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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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レディースエーンジェントルメン

 



 忙しいわ~とジェスチャーごっこをしていると、みんなが突然虹色の光に包まれた。



「うわっ!」



 ついついみんなと距離をとってしまう。無意識の反応なんだ……、ごめん。

 しかし、みんなは光りながらも楽しそうにはしゃいでいる。



「大丈夫なのね……。あ! もしかして条件クリアなんじゃ!?」



 そう思いつくと居ても立っても居られず、ボスの背中に乗って大急ぎで家に戻る事にした。







「ただいま~! チカチカさん!」



 大騒ぎしながら家に駆けこむと、室内も虹色に輝いていた。



「おお……! ストーリが進展しそうな感じ! 透明化ですか!? それともチカチカさん対話!?」


 チッカチカ!


「どっちだろう! わからん!」



 謎のテンションで大騒ぎしていると、目を開けていられない程の強い光が部屋中を覆った。



「おお…………!?」



 咄嗟に目を閉じ手の平で目を覆う。

 そのまましばらく身動きせずにいるとみんなのはしゃぐ声が聞こえてきた。

 恐る恐る目を開けると、みんなの足元が透明に――――。



「……え? 透明化ってゆうれい方式なの……?」


「キャン!」


「うん、見てるけど――すご!」



 見て見てとご機嫌なダクス。その足元の透明な部分が徐々に増えていき、最終的に姿が消えた。

 周りを見ると、みんなそれぞれ透明な部分を増やしたり減らしたりしながら遊んでいた。



「自由自在に操れちゃうんだ……。すごいね」



 さすがは神の島の住人、何もかもがハイスペック。



「チカチカさんありがとうございます! みんなもおめでと~!」



 1人1人に抱き着いて頬ずりをする。最後は壁に頬ずりして完了だ。



「チカチカさんと話せるのはまだ先ですかね?」


 チカチカ!


「よし、頑張るぞ」


 チカチカ!




 このふつふつと沸き起こっているやる気をどうしよう。

 何かやりたい。このやる気を発散させたい。何か――。



「――かくれんぼって知ってる?」



 やる気の方向性が定まった。



「変則なんだけどみんなは透明になって家のどこかに隠れてね。それを私が見つけるから。あ、ボスは見つかった人を見張る役をお願い」



 みんなは予想通りやる気に満ち溢れているので、さっそくかくれんぼを始める事にする。



「30秒数えたら探し始めるからそれまでに隠れてね」



 キッチンの椅子に座り、目を閉じて大きな声でカウントを始める。

 大きな家を丸ごと使ってのかくれんぼって贅沢。かくれんぼというか、隠れられる所が少ないのでしらみつぶしに手さぐりすれば最終的にみんな見つかってしまうけどね。




「さーんじゅーもういいよ~」



 独り言としては恥ずかしいセリフを言いながら、まずはしゃがみながら手で床の辺りを確認する。

 こじんまり組を蹴飛ばしてしまうのを防止する為だ。


 しかし、細かい配慮を見せるも1階には誰もいなかった。鬼の近くからなるべく遠ざかるという素人の隠れ方だな。

 ふふふ、まあ初かくれだろうししょがないか。ふふふ。


 階段をのぼって先に吹き抜け部分をチェックするが、そこにも誰もいなかった。



「あれ? もうベッドルームしか残ってないけど……」



 疑問に思いながらもみんなの部屋の扉を開ける。

 見慣れた光景が広がるかと思いきや、そこには体育館のような広さの空間が広がっていた。



「でかっ!」



 私の叫び声が広い空間に響き渡る。



「広いでかい大きい……。そっか、そうだよね。こっちもクリアしててもおかしくないもんね……」



 予想外の大きさに度肝を抜かれながら部屋を見回していると、大きさは変わらないテラスへの出入り口からボスが入ってきた。

 その光景に思わず2度見する。



「えっ? ……いやいや、ボス……。え? それ、どうなってるの……?」



 まるで壁をすり抜けてきたかのような現れ方。



「……え? まじか」



 まるでじゃなくて壁をすり抜けたと教えてもらった。

 そして半分だけ体を部屋に入れたり、尻尾をひゅんひゅんと出し入れする様を見せてくれる。



「ほう……。みんなは透明化だからもともと出来たボスはさらに上の段階と……」



 ゆうれい方式だと思ったのもあながち間違ってなかったという事実。

 そうだよね。動物、物体としてみんなを見るから違和感があるけど、エネルギー体として考えればおかしい事なんて何もないよね。偉い学者さんがそんな事を言ってたような気がする。

 よくわからないがとにかく、今の私は頭が良さそうな感じが出ている事は確かだ。



「チカチカさんは相変わらずすごいですね。驚きました」



 天窓になっている天井を見上げてそう話しかけると、部屋全体が虹色に点滅した。



「眩しっ」



 まるで劇場のような音響効果。音は無いけど。

 壁をスクリーンにして映画を見て見たいものだ。



「家具も追加されて……ますね」


 チカチカ!


「ありがとうございます!」



 わくわくしながら隣の部屋に向かう。ここから見える限りでは繋がっている部分の広さは変わっている様子は無い。そして、大きなベッドが見えている。ほんとこの巨木は摩訶不思議空間だ。



「この広さからみんなを探すのか~……」



 自分の部屋に向かっている途中でついつい弱音を吐いてしまう。

 部屋を歩き回ればいいだけなのだが、その歩き回るのが若干めんどくさくなってきている。

 肩を落としながら歩いていると、後方からチャッチャッチャッという音が聞こえてきた。


「んん~?」



 くるりと後ろを振り向くと音は止む。きょろきょろ辺りを見渡すが、もちろんボスの姿しか目に入らない。

 その時、ばさばさという音と共にやさしい風がこちらに向かって吹いてきた。



「……………」



 無言で両手を床に向かって伸ばし左右に少し動かしてみると、明らかに何かが向こうから手に触れてきた。

 さわさわと手さぐりでその物体の表面を触る。



「羽があって角があるから……キイロかな? キイロちゃんみーっけー」


「ぴちゅ!」



 羽を広げたポーズと共に姿を現すキイロ。



「……うわーやったー」



 複雑な気持ちで喜んでいると、視界の隅の何もない空中に火花が噴き出しているのが見えた。

 もちろん無言で近付いて行き、そのあたりの何かを触りまくる。



「……エンみーっけー」


「クー」



 見つかっちゃった~とエンは顔を寄せてくる。

 何とも言えない気持ちのままエンを撫でる。



 その後も、歩いているとばさばさという音と共に何かがが足にぶつかったり、収納付きベッドに進化した布団がこんもりと丸く盛り上がっていたり、追加されたソファーで休んでいると何かが膝の上にそっと乗ってきたり、壁からコンコンと音が聞こえてきたので触ってみるともふもふの何かが壁にしがみついていたりした。


 子供相手以外にもかくれんぼの接待プレイがある事を知った。



「みんなみつけたぞー」



 切なさを隠し楽しさを強調する。

 できる面々は恥ずかしポーズで楽しそうにしている。



「なんかありがとね……」



 みんなに抱き着きながらお礼を言う。今日は頬ずりし過ぎてちょっと痛い。



 かくれんぼもひと段落、テーブルも作ってもらったしお昼はここでとる事にする。

 はるは休んでててと言われたので、お言葉に甘えて休む。遠慮なんてしない。



「おお~。ベッドもちゃんと干せる仕様になってる~」



 休みながらも追加された家具のチェックは怠らない。

 チカチカさんには、通販雑誌に載っているようなその場で布団干しが楽にできる構造のベッドをお願いしてあったのだ。


 収納付きのキングサイズのベッドが1台こちらの部屋にあり、それにくっつく形で同じものがみんなの部屋側にも並べて置いてある。まるでひとつの大きなベッドのようだ。

 歩いて行き来もできるようにスペースも確保されているのが気が利く。気遣いはできるんだよ、チカチカさんは。



 その後はごろごろしながら食事が用意されるのを待ちみんなでご飯を食べ、部屋の扉を手形足形でデコり、またごろごろした。



 書簡の件はもうすっかり頭からとんでいた。





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