十話:『始まりの終わり』
(どうしても一回だけ勇者の心情を差し込んでおきたかったのです……。次回こそはモノづくりスローライフへ入ります!)
「……そうか」
告白を受け、俺の心は混乱中だった。素直なヒョウゲツの気持ちを知ったあとだ。余計に思いが強く伝わってきて――。
「まだ答えはなくていいの。それでも、もしサトウの心に決心がついた時には、きっと答えを返して欲しい」
「……わかった。約束しよう」
だからこそ、冷静に考えて、自分を見定めてくれとばかりに、期間を設けてくれたヒョウゲツに、内心で感謝を送る。
……こういう気持ちを伝える言葉は、きっと冷静な時に発さないと、後悔する。なんとなく、そんな気がした。
「……よし。これで私の話は終わりね」
「いや、まさかこんな話をされるなんて思ってもなかった」
「驚いた?」
ああ、驚いた、と呟きつつも、ソファーに寝そべる。休日だったが、実に疲れる一日だった。体力的にも、精神的にも。
そのまま深く息を吐くと、だんだん眠くなってきて、意識が混濁としていく。そんな俺の様子を見たのか、ヒョウゲツは笑みを浮かべて俺の方へと歩いてきた。
そのまま、部屋に備え付けの毛布を俺に被せて、おやすみなさい、と小さく呟く。俺も言葉を返そうとしたが、意識をはっきりと保つことが出来ず、深い眠りに落ちた。
◇
眩しい朝日、目の端で宝石のように光る銀髪、そして頭の下の柔らかい感触。……もういうまでもない。俺はヒョウゲツに膝枕されていた。
ヒョウゲツが日ごろ身につけている軍服ワンピースは既に脱げているのか、いつもはスカート越しに伝わってくる柔らかさが、今日はダイレクトに伝わってきた。
柔らかくて、でもただ柔らかいだけじゃなくて、なんというか芯があるやわらかさ。確か、鍛え抜かれた筋肉は逆に柔らかいなんてことを聞いた気がする。
……そういうのはさておいて。なんだかあんな話を聞いたあとなので、昨日感じた恥ずかしさとは比べ物にならないほどの恥ずかしさを感じた。それこそ顔に火がついてしまいそうなほど。
そそくさと頭を膝の上からどかして、そのまま部屋を出た。……なんとなく、もう一度触れてみようか、と思ったあたり、俺もだいぶんヒョウゲツに絆されている。
きりりと冷たい井戸水で顔を洗って、頬のほてりを抑える。寒期に近づいているせいか、痛いほどに冷たくなっている水は、俺の頬の火照りのみならず普段の俺らしくない場所まで洗い流してくれるような気がした。
……いずれはヒョウゲツの気持ちに答えなければならない。この生活に一つの区切りがついたら、その思いに対しての返答を出そう。きっと。――いや、絶対。
そうして、新しい朝が始まった。