう。


「あ、てつ、靴は脱いで」


 振り返りながらてつに言うと、


「くつ?」


 首を傾げられた。


「その革靴的なやつ。ここ室内だから」

「おぉ、そうだった」


 足元の黒く艶のある履き物を示すと、それは一瞬にして掻き消える。


「……」


 ま、小狼の時もそんなだったし。大きくて立派な爪は何故か床を傷つけないし、気にするのは止めてる。




「こうなると、狭いな」

「一人暮らしの間取りなんで」


 ベッド側に芽依を、窓の側にてつを座らせ、冷蔵庫から麦茶を出す。


「俺にもくれ」

「え?飲めるの?」


 食べ物はいらないんじゃなかった?


「いけるようになったらしい」


 らしいとは。


「……まあ、分かった」


 コップ、三つあったっけ……あるわ。


「はい、お待たせしました」

「ありがと」


 それぞれに置いて、私も座る。芽依を右、てつを左に見る位置だ。


「……」


 えぇと、何を言えばいいんだろう。


「まず、聞きますけど」


 逡巡していたら、芽依が口を開いた。


「てつさんは、そもそもなんであんずについて……ついて?るんですか」

「あ?杏から洗いざらい聞いたんじゃねえのか?」


 てつは胡座をかいて、コップに手を伸ばしながら聞き返す。


「聞くには聞いたけど、てつさんから聞きたいんです」

「はぁ……俺だって分かりゃしねえよ。ちょいと後ろの鬼を弾こうとしただけだってのに、気付いたらこいつの腹ん中だ」


 言って麦茶を飲むてつに、芽依は少し眉根を寄せたようだった。


「……てつさんは、杏をどう思ってるんですか」

「あ?」

「はい?」


 どう思う……?


「最初は確かに助けてくれたのかも知れないけど、今はどんどん……危なくなっていってる。私にはそう思える」


 芽依はまっすぐてつを見て、静かに言う。


「今日だって、杏はあなたの事で巻き込まれた。……それに、本当に巻き込まれただけ?」


 え?


「てつさんは、何かあるかもって、あえてあそこに杏を……とかそんな穿(うが)った見方だって出来てしまう」

「え、えええ?!」

「ようするに、俺が気に入らねえって訳だ」


 私の声に被せながら、てつが嗤うように言った。


「俺といるとこいつが危ねえ、しかし俺と離す(すべ)がねえってんで、説経を垂れてると」

「そんな偉そうな事じゃありません。あなたは杏をどう見てるのか……利用して、テキトーに扱う気なのか、それが聞きたいんです」


 てつが、私を、今まで……?


「……聞いてどうする」

「私に止める力があれば止めてますけど、無いので。友達に、杏に何かあったら、勝手に一生恨みます」


 芽依が、とても厳しい視線でてつを見据える。


「…………はあぁ……」


 大仰に溜め息を吐いて、てつは頭を掻いた。


「言っとくがな、俺ぁ利用するだのなんだの、そういうまどろっこしい事は面倒で嫌いなんだ」


 私を一瞥して、芽依に顔を向ける。


「俺ぁ俺のやりたい事を、やりたいようにやってる。それで周りに何かあろうが、俺がやった結果でしかねえ」

「はあ?」

「だから、今日の事も、俺がしくじっただけだ」


 しくじる?


「俺に馴染まないように、繋がりを薄めてた。結果、見事裏目に出た。もうちょい気を張ってりゃ隙間に落っこちる前に気付けたろうよ」


 ケッと吐き捨てるようにして、


「気ぃ使って()くしてりゃあ、元も子もねえ。とんだお笑いぐさだ。だから、あー……大間おおま


 てつは芽依を見ながら人差し指を、その長く鋭い爪を私に向ける。


「お前が気を揉むのは勝手だが、俺は俺のしたいようにして、こいつといる。これからもな。だから、諦めろ」


 芽依は、じっとてつを見てから、はーっと息を吐き出した。


「はい、うん。……分かりました。そんなんだろうなとは思ってたけど」

「え、思ってたの?」


 芽依はなんだか呆れたような表情になった。


「うん。だって、てつさんずっと……」


 ずっと……?


「……うん」

「いやどういう事分かんない」


 曖昧な顔をする芽依に、てつは頬を引き上げる。


「イイ根性してんなぁ大間」

「てつさんほどじゃないですよー」


 てつの言葉に芽依は笑って返す。


「納得はしてませんし。どっちにしても、何かあったらは変わらないので」

「おーおー。良いトモダチがいるなぁ杏」

「え?うん、うん?」


 お互い理解し合った、みたいだけど。こちらはついて行けてないよ?

 また私、置いてけぼり食らってる?


「とりあえず、てつが私を利用してるってのは違うんだよね?」


 なんで二人してこっち見るの。


「そんな面倒なこたぁしねぇっつってんだろ」


 た、溜め息を吐かないでもらいたい……。


「……んー……」


 小さく唸るようにして、ぽつりと芽依が零す。


「……てつさんはさ、杏が大事なんだよ」

「あん?」

「ええ?」


 大事?私が?……ああ、そっか。


「今私に何かあったら、てつにも影響あるもんね?」


 言ったら、芽依はてつを見、私を見、またてつを見て。


「はぁ……」


 なんだか気が抜けたように軽く笑った。


「あ?何だ、言いたい事あんなら言え」


 牙を見せるてつに、芽依は澄ましたように言う。


「いえ別に」


 結局分かったような、そうでないような。

 あとこの二人、仲良くなりそうでならないなぁ……。





自ら二話更新しておきながら…なのですが、これにより、来週は更新をお休みさせて頂くかも知れません。ご了承下さい。

結構お盆も忙しくて…、書けたら…書きます…

(2020/7/6)

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