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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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応急処置

視点戻ります。

 



 クダヤの街から仕入れた諸々を上機嫌で手にして帰宅、休憩も兼ねてソファーでうとうとしていると、雷のような音が聞こえてきた。



「……お? 雷? 雨かな……? あ! チカチカさんのアクセサリーが濡れちゃう!」



 慌ててテラスに出て、木陰をつくってくれている枝に結んだアクセサリーを回収しようとするも手が届かない。



「ボス~! もう1回手伝って~!」



 ボスを呼び、次にマッチャが干してくれた洗ったばかりの洗濯物も急いで中に取り込む事に。



「マッチャ~! この物干し台ごと家の中に運ぶの手伝って~!」


「キャン!」



 ボスとマッチャを呼ぶも勇まし気に出てきたのはダクスだった。後ろからはエンとナナも姿を見せた。



「あー……。ダクスはこのアクセサリーをお願いしようかな?」



 ダクスの体にアクセサリーを巻き付けながら辺りを見回すも、ボスとマッチャの姿は見えない。



「マッチャはキッチン? ボスは……外にもいないね」


「クー」


「すぐ戻ってくるのね。じゃあ出来る事だけでもしとこうかな。雨が――――そういえばキイロとロイヤルは?」


「コフッ」


「2人も……?」



 ナナからすぐ戻ってくると教えてもらったが、私が起きている時はみんな近くにいるのでどこか違和感を感じる。



「ねえ、どこに――「ぴちゅ!」



 みんなはどこに行ったのか聞こうとした時キイロが肩に舞い降りてきた。

 そしてボスがテラスに降り立ち、マッチャとロイヤルが背中から降りてくる。



「あ、お帰り~。どこ行ってたの? あのね、雨が降るかもしれないから手伝って欲しかったんだ~」



 キイロを撫でながら戻ってきたメンバーに近付く。



「え? ボス、雨降らないの? さっき雷みたいな音が聞こえたのは違ったのかな?」


「フォーン」


「ん……? …………もう1回言って? ボスが何だって?」


「フォーン」


「はいはい、ボスが怒って――」


「キュッ」


「ふんふん、どかんとやったと――」


「ぴちゅ」


「…………ごめん。ちょっと意味がわからないかな?」



 みんなから聞き取れたのは、ボスとみんなが怒ってどかんとやってこらしめてやったという事だ。

 怒る理由が分からずボスの方を見ると詳細に説明してくれた。



「うん、返事はさっき送り返したね。――ふ~ん、お互い話し合いをしようって事ね。教科書に載ってるなんとか会談とか呼ばれそうなやつか~。――ミナリームの人は感じ悪い人だったのか……。まあ予想通りだよね。はいはい、そこで私の事も言ってたの? 陰口はどの世界でもあるよね~。しょうがな――――え? 雷!? そんな事してたの!?」



 ボスの説明をまとめると、『はるの悪口を言ったミナリームの船を痛めつけてきました(雷)』という事だった。



「痛めつける……? というか雷って……」


「ぴちゅ」

「フォーン」

「キュッ」


「全員無事って……それは良かっ……いやいやいや! 良くないよ!」



 危うく納得しそうになったがそういう問題ではない。



「今どうなってるの!?」



 みんなが言うには、海に飛び込んで難を逃れたミナリームの人達はボスの力で泳いで逃げる事も出来ずに海に浮かんでいるらしい。

 クダヤとユラーハンの人達も身動きが取れないようで、ただただ神の怒りだと震えているようだ。

 それもこれもボスがレベルアップした事により、意識すれば離れた場所の詳しい会話の内容まで分かるようになった為起こったようだった。プライバシーゼロ能力。




「あのね………やっぱいいや……」



 こんな事しないでと言いそうになったが止めた。アルバートさんをつつくのを止めてね、とかなら言えるのだが、今回はみんなが本気で怒っているように見えたからだ。

 私は好意でこの島に滞在させてもらっている立場だし、もともとみんなにとっては人間なんてどうでもいい存在なのだろう。それを私の願いを聞いて誰も死なせない様にしてくれたのだ。



「まだミナリームを許せない?」



 そうみんなに問いかけると、まあまあすっきりしたと返事が返ってきた。



「そっか。私の為に怒ってくれたんだよね。でも今度からそういう時は教えてもらっていい? 自分で懲らしめてやりたいから」



 実際は自分で懲らしめたりしないが、こう言っておけばみんなが独断で懲らしめる事はないだろう。



「とりあえずフォローでもしようかな? フォローしてもいい? また朝から待機されてもあれだからね? しばらくは島に来ないしね? 今のうちにね?」



 精いっぱい可愛い角度(自分基準)でみんなにお願いしてみる。うっとうしくてごめんとは思っている。

 その私のお願いにみんなは、しょうがねえなという感じで許可を出してくれた。



「ありがとね! じゃあカセルさんとアルバートさんを呼ぼうかな……いや、もうこっちから行こう」



 結構な大事になっているようなので自分の目で確認をしたいし、彼らも直接話した方が納得するだろう。



「戻ってきたばっかりで悪いんだけどもう1回連れて行ってくれる?」


「キャン!」


「いやダクスは……そっか。透明化できるのか。じゃあみんな透明化でついてきてくれる? ボスの背中で支えてもらえると嬉しい。ダクスもね」



 今度のお願いはすぐ許可が下りた。まあそうだよね。

 さっそくボスの背中に乗り込む。



「じゃあ行こうか。準備があるからひとまず洞窟にお願い。――チカチカさん、神の信徒アピールしてきますね」



 高速チカチカ点滅に見送られながらボスはテラスから飛び立った。





 あっという間に砂浜に到着。そのまま洞窟に走りこみ、高級そうな布を物色する。

 良さそうな布が見つかったので、その辺のナイフで手早く希望の大きさにカット。



「厳かな御使い感出てる?」



 カットした布を口元に巻き、頭からすっぽりと体が隠れるものを羽織る。イメージはアラビアンな世界だ。

 さらに布を止められそうな装飾品をいくつか探して留めてみる。

 みんなはそれらしさが出ていると褒めてくれたので、最初の出会いからからこうすれば良かったかもしれない。動きにくいけど。



 そしていよいよ街の人達の所に向かう。

 ボスが島の木々より高く飛んだところで、海にぽつぽつと船が浮かんでいるのが目に入った。



「……煙出てない?」


「キュッ」


「……消火してくれたんだ。すごいね……」



 どうやらボスの雷で火が付いたのをロイヤルとボスがちょこちょこ消化してくれたようだ。

 ……こういうのも自作自演っていうのかな。



「ねえ。雷って近くにいる人も危ないと思うんだけど大丈夫なの?」



 今さらな事を質問すると、制御したから大丈夫と答えが返ってきた。

 深くは考えない事にする。ボスは凄いという事だけわかっていれば問題はない。





 船が集まっている場所に近付くにつれ、痛めつけたという船の惨状に少し驚く。


 黒くなっている箇所は火がついたのがわかるし、船の一部分が破損している所も多々見られる。

 何かをぶつけたような大きな丸い穴も開いているのが目に入ったので、目の部分だけ見えているマッチャをそっと見ると、優しく見つめ返してくれた。

 石を持って行ったのね……。


 少し先の港には、大勢の人が詰めかけている様子も見て取れた。

 そして、海上にいる人達がこちらを見上げているその中に、赤い髪をした人物を発見した。



「あれカセルさんだよね? ひとまずそこにお願い。じゃみんな全透明化で」



 そのまま緩やかに下降し始めるボス。

 顔が見える距離まで近付くと赤い髪はカセルさんで間違いなかったのだが、その周りに以前対面したお偉い人達も勢ぞろいしている。あの1番偉い人ももちろんいて、みんなで誰かを囲んでいるようだった。


 さらに船の周りにはたくさんの人が浮かんでおりこちらを驚愕の表情で見つめていた。

 しかしなんでアルバートさんはカセルさんの服を後ろから引っ張りながらこちらを凝視しているんだろうか。



「ボス、この船以外の周りの人達を声が聞こえないところまで遠ざけられる?」



 大丈夫だとは思うが、声を覚えられたら面倒なので離れてもらう。

 船が突然動きだした事によりこれまで静かだった人達が騒ぎ始めたが、その声も急速に遠ざかってゆく。

 それと同時に白く霧も立ち込めてきたので、ボスのムード作りのタイミングの良さに感心する。



 場面設定が整ったので改めて視線をカセルさん達に向けると、彼らは一斉にこちらに向かってひれ伏した。

 ひれ伏した事により囲まれていた人物が良く見えるようになったが、見た事の無い男性で彼だけはひれ伏す事も忘れるくらい驚いている様子だ。



 あの感じ、腰が抜けていてもおかしくはない。私も以前ああなった。




「…………大切なお話の最中失礼しますね」



 顔を上げて下さいと言いたい所をぐっとこらえて厳かな御使い感を維持する。空中に浮いてる様に見えるだろうからそこそこ厳かさは出てると思う。

 雷で攻撃された以上話どころじゃないだろうが他に良い言葉が思い付かない。



「この中でミナリームの方はどなたですか」



 そう声を掛けた途端どこからか悲鳴が聞こえた。


 声のした方に顔を向けると、若い男性が顔面蒼白になりながらこちらを見ていた。

 私が見つめているのに気付いた彼は物凄くどもりながら謝罪してきた。



「も、申し訳ありません!! か、勝手に顔を上げてしまい……! 申し訳ありません! な、なにとぞご容赦を……!」



 この感じどっかで……?

 じっと見つめながら考え込んでいると、彼の声が泣きそうなものに変わってきた。



「あなたがミナリームの方ですか」



 ごめんよの意味も込めて優しい口調で確認する。



「は、はい……!」



 ひれ伏しながら答えるこの男性がミナリームの人だという事は判明したが、こんな場所で堂々と人を悪く言う人には思えない。



「あなたお1人ですか」



 そう聞くと彼は明らかに動揺した。



「あ……いえ…………! あの…………!」



 なんとも要領を得ない返事が返ってきたが、1人ではない事は伝わった。

 名乗り出ないという事はおそらくやましい事があるからに違いない。彼もそれがわかっていて伝えるのを躊躇していると推理した。

 とういう事は、みんなを怒らせた原因をつくったのは名乗り出ない人物という事になる。

 頑張れ私の脳細胞。



 何となくみんなの立ち位置から予想はできたので、その人物の方にさらに近寄ってもらう。

 ――その時ダクスが重低音で唸り始めた。



「「ひっ……」」



 2方向から重なる悲鳴。






 ……なるほど。さっきの違和感の正体はこれか。







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