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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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優しさにくるまれたなら

 




 料理を運んでくれた船を送り返し、家に荷物を運び入れる事にした。

 運び終わったらもう家を出ずにゆっくりしたい。



「のんびり運ぼうか」



 みんなにそう伝え荷物の移動を開始する。

 ボスには料理の入った箱を一足先に運んでもらい待っていてもらう。



 みんなとわいわい話しながら家に到着。



「ボスありがと~。マッチャ、またお皿を机の上に運んでくれる?」



 待っていてくれたボスにお礼を言い、バスケットを家の中に運び入れながら頼む。



 キッチンの作業スペースにバスケットを置きひと息つく。




「ふぅ。チカチカさん、初対面は先送りしちゃいました。私の絵で交易の意図はだいたい伝わってたようなので」


 そう報告すると、明るく点滅してくれた。相変わらず優しい。



 マッチャと手分けをして料理を運び、残った箱はみんなでずりずりと押してキッチンまで運んだ。

 この箱はキッチンに置いて食糧庫代わりにしよう。



「なんだか疲れちゃったな……」



 まだ家に持って来るものは洞窟に残っているが、精神的に今日は忙しい日だったのでもう動きたくない。



「みんな、私2階で休憩してるから自由に過ごしてて」


「キャン!」


「ダクスも休憩するかー。ごめん、ロイヤルお水出してもらっていい?」



 ダクスを持ち上げシンクで足を洗う。

 みんなも一緒についてくるようで、ダクスはナナが背中に乗せてくれた。

 いろんな事を後回しにして、重たい足を引きずるように2階に上がる。




 自分の部屋に到着し布団を取り込むためにテラスに出ると、テラスが隣のみんなの部屋まで繋がっていた。



「わっ! レベルアップだ……! チカチカさんありがとうございます!」



 次のレベルアップはどうしようかという会話を覚えててくれたんだろうな。すごいなあ。

 みんなもさっそくテラスに出てきて楽しそうにしている。



「ボスもテラスに来れる?」



 物干しざおを端に寄せてボスを呼んでみると、ふわっとテラスに降りてきた。



「おお~。これでみんなでごろごろできるね!」



 謎素材なだけあってボスの体重でもびくともしていない。さすがだ。

 せっかくなのでボスの傍に毛布を敷き、その上に布団を置く。



「ボスの影を日除けにさせてもらうね」



 そして布団に潜り込む。



「あーーーー、ふとんさいこーー」



 思っていたより疲れていたんだろう。布団の柔らかさが身に染みる。

 ダクスもナナの背中から飛び移ってもぐり込んできて、エンは傍で足を折り曲げて休んでいる。



「ぴちゅ!」

「キュッ!」



 テラスの隅っこが騒がしいのでそちらに視線を向けると、マッチャに抱きかかえられたロイヤルが空中に水を噴射し、それをキイロと共に浴びていた。



「何やってんの?」


「フォーン」


「洗ってるの? うん、乾いたらいいよ」



 どうもキイロとロイヤルが布団に入りたいが為に体を綺麗にしているらしい。



 今は2人ともナナの甲羅の上で体をブルブル震わせて水分を飛ばしている。そこで乾くの待つのね。

 マッチャとナナは面倒見がいいなあ。でもナナは怒ってもいいと思う。



「マッチャ、ナナありがとう。じゃあみんなおやすみ~。夕方くらいに起こしてもらえると助かる」



 そういって目を閉じるとすぐに眠気が――。こちらでは随分と寝つきが良くなったもんだ。












 ――フォーン



 ――コフッ




「………………おはよ……うわっキイロ近いよ……」



 マッチャとナナの声で目を覚まし、寝返りを打つとキイロが近距離でこちらを覗き込んできた。



「ぴちゅ」


「うん、おはよう」



 布団をめくって起き上がろうとすると、中にダクスとロイヤルが横たわっていた。



「……ロイヤルってそうやって寝るんだね」



 どうやって体を起こすんだろうと思っていたら、器用に両手の羽を使って起きていた。

 ……可動域とかどうなってんの?

 そしてダクスの顔の近くで羽をばさばさして起こしてくれる。それ助かる。



 起きてエンに寄りかかりながら少しまどろむ。

 空は陽が落ちてきて薄暗くなってきている。



「フォーン」

「コフッ」


「……えっ!? ほんと!? うわあ~ありがとう!」



 何という事だ。私が寝ている間に、2人で残りの荷物を家に運び入れてくれたらしい。

 学生の頃、朝起きて宿題が全部終わってたら素敵と誰しもが一度は考えたことがあるはずだ。

 このタイミングで実現するとは。


 2人にうっとしいくらい抱き着いて感謝していると、ボスから報告があった。



「また来たの?」



 なんと私が寝ている間にまた街の人が島にやってこようとしたらしい。

 そして新たな贈り物も――。



「たぶん、こっちが伝えたい事がはっきり分からないからもどかしいんだろうね。あー、贈り物どうするかなー。正直ちょっとめんどくさいなー」



 もう家と砂浜の往復は飽きた。

 エンに乗り上げるようにごろごろしていると、マッチャが確認してこようか? と聞いてきた。



「うーん……今日たくさん手助けしてもらったしなー。……暗くなってから見に行こうか。ナイトサファリ的なさ。ありがとね、マッチャ」



 夜の島は探索したことが無いので、一度確認しておいてもいいだろう。

 砂浜には夜行く事が決定したので、それまでキッチンで贈られてきたあれこれを試しのんびり過ごす事にした。



 1階におりて紅茶を作り、料理の残りをつまみながらさあお試し開始だ。



「この野菜っぽいの気になってたんだよね~」



 まず試してみるのは、いつもの小舟で運ばれてきたものだ。

 カリフラワーとブロッコリーを混ぜ合わせたようなもの、見た目は太くて短めの大根だけど感触は少し柔らかいもの、キウイの細かい毛が無くつるりとした見た目のものの、3種類ある。



 まずは食べやすそうなキウイもどきから。

 虹色ナイフで半分に切ってみると、中は薄い緑色をしていた。

 スプーンでくり抜くように食べてみる。



「……メロンっ!」



 爽やかな甘みのメロンそのものだった。そのままみんなと分け合いながらどんどんスプーンで食べ進めていく。



「メロンおいしー。これ無くなりそうになったら1個残して注文書と一緒に街に送ってもらおう。もっと欲しい」



 いつか生ハムメロンなるものを作ってみたい。



 そして次にブロッコリーとカリフラワー混ぜ合わせ野菜。

 ざっと洗って少しかじってみると、まんまブロッコリーだった。



「これはゆでてマヨネーズで食べたいな。街にマヨネーズあるかなあ?」



 こういう時に街に買い出しに行きたい気持ちが盛り上がってくる。

 ブロッコリーのレシピなんてシチューくらいしか思いつかないから選択肢は茹でる、の一択だが。



 最後に、大根もどき。

 端をナイフで切ってかじってみる。



「うえっ。これナスっぽい」



 生で食べるもんじゃないな。

 でもナスがあるならナス田楽が食べたい。味噌あるかな? 焼き肉のタレみたいな調味料でもいいな。

 焼き肉のタレを思い出したら焼き肉が食べたくなってきた。冷麺も食べたい。そして塩キャベツも。


 地球に帰ったら真っ先に焼肉屋に駆け込もうと決意を固めた。







 ちょこちょこ食べでお腹がいっぱいになってきたので、今度はスキンケア用品を試してみる事に。

 瓶についている蓋を持ち上げ匂いを嗅いでみる。



「おお、良い匂い」



 駅の地下街とかでこういう匂いを発しているお店が何件か絶対にあるよね。

 夜寝る前に使えば安眠できそう。


 さっそく使ってみたくなったので本日2度目のお風呂に行く事にする。洗濯は明日まとめてやろう。



「お風呂のついでに贈り物の確認もしてこようか」



 窓の外はもう暗くなっている。みんなを誘って夜のお出かけだ。

 便利なバスケットに必要なものを入れて家を出た。





 家の外に出ると、辺りがボワッと明るくなった。



「うわっ。何これ?」



 周りの木々そのものが内側から光り輝いているように見える。

 少し進むと進行方向も明るくなり、道を照らしだしてくれる。



「……ファンタジー!」



 そう叫んでエンに乗り砂浜を目指す。ほんと私に優しい島だよ。島というかチカチカさん。





 幻想的な景色を眺めながら砂浜に到着する。



「おー、小船あったあった」



 今回の船はいつもの小舟のようだ。

 砂浜、浅瀬までも柔らかく光り輝いているのでよく見える。



 近付いて船に載せられている箱をよく見ると、正統派のタイプだった。

 ひょいと蓋を開けて中を確認するとぎっしりとナイフにフォーク、片手サイズの剣、とにかく棒状のものがたくさん詰まっていた。



「なるほど。手に持てる棒状のものを片っ端から詰め込んだんだね」



 この数打てば当たる作戦はなかなか良いと思う。やるな、現地人。

 確かに送った絵は人間が棒状のものを持っているように描いたもんな。

 しっかし武器の類が多いのは何故だ。



 がさがさとひとつずつ取り出してペンを探す。



「これ……、見つけた!」



 少し手の甲に書いて確信する。

 それは、細長い炭のようなものを木で挟み、布でくるんだものだった。



「やったね!」



 鉛筆っぽい使い方が出来そうだ。

 上機嫌でペン探しを続けると、今度は筆が出てきた。



「おお~! これも使える!」



 絵を書くときに使う筆に近いが問題ないだろう。





 結果、鉛筆数本と筆数本を手に入れる事ができた。



「いやあ~、交易って楽しいね」



 ニヤニヤしながらはずれの品々を箱に戻していく。

 これを送り返せばペンが欲しかった事が伝わるだろう。



「ボス、街の人はまだいるの?」



 そう尋ねると、まだ街には送り返していないと教えてくれた。そして他の船も停泊したままのようだ。



「そっかあ。長い時間大変だね。もう暗いから島に用事がありそうな船は街に送り返してもらっていい?」



 いつもの小舟を送り返すついでにお願いする。


 今回は船の絵を描いて箱の中に入れておく。これは交易専用の船にするつもりだ。

 この鉛筆もどきはなかなか描きやすかった。



「今回もらうのは少しだけだから船の代金は入れなくていっか。前回のコインでまかなってもらお」



 なんともアバウトな交易だが正しい価値が分からないのでしょうがない。


 島を出ていく船に手を振りながら今度もうまくいきますようにと祈った。








 ――こんな感じで現地人との交易は始まった。






次回視点変わります。

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