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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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九つ子コーデ

 



 突然の鳴き声に街の人が一斉に息をひそめた……、気がする。


 気持ちは分かる。私も息をひそめてやり過ごしたい。




「キャン!」



 ……無理だった。


 マッチャがダクスをぐいっと引き寄せて宥めるように抱っこしてくれたのが分かったのでマッチャに任せる事にした。

 街の人からは布が布を引き寄せていてよくわからないと思う。



「ぴちゅぴちゅ」



 まだこっちの対応が残っていた。



「(お揃いにしたいの?)」



 小声で確認する。



「キュッ」



 ロイヤルも私の膝の上に乗って若干小声で答える。



「(つけるの? 飛んだり泳いだりする時に邪魔になると思うんだけど……)」


「ぴちゅ」

「キュッ」


「(外せばいい……、まあそうだけどさー)」



 3人はお揃いコーデにしたがっているのはわかった。

 大きい組にも意見を聞こうと立ち上がり街の人に声を掛けた。



「少々お待ちください」



 突然立ち上がった私に街の人の視線が集中しているのが分かる。

 しかし、間にキイロとロイヤルが入ってまた羽バサバサ威嚇をしだした。


 こうなるきっかけは2人にもあるとは思っている。が、守ってくれてどうも。



 船の方に体を向けると近付いてきたので乗り移る。



「キャン」


「(うん、ダクスはお揃い派なのは知ってる。みんなはどう? ダクスは尻尾ストップね)」


「クー」

「フォーン」

「コフッ」


「(私は困らないんだけどみんなの邪魔になると思ったんだよね。エンの場合は火で燃えちゃいそうだし)」


「クー」


「(……そうだよね。外せばいいって……、ごもっともって感じ)」



 みんなお揃いコーデに興味があるみたいだ。



「(ボスはアクセサリーとかどう?)」



 そう聞くと結びつけるものなら壊れずにつけられそうと返事が返ってきた。

 意外とみんな乗り気。


 よし、みんなの分も作ってもらおう。



「カセルさん、アルバートさん、絵を描くことができる道具は持っていますか?」


「……申し訳ありません。準備致しておりません」



 突然の質問にも慌てず返答するカセルさん。



「お気になさらずに。……私が使ってる紙とペン取ってこれそう?」



 後半はキイロに向けて話しかける。



「ぴちゅ!」



 すぐさま飛び立つキイロ。



「お待たせしました。――サムさん、先程の装飾品に関してなのですが全部で9つ作成していただけませんか」


「は、はい」


「すべて基本的には同じ形でお願いします。しっかり固定ができて丈夫なものは可能ですか? そのまま泳いだりもできれば理想的なんですが……」


「そうですね……。水の族長がつけている手首の装飾品の様にでしたら可能です」


 そうサムさんが言うとリレマシフさんはばっと両手を上に上げて見せてくれた。



(見えない……)



「リレマシフさん、申し訳ないのですがそちらを外して見せていただく事はできますか」


「はい! もちろんでございます!」



 そのままむしり取る様な勢いで装飾品を外す。落ち着いて。



「ありがとうございます。私が乗っていた船に置いてください。……ロイヤルはこっち」



 そう伝えると船はリレマシフさん達の乗っている船に近付いて行く。



 膝に乗ってきたロイヤルを撫でまわしながら装飾品が届くのを待つ。

 戻ってきた船にはいくつか装飾品が置かれていた。



 カチッと外せるタイプの金属製のブレスレット、紐を編んだようなタイプのもの、石を連ねたタイプのもの。

 どれも綺麗だがみんなとお揃いにするなら編み込んであるタイプのものが良さそうに見えた。

 リボン結びすれば絶対可愛い。



「ではこちらの編んでいるものでお願いします。リレマシフさんありがとうございました」



 そう伝えて装飾品を返す。



「色や編み込まれているものの種類ですが――」



 そう続けようとした時にキイロが戻ってきた。



「ありがと」



 キイロを撫でて紙とペンを受け取る。



「では、……アルバートさん。その船に乗っていただけますか」


「えっ? はいっ。あの……、私1人で大丈夫でしょうか……」


「大丈夫です。書き留めてもらうだけですから」



 教師をしているアルバートさんなら適任だと思ったのだ。

 こっちを凝視もしてこないだろうし。



「早く乗れよ」



 カセルさんに押されているアルバートさん。

 恐る恐る船に乗り込みこちらに向かってくる。

 なんかすまん。



 そして、こちらの船に横付けされたと同時にキイロとロイヤルが乗り込み近距離威嚇を始めた。



「やめなさい。……失礼ました」


「いっいえ! 私は平気ですので!」



 良い人の見本みたいな人だな……。

 紙とペンをアルバートさんに渡そうとするとキイロがくわえてそのままアルバートさんにぶつかっていった。



「ひぃっ!」

「!? キイロ!」

「アルバート!」



 そのままよろめくアルバートさん。

 そのまま悪びれもせず戻ってくるキイロ。



「「…………」」




「……ほんとすみません」


「い、いえ……! 何ともありませんし、筆記具を届けていただきましたし!」



 そう言って慌てて書き留める準備をするアルバートさん。

 カセルさんにも大丈夫だと伝えている。




「……キイロ」


「ぴちゅ」


「アルバートさんは安全だから」


「ぴちゅ!」

「キュッ!」


「……分かった。でも何もしていない人にぶつかったりするのは無し」



 そう言うと2人ともしぶしぶ大人しくなった。

 いくら私の護衛とはいえこのペアは本当に油断ならない。



「皆さんもお騒がせしました。――ではアルバートさんお願いします」


「は、はい」


「では代表者の一族、住民ごとに色や編み込む素材を考えてください。サムさんの一族はとても忙しくなってしまうと思うのですが……」


「誠に光栄でございます」



 そう誇らしげに答えるサムさん。

 出来る男の匂いがする。


 その他の代表者も快く引き受けてくれた。

 でも、ガルさんとリレマシフさんはちょっと興奮しすぎじゃないかな。



「よろしくお願いしますね。……ちょうど9人いらっしゃるのでサンリエルさん、カセルさん、アルバートさんもそれぞれ残りの3つの装飾品について考えてみますか?」



 そう提案してみるとサンリエルさんは即答だったが残りの2人は少し困っている様子だった。



「私は女性の装飾品について詳しくないのでヤマ・ブランケット様のお気に召すものが――」

「私が3つ分の担当を致します」


 そうカセルさんの言葉にかぶせるように発言してきたのはサンリエルさんだった。



「……大変ではありませんか?」


「いいえ。私は水・風・理の3つの力をお与え頂いておりますので適任だと思います」



 ……お、おう。

 この人さっきから積極的すぎるんだけど……。



「アルバートさんは……?」



 隣にいるアルバートさんに確認を取る。



「私もそういうものはよくわかりませんので領主様にお任せしたいと……」



 そうだよね。こんな中自分で選びたいとか言い出せないよね。相手は領主だし。

 でもどこかほっとした様子に感じられるのはなんでだ



「では、サンリエルさんは3つ分の担当をお願いしますね」


「喜んでお受けさせていただきます」



 淡々とした口調なんだけど……、ものすごく見てくるのは変わりないな。




 次に、それぞれみんなのサイズを考慮してどの一族に担当してもらおうかと考えている時不思議な事実に気付いた。



(地の一族は地ってくらいだからエンで……。なら水はロイヤルでしょ? で、キイロは風……、あれ? マッチャは力がつよい……、技の一族。 じゃあナナは神の力を高度に利用できるから理の一族か……?)



 なぜだかうまくピースがはまったかの様にそれぞれの一族に当てはまった。



(でも、ダクスとボスは……)



 そう考えたところで2人の紋様だけがみんなとは違う部分に刻まれていたことを思い出した。

 そう、左足首と左胸にその紋様はある。





「あの……」


 知らない間に考え込んでしまっていたのだろう、無言のままのこちらを気にしてアルバートさんが声を掛けてきた。



「……ああ、すみません。……ええと、紙を見せてもらえますか」



 そう言いながらカセルさんの乗っている船に乗り込む。



「えっ? あのっ、はい……」



 何やら後ずさりされたが気にしない。

 差し出された紙を受け取ろうとすると今度はロイヤルが間に入ってきた。



「キュッ!」



 紙を口でくわえ、方向転換する際に羽をアルバートさんにぶつけるロイヤル。

 本人はさりげなさを装っているつもりだろうが確実に当てにいったのがわかる。



「…………」



 じっとロイヤルを見つめるが悪びれた様子もなく誇らしげに紙を差し出してくる。



「あ、あの、すみません! 手がぶつかってしまいました……!」



 なぜかロイヤルをかばっているアルバートさん。

 この人ストレスとか大丈夫なんだろうかと心配になった。

 こういう人にはぜひとも幸せになって欲しい。



「ありがとうございます……」



 二重の意味を込めてお礼を言う。



「――ここにそれぞれの一族を書いてもらえますか。――ええ、そうです」



 アルバートさんに近寄り紙を指差しながら説明する。



「地の一族はこのくらいの長さのものを作っていただいて――。ああ、いいですお気になさらずに」



 とうとうアルバートさんの頭の上にキイロ、ロイヤルが片足を膝にどかっと乗せるというゼロ距離威嚇を始めたが気にしないように伝え話を進める。

 手の甲の紋様が少し気になったがアルバートさん的にはそれどころじゃなさそうなので気にしない事にした。


 この近距離でも顔を見てこようとすらしないもんな。



「――それでこの装飾品にはこういう紋様を入れて欲しいのですが……」



 紋様ではなくカタカナだがここまでイニシャルから逃れられないのであればこちらからも向かって行こうと考えたのだ。

 それぞれの名前を装飾品に。お揃い感が出て良い。タツフグはずっと水中だからこれに関してはごめんね。



「技の一族であれば可能だとは思いますが……」



 自信なさそうに答えるカセルさん。



「キイロ、これをサムさんに……サムさんわかる?」


「ぴちゅ!」


「サムさん、紙に書いてある紋様を装飾品に入れる事はできるか確認してください」


「かしこまりました」



 キイロに紙を渡すと上空に飛び、サムさんの乗っている船に急降下していった。

 なんでわざわざ……。


 どんっと船に勇ましく着地しくわえていた紙をはらりと落とすキイロ。

 ごつい男性達はそんなキイロにひれ伏している。

 なんでだ。



 サムさんが紙を恭しく拾い上げ紋様を確認している間視線を感じたので隣の船を見ると、大きい組がものすごくアルバートさんを見ていた。


 みんなの目の色――特にナナの色は光の加減で様々に変わりとても綺麗なのだが、布の奥から覗いている光る何かは単純に恐ろしい。

 そしてマッチャは手に石を持っていた。




 アルバートさんが隣の船に視線を向けないようひたすら祈った。





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