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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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忙しいわ~寝てないわ~

 






「うおっ…………重い……」



 胸の上に乗ってきたダクスを布団の上にずり落とす。



「今何時だろ…………あれ? 光ってる?」



 眠気は残っているが、しっかり目を開けて見ると白い光に包まれているのがわかった。



「キャン!」


「あー、それで起こしてくれたんだ。ありがと」



 お礼を言いながらダクスを抱き上げる。



「たくさんエネルギーが集まってるみたいだね。一般公開が始まったんだ~」



 欠伸をしながらテラスに目を向けると、昼くらいの明るさだった。



「みんなの透明化はまだかー」



 そのみんなは布団の上でごろごろしている。良い光景だ。

 今日は起きるのが早かったので、朝ご飯を食べてすぐに寝直したのだ。

 結構しっかり寝てたみたいだな。



「これから何しようかな――――おお! ついにきた!?」



 みんなの所に這い寄って毛並みを堪能しているとボスから報告が。



「どこの国かな~。隣国のミナなんとかって国かな?」



 ころがりながらボスに色々と質問をする。



「はいはい……、とりあえず物だけ持ってきてくれたのね。ありがと」



 クダヤ以外にこちらに接触してきたのはやはり隣国の船という事だった。

 当初人も乗り込んでいたので、クダヤの警戒中の船が近付いて行き少し揉めた様だ。

 忠告され渋々船を別にしたところをボスが贈り物だけを持ってきたと。



「あ、運んでくれなくても大丈夫。砂浜まで行くから。ありがと」



 ボスの口周りのウロコをかりっと噛んで感謝の気持ちを伝える。

 さっそく確認に行こう。


 水を飲みながら、テラスでふるふると体を振って毛づくろいしているエンに話しかける。



「エン、エンに乗ったままテラスの階段を駆け下りるアクロバティック歴史再現をしてみたいんだけど負担になる?」


「クー」


「よし。じゃあ準備するから待ってて」



 いそいそと腰ベルトを装着し、虹色ナイフをセットする。

 バスケットなどのお出掛けグッズはいつものようにマッチャが持ってくれているので安心だ。


 チカチカさんに挨拶をしてテラスに出ると、エンの背中にこじんまり組が乗っていた。

 エンとナナが手助けしたんだろうな……。



「キイロは問題ないんだけど、ダクスとロイヤルはどうやって掴まるの? 私は自分で手いっぱいになると思う……」


「キャン」

「キュッ」


「エンにしがみつく私にしがみつくと。……服、破らないでね」



 楽しそうな2人を止めるのもあれなので、しがみつく戦法で駆け下りる事にした。

 大した高さはないが試しとしては最適な高さだろう。


 エンに跨って角をしっかりつかみ、乗馬スタイルを参考にする。



「よし。じゃあお願いし――じゃないや、お願い致す」



 その言葉でエンは階段に向かって駆け始めた。

 階段が近付き、上下の揺れに備えるべく体をかがめる。ダクスとロイヤルがお腹でつぶされる形になっているが我慢して欲しい。


 しかし、階段を降りる、と思った瞬間エンが華麗にジャンプした。



「え…………!?」



 そして感じる浮遊感。



(お腹がひゃってなる……!)



 咄嗟に目をつむり、さらに体を縮める。みんなが楽しそうな声を上げているのが聞こえる。

 そして衝撃と共に華麗に(たぶん)地面に降り立つエン。



「クー!」


「……そうね、このままアクロバティック走行で……」



 楽しそうなエンの提案で砂浜まで引き続きのアクロバティック。

 どうにか目を開けていられるが、エンは盛り上がっている木の根を苦も無くひょいひょいと軽やかに飛び越えて行く。


 マッチャは木の枝をつたい、ナナは普通にエンの後を並走している。

 とんでもないところに登って降りられなくなった動物動画を思い出し、自分の知っている動物とは違うという事を改めて実感した。












 ややぐったりとしながらもあっという間に砂浜に到着。

 明るい日差しの下でのタツフグジャンピングが目に眩しい。



「ありがと……。この船ね」



 ふらふらと小舟に近付く。

 小舟は、良く言えば実用性の高そうな、特に派手さのない素朴なものだった。

 船の中央にはこれまた木箱より少しグレードが高めの素朴な箱が置いてあり、その前にちょこんと小さな箱が置かれていた。小さな箱を開けると、中には紙が巻かれたものが――。



「おお~。これぞまさしく書簡なるもの!」



 イメージ通りの手紙に嬉しくなる。さっそく開いて中を読んでみる事に。





「――――――読みにくっ」



 書かれてある言葉が難しい上に丁寧過ぎて、むしろ慇懃無礼に感じられる。



「すごいわ~。丁寧に見せかけてるけど偉そうな感じは隠せてないっていう」



 この手紙だけでも隣国、ミナリームという国がなんとなくわかった。

 国のトップの意向ではなく内容を考えた人が偉そうなだけかもしれないが、そんな人を担当として任命し、この文章で許可を出してるという事はあながち間違いでもないだろう。

 そりゃカセルさんの顔もあんな感じになるはずだ。



「フォーン」


「んー? えーっと、まとめると神へのご挨拶が遅れたのはクダヤの人達のせいで、自分達にもお宝ちょうだいなって感じ?」


「ぴちゅ」


「ん~そうね。ぶっ飛ばしまではいかなくても困ったちゃんだよね」



 どうしたもんかと考えていると、みんなが何やらウォームアップのような動きをし始めた。



「……ちょっと待って。確かにぶっ飛ばしまではいかないって言ったけど、それ以下の事をやるって意味じゃないからね?」



 そう説明すると残念そうな声をあげる面々。


 意外と全員が武闘派なんだよな。しかし、最悪ボスだけで隣国を制圧できそうではある。

 ダクスは……うん、何度も言うが可愛さ担当で。



「あ~どうするかな~。正直この国にものをあげたくないんだよね~」



 ボスの前脚に座りながら悩む。



「コフッ」


「それだとクダヤだけ特別扱いじゃない?」


「キャン」


「……そうだったわ。緩い感じでやって大丈夫だったわ」



 悩む必要なんて無かった。好きなようにすればいい。



「決めた。その箱は受け取らずに送り返して、手紙でも添えとこう」



 クダヤからは長年の貢物の実績が――とか書いておけばいいだろう。



「ボス、この船は次クダヤの人達に会うまで保留で! 手紙を書いてもらわないといけないし」


「フォーン」


「じゃあ、生ものがないかだけちょっと確認しておこうかな」



 すでにキイロとロイヤルがくちばしでコンコンやっているが、改めて木箱を確認する。

 蓋を開けると、そこには綺麗な洋服やアクセサリーがたくさん詰まっていた。

 女性の装飾品を贈ってくれたみたいだ。



「神の御使いは女性だっていう情報はちゃんと知ってるんだ。ならボスの怖さも知ってるはずなんだけどな~。この手紙はなんなんだろうね?」



 ねーとみんなで首を傾げ合う。その時、シャララとレベルアップの音が聞こえた。



「やった! レベルアップ! 透明化は? ……そっか、まだか。でも近付いたね~」



 いちおうみんなとハイタッチを交わしておく。早く街に一緒に行きたい。



「さらなるレベルアップとエネルギー集めか~。……もうミナリームからは集めなくていいや」



 チカチカさんも現地人とは程々に関わる推奨だったし。

 エネルギー集めが終盤になったらプチ旅行でミナリームに行けばファンタジー生活も満喫したと言えるだろう。



「じゃあ帰ろっか。今回のレベルアップでリフォーム分が満たされてるといいな~」



 朝食時に部屋の拡張と家具作成をお願いしたところ、一気に完成させるにはレベルアップが足りず、急ぎの要望でもないので次回のレベルアップを待つ方を選んだのだ。



「ちょうどいいからさ、タツフグの虹色ラメで部屋の扉に絵でも描こうか」



 みんなは大賛成。いそいそと洞窟にカップを取りに向かおうとした時、ボスから呼び止められた。



「……また? えーどこだろ。大丈夫かな……」



 なんとクダヤ以外の国からまた船が送られてきているらしい。重なる時は重なるものだ。

 しかし、まだ地図をもらっていないのでどの辺りの国か見当もつかない。



「ユラーハン? 聞いた事ある様な無い様な……。まあいっか!」



 ボスにお願いして船を届けてもらう。こっちはその間にインク採集だ。


 タツフグがカップにきらきらしているインクを吐き出すのを楽しんで見ていると、ミナリームと似たような小舟が島に入ってきた。



「同じタイプか~」



 豪華な船を寄越して欲しい訳ではないが、ミナリームのこちらを見下している感じがありありと伝わってくる船に似ているので少し気になったのだ。手紙を読んだ後だから余計そう思うのかもしれない。

 普通、使者は自国の豊かさを強調する為にある程度は豪華な装いをするものだと思っていたのだが……。


 砂浜に到着した小舟の中には、小さな箱がポツンと置かれてあった。



「贈り物がないパターンかな――――長っ!」



 中に入っていた書簡らしきものを取ってさっと開いてみると、巻かれていた紙が思いのほか長く、いつまでたっても端にたどり着かない。全然さっとじゃない。



「思ってたタイプと違うかも……。あ、ナナちょっと背中貸して」



 ナナの背中を使って一気に書簡を開く。

 紙はころころと転がり、ナナの甲羅の端でちょうど止まった。



「長いな。何が書かれてるんだろ……」



 偉そうな文面が並んでませんようにと、恐る恐る読み進める。




「おお~」



 ついつい感嘆の声が漏れる。



「この国の人めちゃくちゃ正直なんですけど!」



 書簡には、初めは神の力を実感できず様子見をしていた事。そして、様子見だったので大した貢物も船も用意できていないが、神の力をこの目で見て取り急ぎ連絡を取る事にした旨が謝罪の言葉と共に書かれれていた。


 さらに、図々しいのは承知の上でどうすればクダヤのように素晴らしい神の持ち物を頂けるのか、国は海沿いなので海産物が名物なのだが、クダヤと同じようなものでお喜びいただけるのか不安であるというような事も書かれている。



「国の思惑とか大丈夫なのかな? 内情が漏れまくってるけど……」



 こっちが心配になるくらいありのままの現状を書簡にしたためてきたユラーハンという国。国というかこの手紙を書いてきた人は上からお叱りを受けたりしないんだろうか。

 色んな意味で心配だが、気になる国だ。



「ユラーハンって国、嫌いじゃないな。こっちも返答は正直に書こうかな」



 神の島の対応の責任者に会ってみたいものだ。一般人としてだが……。

 今度街に行った時に聞いてみるか。


 その時、体が白い光に包まれレベルアップの音まで聞こえてきた。



「あ~重なるな~。2つの国に手紙書いてもらって~部屋の扉もカスタマイズしなきゃだし~やる事たくさんあるわ~」



 おでこをパシパシしながら困った風を装っていると、みんなも顔をパシパシし始めた。



 忙しいわ~。






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