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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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よくある理由は金銭感覚の違い

 



 初めてお目にかかる白金貨さんが机の上にぽつんと1枚。

 これって地球の感覚でいくと「現金が無いのは不安なのでいつも1億円持ち歩いてまーす」と言っているようなものだ。



(この人大丈夫かなあ? 結婚とかできるのかな……? 金銭感覚が違うとねーいやでも奥さんとしてはまさしく玉の輿だから別にいいのか? 破産するわけでもなし……ほんとに破産しないのかなあ? クダヤを裏切るような事は出来ないみたいだけどこれはさすがに――)



 サンリエルさんの伏せた頭の頭頂部を見ながらあれこれ考えているとカセルさんから声が掛かった。



「……ヤマ様?」


「――ああ、すみません」



 ひとまず、まだ結婚していないのは金銭感覚が足を引っ張っているという事にしておこう。勝手に。



「サンリエルさん。これはクダヤのお金ですか? それともサンリエルさん個人のお金ですか?」


「私の個人財産から出しております。……足りませんでしょうか」



 的外れな事を言い出した億万長者サンリエル。



「違います、多過ぎです。とりあえず個数分の銀貨を街からという事でアルバートさんに渡してください。アルバートさんはお金をお祖母様に。サンリエルさんの命令ときちんと伝えてください。――いいですよね?」


「もちろんでございます」


「ではこのカリプスは私に献上したという事で私の好きにします。はい、サンリエルさん」


 そう言って3つをサンリエルさんに渡す。



「拠点でお世話になりますからどうぞ。かかった費用は必ず教えてくださいね」


 そう伝えると、震えた声で感謝の言葉を述べ始めた。

 泣いてないよね……?



「お2人には1つずつで」



 サンリエルさんとの差別化を図るのが1番スムーズにいく気がする。

 そのサンリエルさんは勝ち誇ったような顔をして2人を見ながら皮ごとキウイメロンを食べ始めた。

 勝ち誇ってるところ申し訳ないけど、カセルさん達にはもっと良い物持って来るんだよね……。



「とても美味しいです。素晴らしい味です」


「ありがとうございます。アルバートさんは持って帰ります?」


「あ、あの……では今……」

「俺がもらってもいいけど」

「うるさい……!」



 ここまで人を夢中にさせるなんてチカチカさんの食べ物は罪な食べ物だな。さすがだな。



「皆さんがそれを食べ終えたら私はそろそろ帰りますね」



 遅くなりすぎると捜索隊を出されそうだ。目的も達成したしさらりと帰ろう。

 しかしこの発言にサンリエルさんの動きが止まった。



「……本日は街にお泊りになるのですか?」


「そうです。そう言えば本日はユラーハンの王族との会食があったそうですが――」



 必殺、話を逸らす。



「族長達が対応しております。また何かと理由をつけてクダヤに来るつもりでしょうから構いません」


「その他の国になにか動きはありますか? ミナリームとか」



 ミナリームの彼等は大丈夫なんだろうか。アルバート2号は元気かな。



「数か国から新たに拝謁に関して書簡が届いております。ミナリームは国内では揉めているようですが、こちらには何も出来ないでしょう」



 淡々と興味が無さそうに教えてくれるサンリエルさん。

 ここでふとある事を思い付いた。



「大使館って言葉があるんですが、ご存知ですか?」


「――――いえ」


「……簡単に言うと、国交のある国から権限を与えられて派遣されて来る人が長期間拠点にする場所、という意味です。派遣される人が大使ですね」



 思い付きで口にしたが、いざ説明するとなると分からない事が多い。まあいいか。



「クダヤの防衛上、問題の無い場所にその大使館を作ってみては? 船上会談は皆さん怖がるでしょうし、ユラーハンのようにクダヤと繋がりを強めたい国は増えてくるはずです」



 本音としては、御使いについての討論はそれ用の室内でこっそりやってねという事だ。

 ボスが本気出せばそれも無意味だけど……。

 いちいち神の社前で開催してたら参加者も自由な発言が出来ないしね。



「そうすれば神を独り占めしている、なんて事も言われないでしょう。もちろんどの国も同じ必要最低限の拠点です。豪華な執務室を望む大使などは問題を起こしやすそうなのでそこで排除してもらえれば。それに警護の名目で一族の方が大使館の見張りも兼ねれば、両者にとっても悪くはないと思うんですが――。どうでしょう?」



 黒歴史は繰り返さない決意。



「――大変素晴らしいお考えです」


「領主様そうしましょう。クダヤに住むとなれば毎回おもてなしをしなくてすみますし、定期的な会談を設定してしまえばそれ以外の用事は断りやすいです」



 おお、カセルさんの本音が出た。隠す気もないんだろうけど。



「相手国にもこちら側の大使館を置くよう取り決めれば、他国の情勢もより掴みやすくなる。その為には大使の身の安全についても明言しておいた方がいいな――」



 ……サンリエルさんはちゃんとした領主だった。

 大使館というものを即座に理解している。御使いはもうアドバイス出来ないからね。知らないから。


 そしてカセルさんとサンリエルさんが話し合っているのを横目にお茶飲む。頭が良さそうな発言の後だからか、よりお茶が美味しく感じられる。あー美味し。ひと仕事終わったな。

 そのお茶が無くなったので視線を執事カートに向けた時、アルバートさんが大きな音を立てて立ち上がった。

 もちろん注目する面々。



「すみません……! いえあの……ヤマ様……お飲み物をご用意しますか……!?」



 そういうことか。



「はい、ありがとうございます。――サンリエルさんはお話を続けて下さいね。どんな大使館になるのかまとまった案が出たら聞かせて下さい」



 もう帰ろうと思っていたが、アルバートさんの一生懸命さが嬉しいのでお茶を淹れてもらう事にする。



「今度はどの茶葉にしましょうか。おすすめはありますか?」



 執事カートまで近寄り話しかけると、アルバートさんに距離を取られた上、困った顔をされた。

 ごめんごめん。



「じゃあみんなが選んだのブレンドしようかな~」



 いくら不味くてもちゃんと飲み切るから。



「1人ずつ選んでもらえる? キイロはこれ? アルバートさんこれを――」

「領主様、お顔を見たらお怒りを受けますよ」



「ロイヤル、アルバートさんの頭に乘らない。マッチャも乗せない。――大丈夫ですか?」

「領主様、守役様が頭にお乗りになっているだけです」



「ダクスは牙を見せなくていいから。うん、強そう強そう。茶葉はこれ?」

「領主様、威嚇されているだけですから」




 ……カセルさんの発言がいちいち耳に入ってくるんですけど。



「キイロ、机の上でかっこいい感じでふんぞり返っててくれる? サンリエルさんがこっちに意識向いちゃってるみたいだから」



 申し訳ないがお偉いさんの注意を引いておいて欲しい。

 そしてすぐさま机にひらりと着地するキイロ。カセルさんは嬉しそうにキイロを眺め始めたし、サンリエルさんの表情はここからは見えないがきっと無表情で凝視しているはずだ。

 話し合いは終了してしまったがみんなが満足する結果となった。アルバートさん以外。





「――ナナはこれね。ボスは? ――これ? 最後にこの茶葉を加えてください」



 物凄く近い距離で作業を見張られながらも奮闘するアルバートさん。

 その甲斐あってか出来上がったお茶はなんとも言えない良い匂いがした。

 適当ブレンドにしては匂いが良すぎる。



「美味しそうですよね?」


「はい」



 行儀が悪いが、ひとまずみんなに毒味をしてもらってから立ったままお茶をひと口。



「……とても美味しいです。アルバートさんもちょっと――」



 その辺のカップに少し注いでアルバートさんに渡す。



「あっ申し訳ありません! ありがとうございます……!」


「いえいえ。どうですか?」


「……美味しいです」


「ですよね」



 飲み終わったアルバートさんも少し驚いた顔をしている。



「ヤマ様、私も頂いていいでしょうか」


「どうぞどうぞ」


「私も良いでしょうか」


「どうぞ」



 キイロを見ていた2人もこちらに近寄ってきたので、アルバートさんの代わりにカップにお茶を注ぎマッチャに手渡してもらう。

 それにしてもサンリエルさんはちょっと島のみんなと距離が近いな。エンの鼻から火花出ちゃってるじゃん。



「美味しいですね~!」

「非常に香り高く高貴な味がします」


「(評論家……)ですよね」


「ヤマ様、これは売れるのでは? 私は買います」

「私もです」



 カセルさんから商売の提案が来た。そしてサンリエルさんもかぶせ気味に話に入ってきた。



「確かに美味しいですけど……。自分でいうのもなんですが、御使いという要素があるからお2人は欲しがっていますよね? わざわざこれを街の人が買ってくれるでしょうか?」


「街で買い取ります」

「もちろんヤマ様と守役様が関わっているので欲しい気持ちもありますが、味だけを見ても十分売り物になると思います」



 サンリエルさんのすがすがしい職権乱用のおかげで売る前から大口の顧客が確保されてしまった。

 でもあまりにも簡単に物事が進み過ぎて心配になる気持ちは消えない。



「適当に組み合わせただけですのでそのうち真似されそうで――」



 ここで、島生活のイージーモードに慣れ過ぎて必要以上に失敗を恐れている自分に気が付いた。

 というか商売をする事が島生活の目的じゃない。売れないと切ないけど。




「――まあひとまずやってみてから問題が出たらその時考えますか~」


「そうですね、私達も一緒に考えますので。な、アルバート」


「え? ……え!?」



 突然話を振られ困惑しているアルバートさん。



「そうですね。選んだのは守役ですがお茶を淹れてくれたのはアルバートさんですので。もしかして淹れ方にコツでもあるんですか?」


「いえ! 領主様と同じように……」

「ヤマ様、私もやってみます」



 カセルさんとアルバートさんといつものようにわいわいやっていると、サンリエルさんがぐいっとアルバートさんの前に出てきた。

 入ってこれない雰囲気を出して1人だけ仲間はずれみたいになっちゃってたな……。悪い事をした。



「サンリエルさんはこれらをどうやって手に入れたのですか? 私も仕入れ先を確保しないといけませんので教えてもらえますか? 保存方法なんかも知っていたら教えていただけると――」



 積極的にサンリエルさんに話しかける。さっきはごめんね。

 すると、声が生き生きとしてきたサンリエルさんが熱弁をふるい始め、まるでプレゼンを受けている気分に――。





「ついでなんで色々と決めちゃいましょう」







 こうなったら腰を据えて企画会議に参加しようではないか。

 めざせ初回出荷分即日完売。





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