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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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今からやろうと思ってました

視点戻ります。




 今日も素敵で楽しい1日が始まる。



 すっかり遅く起きるようなってしまった朝。

 みんなにあれこれと世話をやかれながら朝ご飯を食べる。


 街との交易を始めてから出前感覚で食事を注文しているので豪勢な食事が並ぶ。

 もちろんみんなの採ってきてくれた果実、野菜もきっちりいただく。


 好きな時に食べて遊んで寝て、なおかつ体型に変動がないというまさに夢のような生活だ。

 しかし愛と光のエネルギーに関しては、交易開始からは1回ピカッと白く光っただけでその後変化はない。



「そろそろ次の段階かな~」


 料理をむしゃむしゃと食べながら呟く。


 愛と光というくらいだから、まずは自分を楽しさで満たしてみたが、もう十分満たされてしまったようだ。



「街の人は相変わらず?」


 窓の外にいるボスに聞く。



「増えたの? ふ~ん」



 街の人はこちらからの注文を即座に受けられる万全のサポート体制をとってくれているのだが、昨日あたりから様子が変わってきている。

 どうも街とは違う国からも船が来てこちらを窺っているらしい。


 この辺の地理歴史を誰かに教えてもらいたい。この世界のテリトリーとかその辺がどうなってるのか知りたいのだ。


 今まで島の周りにいた街の船はそれらの船の近くに移動して警戒しているらしいので、仲が良いとは言えない関係性なんだろうとは思う。



「やっぱり対面イベントが手っ取り早いよな~」



 人見知りを発揮して先延ばしにしていたが、そろそろ重い腰を上げる時が来たようだ。

 欲しい情報も手に入るだろうし。



「今日は街の人と話してみる事にします!」



 後に引けないようにみんなの前で宣言する。



 チカチカさんは応援するように点滅してくれたが周りの挙動が少しおかしい。

 羽をばさばさしたり、床を前足でがりがりしたり――。



「えーっと、ボスとロイヤルは一緒についてきてもらって――」

「キャンキャンキャンキャン!」


「うるさっ! そして痛い!」



 足元で騒がしいのと、頭をつついてくるのと、つぶらな赤い瞳でこちらを見つめてくるのと。



「大勢でいくと街の人が怖がっちゃうからね。慣れたらみんなで一緒に対面しよう」



 納得したのかどうかは不明だが、とりあえず今は大人しくなってくれた。

 というかみんなは顔バレは気にしないの? いちおう神の島の住人なんですけど。




 朝ご飯をのんびり食べ、これまたのんびり対面の準備をする。

 準備が終わったところで話すことを簡単に書いてまとめておく。


 街の人達から絵の具のようなものが届いたり、最近の文房具事情は豪華になってきているのが嬉しい。



「まず交易のお礼かな~。で、この世界の事情が分かる本が欲しいな~。あとみんなのちゃんとした布団も欲しいね」



 布団の絵は2回描いて送ってみたがうまく伝わらないようで、洞窟にあった布をみんなの布団代わりにしている状態なのだ。


 布団の絵を送った後に贈られてきた棺のような箱の中に人間が入っていると教えられた事があり、怖くなって布団の絵は封印したという経緯がある。

 入っているのがわかるボスもすごいが、街の人の絵の解釈もすごい。



「あっそういや私の設定ってどうしましょうか」



 この世界の人間ではない、というところまでは説明はしなくていいしどういうスタンスで行こうか悩む。

 知識を蓄えたらひっそりばれないように街に上陸する予定なのでやっぱり人外っぽさを出しておいた方が良いのか?



「こういう感じでいってくれみたいなのありますか」



 …………



「そういや私が神様だと思われてるっぽいんですけど、チカチカさん的には問題ありますか」



 …………



「……ないんですか?」



 チカチカッ!




 チカチカさんは神様ポジで行け、な感じなのだろうか。

 でもいろいろと神ならではの質問をされても答えられない。

 <エスクベル>歴の浅さは誰にも負けない。


 それにめんどくさそうだ。

 どちらかと言うと5、6番手くらいの位置の方が好きなのだ。

 たいした責任が発生しないとも言うが。



「じゃ、街の人の真似して私も信徒ポジでいきますかね~。お仕えしております的な」



 そう決めるとチカチカさんは楽しそうに点滅してきた。

 それもおもしろそう! という吹き替えが勝手に脳内で再生される。


 ある程度のキャラ設定が出来たところでみんなを引き連れて家を出て砂浜に向かう。











 砂浜に到着すると、私達を見つけたタツフグが嬉しそうに海中から飛び跳ねていた。

 いつの間にか身体能力がアップしていたタツフグ。

 島に来てからそこまで日数が経過しているわけではないのに、島の力の凄さよ。


 まだ私とダクスにしか慣れないタツフグにご飯をあげ、洞窟の中から代金として色々と持ち出す。

 そうだ、鞄も注文しておこう。



「ボス、注文待ちの船はいる?」



 質問すると1艘だけいるらしいので、その船を砂浜の出入り口の近くまで連れてきてもらう事にした。

 島には入れたくないし私も島から遠く離れるのは不安なのだ。



「あっ、他の船からは見えないようにできるかな?」



 ボスがいれば人間は邪魔できないだろうがひっそりと少人数でやり取りしたい。

 ボスの返事は「もちろんできる」だった。よろしくお願いします。





 近くに連れてきたという報告を聞いて私も船に乗り込む。

 交易用として頼んだ船はやたら豪華だったが意外と乘り心地は良い。



「じゃあボスに、ロイヤルもお願いね」


「キュッ!」



 どぽんと海中に潜るロイヤル。


 残るみんなに手を振り、そのまま砂浜の出口に向かう船上で麦わら帽子に髪を入れ込み顔をしっかりと隠す。

 このくらいの目の粗さだったら内側から相手も確認できるだろう。


 いやあ緊張するなあとドキドキしていると、視界の隅に茶色い物体が映った。



「……?」



 不思議に思いそちらに振り向くと、船の後ろをこっそりとつけているみんなの姿が――。




「お、おう」



 いや、やけに大人しいとは思ったんだよ。でもみんなは基本的に私を甘やかしてくれるから言う事を聞いてくれると思ったのが間違っていたみたいだ。



「街の人にばれないようにね……」



 それしか言葉は出なかった。








 そしてついに島から初めて出る事に――。





 少し先にはボスが連れてきてくれた街の船が停泊しており、2人の人間が乗っていた。



(男性2人かな……? おお~、現地人だ~)



 内心の興奮は表に出さずに彼らの元へ船は近付いて行く。





 彼らの様子は実に正反対だった。


 茶色い髪をした1人は、目を見開いたまま動かない。

 もう1人の明るい赤毛――本当の赤に近い――の男性ははじめは驚いた顔でこちらを見たが、その後はキョロキョロと視線をあちこちに彷徨わせている。

 2人とも私より若い気がする。服装も<地球>さんが用意してくれた服から想像していたのとあまり変わらない。


 それにしても赤毛の男性は目が大きい。しかも耳が長く見える。



(エルフ……? いやでもちょっと違うような……)



 しばらく2人を観察していたが、何も言葉を掛けてこないのでこちらから声を掛ける事にした。




「あの……」


 言葉を発した途端、茶色の髪の男性はバッと頭を伏せた。

 その姿はまるで土下座をしているかのようで――。



「あの」



 ほんとに、あの、だよ!

 初対面で土下座てと思ったが、今の自分の設定は神に仕える信徒だったと思い出した。 



「頭を上げてください」



 まさかこんな有名なセリフを自分が言う羽目になるとは……。何様だと少し恥ずかしくなった。



 茶色の彼はそれでも頭を上げなかったが、赤毛の彼に促されてゆっくりと顔を上げた。

 視線は伏せたままだったけど。




「いつも、贈り物をありがとうございます」


 そう伝えると、彼らはどう答えていいのか困った様子を見せた。



「お願いしたい事があったので、ここまで来てもらいました」




「……何なりとお申し付けください」



 少しの間をおいて、そう答えたのは赤毛の彼だった。

 言葉通じてるよ! 理解できるよ!



「いくつかあるのですが……。まず、そちらの大陸の地図や歴史、暮らしが分かるような書物を用意していただきたいのと、眠る時の寝具をいくつか。あと鞄も用意して欲しいのですが」


「……承知いたしました。差支えなければ寝具と鞄はどの程度ご用意すれば良いかお聞かせ願えますでしょうか」



 どうやらこのやり取りは赤毛君が担当するようだ。



「寝具は5名分程度。鞄は2、3個お願いします。すぐ用意できるもので問題ありませんので」


「承知いたしました」





「それから――」



 話を続けようとしたら茶色の彼がビクッとしたのが目に入った。

 驚かせたみたいで申し訳ない。



「貴方達の住んでいる街についても折を見て教えていただきたいのですが……」



 この提案にはさすがに赤毛の彼も驚いたようだった。


 少し思案して提案してきた。



「この――失礼しました。私は“風”のカセルと申します。」

「ア、アルバートと申します!」



 自己紹介されてしまった。

 そういや信徒キャラの名前を決めるのを忘れていたが、どうしよう。



「私の一存では決められませんが……、このアルバートが教師の仕事をしておりますのでお役に立てるかとは思います」

 


 なんとなくこっちは名乗らなくても良さそうな雰囲気だったのでスルーする事にした。



 その指名を受けたアルバートさん。

 驚愕のあまり体が震えてしまっている。


 大声でカゼノカセルさんを問い詰めたい様子だったが、こちらを気にして言葉を飲み込んだようだ。

 周りの空気を読む人物と見た。



「そうですか。ではアルバート、カゼノカセルもよろしくお願いしますね」


 信徒感を出していちおう2人とも巻き込んでおいた。

 アルバートさんは少しほっとした顔をしていた。




 話が落ち着いたので、頼んだものの代金を渡そうと腰を浮かせて手を伸ばした時に少しふらついてしまった。

 彼らはとっさにこちらに手を――



「ぴーーーーーー!!」




「うわっ」

「ひい!」

「おっ」



 上空から突っ込んできたキイロと、海中から2人に大量の海水を浴びせたロイヤル。



「「…………」」



 2人は茫然と……いや1人は凝視してないか? 突然現れたキイロとロイヤルを見ている。



「……すみません。ちょっと誤解があったようでして……」



 口調では冷静さを保ちながらも内心は大慌てだ。



「彼らはふらついた私を助けてくれようとしただけ」



 そもそも手の届く距離にはいなかったよ、という気持を込めてキイロとロイヤルに説明する。



「ぴちゅ」

「キュッ」



 2人は納得したのかこちらの船に乗り込んできた。



(当たり前のように乗り込んできたな……)





 後ろは怖くて振り返れなかった。







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