表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/40

十話:『始まりの終わり』

(どうしても一回だけ勇者の心情を差し込んでおきたかったのです……。次回こそはモノづくりスローライフへ入ります!)

「……そうか」


 告白を受け、俺の心は混乱中だった。素直なヒョウゲツの気持ちを知ったあとだ。余計に思いが強く伝わってきて――。


「まだ答えはなくていいの。それでも、もしサトウの心に決心がついた時には、きっと答えを返して欲しい」

「……わかった。約束しよう」


 だからこそ、冷静に考えて、自分を見定めてくれとばかりに、期間を設けてくれたヒョウゲツに、内心で感謝を送る。

 ……こういう気持ちを伝える言葉は、きっと冷静な時に発さないと、後悔する。なんとなく、そんな気がした。


「……よし。これで私の話は終わりね」

「いや、まさかこんな話をされるなんて思ってもなかった」

「驚いた?」


 ああ、驚いた、と呟きつつも、ソファーに寝そべる。休日だったが、実に疲れる一日だった。体力的にも、精神的にも。

 そのまま深く息を吐くと、だんだん眠くなってきて、意識が混濁としていく。そんな俺の様子を見たのか、ヒョウゲツは笑みを浮かべて俺の方へと歩いてきた。

 そのまま、部屋に備え付けの毛布を俺に被せて、おやすみなさい、と小さく呟く。俺も言葉を返そうとしたが、意識をはっきりと保つことが出来ず、深い眠りに落ちた。



 眩しい朝日、目の端で宝石のように光る銀髪、そして頭の下の柔らかい感触。……もういうまでもない。俺はヒョウゲツに膝枕されていた。

 ヒョウゲツが日ごろ身につけている軍服ワンピースは既に脱げているのか、いつもはスカート越しに伝わってくる柔らかさが、今日はダイレクトに伝わってきた。

 柔らかくて、でもただ柔らかいだけじゃなくて、なんというか芯があるやわらかさ。確か、鍛え抜かれた筋肉は逆に柔らかいなんてことを聞いた気がする。

 ……そういうのはさておいて。なんだかあんな話を聞いたあとなので、昨日感じた恥ずかしさとは比べ物にならないほどの恥ずかしさを感じた。それこそ顔に火がついてしまいそうなほど。

 そそくさと頭を膝の上からどかして、そのまま部屋を出た。……なんとなく、もう一度触れてみようか、と思ったあたり、俺もだいぶんヒョウゲツに絆されている。

 きりりと冷たい井戸水で顔を洗って、頬のほてりを抑える。寒期に近づいているせいか、痛いほどに冷たくなっている水は、俺の頬の火照りのみならず普段の俺らしくない場所まで洗い流してくれるような気がした。

 ……いずれはヒョウゲツの気持ちに答えなければならない。この生活に一つの区切りがついたら、その思いに対しての返答を出そう。きっと。――いや、絶対。


 そうして、新しい朝が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ