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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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88/216

外国バージョン

 



 御使い様と守役様の素晴らしさを教えてもらい、それにコメントを返すというかなりレベルの高い苦行をこなしている私。

 自分の事を質問されない為に積極的に神関連の話題を振っているので自業自得ではある。


 夜の食事まで精神は持つのだろうかと不安になってきたところ大きな音が聞こえてきた。




「レオンね! フィンセントは何をやって――」


 アビゲイルさんが怒りながら居間の扉を開けようとするも先に扉が開いた。



「ただいま~! すげえうまいカリプスがあるって聞いたんだけど~。それに! 可愛らしいお客さんにびっくりしてアルバートが逃亡したんだって~? 逃亡する度胸があったなんておかしくてさ~」



 元気さのレベルが違う人が登場してきた。



「あ。君がお客さん? 初めまして~“理”のレオンです。よろしく!」


「初めましてヤマチカです。よろしくお願いします……」



 この明るさに突然の人見知りが発揮されてしまい、ちらりとアレクシスさんを見る。



「ちょっとレオン静かにしてもらえる? ――ごめんなさいね、兄なの」

「礼儀正しくしなさい」



 すぐさま間に入ってくれたアレクシス親分。そしてアビゲイルさん。



「悪い悪い。でもあんな話を聞いちゃな~」


「私逃亡なんて言ってないけど」

「姉さん、それは兄さんが勝手に言ってるだけですから」



 また知らない人が出てきた。

 その人は声は男性なのだが一見すると女性にも見間違われそうなほど美しい男性だった。



「うちの一族の人間が話のついでにアルバートの事をぽろっと言ってしまって……。ごめんねアレクシス」



 申し訳なさそうにいかついネコ科も入ってきた。背が高すぎて頭を入口にぶつけそうだ。



「おかえりなさい。良いのよ、私も警護の方の好意につい甘えてしまって――」


 そう言いながらアレクシスさんはネコ科の男性に自然に抱き着いた。



(わあ~。あの人アレクシスさんの旦那さんなのかな? 仲良いな~絵になるな~。マイルドな野獣と美女な感じで素敵。この街ってハグが挨拶なのかな? 日本人としては少し抵抗があるんだけどな……。いやでも皆さんそんな事なかったからこのお2人が仲が良いだけなのかも)



 冷静な顔をして2人の仲睦まじい姿をじっくり観察する。変質者の所業。

 すると、アビゲイルさんも素敵な男性と触れ合っているのが目に入った。



「――すまない。アルバートは港かな?」


「そうなの。使者の方達との会食があるらしいのよ」


「おお~。あいつも出世したな~!」


「出世ではないと思いますけど、よくやっていますよね」



 アビゲイルさんと白髪3人衆をこれまたなんでもない顔で凝視する。

 私の隠された才能が開花したな。ふふふ。


 アビゲイルさんが腕に触れているのが恐らくアルバートさんのお父さんで、かっこいい元気な白髪がお兄さん、美人な敬語キャラが2番目のお兄さんという事はわかった。

 身長は私と似たようなものだがとにかくみんな女性にもてそうな顔をしている。



(アルバートさんのあの自信なさげな感じってコンプレックスってやつなのかも。かっこ悪くはないけどこのメンバーの中じゃなあ……。絶対周りから見ても違いがわかっちゃうもんな~。でもおじいちゃんと似てるから遺伝子はばっちり――)


「初めまして。アレクシスの父の“理”のフィンセントです」



 アルバートさんの事を勝手に分析して失礼な事を考えていたらその父親から挨拶されてしまった。



「は、初めまして。ヤマチカです」



 後ろめたさでどもってしまった。第一印象が大切なのに……。



「アレクシスの弟の“理”のルイスです。よろしくお願いします」


「ヤマチカです。よろしくお願いします」



 君は絶対メガネが似合うと思う。



「ヤマチカちゃん初めまして。アレクシスの夫の“地”のジーリです」


「初めまして、ヤマチカです」



 精一杯首を上に向けて挨拶を返すと、ジーリさんとアレクシスさんは優しい表情で笑いかけてきた。惚れる。

 私はどうもネコ科の人間にときめくらしい。あと美人。



「ジーリは背が高過ぎだからな~。で、どこから来たの? 1人なの?」


「レオン。女性に対して不躾ですよ」



 おばあちゃんのファインプレー。



「すみませ~ん。じゃあ後でゆっくりと! 早く食べたいな~」


「準備をするから着替えてきなさい。今日はせっかくだからテラスで頂きましょう」



 このタイミングでご近所さんもキウイメロンをもって自宅に戻る事になり、ほっと一息つけるようになった。



「ヤマチカちゃん、テラスから陽が沈むのを見ない? とても素敵なんだから」



 喜んでその申し出を受ける。

 なんだかバカンスに来ているみたいだ。わくわくする。


 そしてアレクシスさん達は食事の準備に席をはずし、この場に残ったのはおじいちゃんとジーリさんだけになった。

 ジーリさんの手伝いは、小回りがきかないから今回は大丈夫と断られていたので思わず吹き出しそうになった。小回り……。



「ヤマチカさん、今日は知らない人に囲まれて疲れただろう?」


「いえ、そんな事は……」


「知らず知らずの内に気疲れしているものだからね。食事の時間になるとまた賑やかになるからそれまでテラスでゆっくりするといいよ。長旅だったろうし」


 そう言うと、おじいちゃんはテラスまで飲み物とまさかのブランケットを運んでリゾートホテルのプールサイドの演出をしてくれた。



 ……やだかっこいい。おばあちゃん見る目ありすぎ。素晴らしい距離感。

 テラ、ギガ……何だっけ? まあいいや、とにかく最優秀イケメン。

 私にブランケットを用意するという偶然の心憎い演出も光るものを感じる。

 ありがとうございます、存分に満喫させてもらいますので。







「……みんないる~?」



 海外風オシャレテラスとつながっている食堂に誰もいない事を確かめてから声をかける。



「ぴちゅ」


「うん、キイロはいるね。他のみんなはまだ家の中? ――はいはい外からね」



 勝手に家の窓を開けて庭からテラスに向かっているらしい島のみんな。家宅侵入のエキスパートになれそう。



「つめたっ」


 そして突然頬に感じる濡れた感触。



「……高さ的にエン……でもナナも……いや、鼻は濡れてないような……」


「クー」

「コフッ」


「エンだったか~」



 濡れた鼻をそっと触れさせてきたのはエンだった。可愛いが溢れている。



「みんな揃ったよね? あ、ボスは人が来そうになったら教えてね。――はい、ではさっそく事情聴取を始めます」



 アルバートさんの空中きりもみはなぜ起こったのかを改めて追及する事に。

 が、追及もなにも「時間が無かったからマッチャが投げた」というすがすがしいほど簡潔な答えが返ってきた。



「……そうですか。次からアクロバティック系はカセルさんでお願いします」



 すまないアルバートさん。面と向かって強く言えないんだ私。みんなに良い顔するタイプなんだ。

 よし、事情聴取終了。お疲れ様でした。











「帰ってきてる? 良かった~。間に合った~」



 事情聴取というひと仕事を終え、島の巨木を見ながら空が暗くなってくる様を楽しんでいるとボスから帰宅報告があった。

 これですべての面倒はカセ&アルに丸投げできるな。



「キュッ」


「もうつつく監視は大丈夫」


「キャン」


「唸りも大丈夫。知らない人達がたくさんいるからね」


「フォーン」


「味見は難しいかも……」


「ぴちゅ」


「あいつら……。まあちょっと聞いてみるよ」



 うっすらと姿がわかるようにしてくれているので人が来る前に存分に抱き着いておく。



「夜はたぶん1人になれるからみんな一緒に寝ようね~。お泊り会だね~」



 頬をこすりつけるようにナナの首に抱き着いているとボスからまた報告が。



「――2人がつけられてる? なにそれ物騒じゃん。物語感出てきたんじゃない? え? 人間で1番強い奴……? …………もしかしてサンリエルさん……? 」





 まさかの出来事、2人をつけている悪い奴はクダヤのトップであるサンリエルさん。

 ……映画1本撮れそう。



「屋根を飛び移ってる!? うわ~。街の人は気付いてないの? ――それ完全に忍者なんだけど」



 馬車でこちらに向かっている2人を追跡するNINJAサンリエルさん。

 なんでそんな状況になっているのか、うっすらと思い当たるが思い当たりたくはないというか……。



「説明に失敗したのかな? まあいいや、2人が来るの待とう。みんなは全透明化でね」



 開き直り異世界サンセットを優雅に観賞する。

 すると道の方からけたたましい音が――。そして聞こえてくるカセルさんの声。元気いっぱいだなー。

 2人は馬車を急がせて帰ってきたようだ。急かして申し訳ない。



 待ち構えるように食堂の扉に視線を向けていると、恐る恐ると言った様子でアルバートさんが扉から顔を覗かせ、私と目が合った瞬間見た事のない素早さで顔をひっこめた。まさに草食動物。

 扉の所でガタガタ音がするのはきっと慌てているのだろう。1名だけだが。








「遅くなりました」



 ようやく扉を開け笑顔でこちらに近付いてくるカセルさん。と後ろに隠れようとしているアルバートさん。



「もうそろそろ食事がで「お2人ともサンリエルさんに後をつけられていますよ」



 その言葉にカセルさんが笑顔のまま固まった。アルバートさんは面白いオーバーアクションだが。



「……守役様からの……?」


「はい。身体能力を駆使して追ってきたみたいです」


「…………申し訳ありません」



 めずらしくカセルさんが落ち込んでいる。



「納得したと思ったんですが――」

「お、やっぱりカセルか。相変わらず騒がしいな~! 会食はどうしたんだ?」



 もっと騒がしい人が来た。



「じいちゃんに止められてヤマチカちゃんをそっとしといたのに。お前なに? もう仲良くなってんの?」


「兄さん、食事の準備をしますよ」


「お帰り2人とも。予定があったんじゃないのか?」



 さらに来た。



「お邪魔してます。会食は参加しなくていい事になったんです。俺もごちそうになるので手伝いますね~。でもアルバートはヤマチカさんともう少し話がしたいと――」



 そういう作戦で来たか。

 君のお友達卒倒しそうだけど大丈夫?



「カセル……!」

「お!? なになに!?」

「そうか。ありがとうカセル」

「邪魔はしませんから」



 カセルさんが視線で何かを伝えようとしている。

 ……よくわからないけどわかった。



「今日は驚かせちゃったからな~アルバートは。庭でも散歩しながら親睦を深めてこいよ」


「カセル……!」

「じゃ俺も」

「邪魔です」

「レオンが行くとアルバートが話せないだろう」



 誰もアルバートさんの話を聞いていない。かわいそう。

 そのままアルバートさんの背中を押してテラスに連れてきたカセルさんに、ぼそっと「お願いします」と言われた。






 この思春期の彼の面倒は御使い、ヤマ・ブランケットに任せてもらおうか。






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