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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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28/216

30分以内にお申込みいただければ

 




 マッチャとナナから果実と欠片を受け取り、残りの仕分けもさっと終わらす。

 では、交易の準備だ。



「いつもの小舟の贈り物には何も返してないんだよね? じゃあ今回も無しで」



 いつもの小舟はそのまま街に戻ってもらおう。



 次は白い船だ。

 この船からは箱をもらうので代金代わりに何かを置きたい。やっぱりお金かなあ。



「ボス、この白い船に棺を乗せてもらえる? ぎりぎり乗ると思うんだけど……」


 そうお願いして、洞窟にお金を取りに行く。みんなは待っててね。



 洞窟に入り、コインが山積みになっている所にたどり着く。

 いろんなコインがあってどれにしようか迷う。お賽銭感覚で贈ってきているなら高額ではないだろうし、貢物としてなら物凄く価値があるものだろうしな~。


 そこで、ざっと見てそこそこ数があって、価値もほどほどと思われるコインをひと掴み持っていくことにした。

 ボスと同じ色をした、羽らしきものがついた人の絵が。天使かな?



 砂浜に戻ると、棺は白い船の上に乗せられていた。



「ボスありがと」



 お礼を言って、棺の蓋を少しずらす。申し訳ないが棺の中に紙を入れさせてもらう。


 干し肉のあったスペースに布団の描かれた紙を置き、重石代わりにコインを3枚のせた。

 コイン2枚はそれぞれの箱と船代も含め、残りの1枚は布団代として置いた。

 価値に見合った結果になればいいんだけど……。高すぎるよりは足りない方が混乱は少ないと思う。

 コインは限りがあるからあんまり使わない方が良いかもしれない。でもコインがあるっていう事で、代金って発想になってもらえれば嬉しいな。




 その次は正統派宝箱の船だ。


 これは簡単に箱の中に葉っぱを敷いて、その上に水晶の小さい欠片をそっと置いた。

 きらきらしい贈り物だったしこれがぴったりな気がする。1番お金がかかってそうだし。

 島産の水晶だから価値はあると思う。



 そして、食べ物の入っていた船。


 これには感謝と、そしてもっと食べ物を贈って下さいという希望を込めて虹色の欠片と残りの紙をカゴに入れた。

 伝われ……! 



 そして最後の船。


 申し訳ないがこの船と棺の船はほとんどの贈り物を返してしまう事になる。

 干物の箱があった場所に島の食べ物をいくつか置き、追加でみんなが魚を食べている絵を描いて入れておく。みんなで食べてねという意図が伝われば良いな。

 魚の絵ってどの世界でも同じように表現されると信じてる。




「準備完了! じゃあ棺の船の他は街に戻そうか。え~っと、このお仕事はボスに頼めばいいのかな?」



 ボスを見上げながら確認すると、船がすうっと列をなして外海との出入り口に向かっていった。



「おお~、ありがとう」



 手を合わせながら、うまくいきますように! と船が見えなくなるまで祈った。







 さて、後は荷物を家に運ぶだけだ。

 今日は1日何をしようかな~と考えた時にタツフグの存在を思い出した。



 どれどれと浅瀬を見てみると、崖に体をぴったり押し付け、ロイヤルから必死に距離を取ろうとしているタツフグが。


 いたたまれない気持ちがじわじわと……。



「これからタツフグを囲う柵でも作ろうか!」



 そう提案してみるとみんなは「やるやる」と楽しそうに返事をしてきた。


 ごめんね、柵が出来れば恐怖の見張りもいなくなるからね。まあ、私が見張らせてるんだけど。



 養殖ってどんな感じだったかなとテレビで見た記憶を思い返すが、網で囲んでいたかな? くらいの知識しか思い出せない。そもそも網なんて無い。



「柵ね~。木の枝を浅瀬に等間隔に差し込めばひとまずは出られないかな」



 ある材料で考えると、やっぱり木材にたどり着く。



「みんなで少し太めの枝をたくさん集めようか」



 身振り手振りで大体の大きさをみんなに伝え、ボスに監視役をお願いして森にぞろぞろと分け入っていく。


 ぱきっと手頃な枝を折りながらみんなの様子を窺っていると案の定だった。

 力に任せた伐採というか、オラオラ伐採というか……。聞こえてくる音がすでにおかしい。

 でもダクスが枝に噛みついてもびくともしていないのを見て少し気持ちが落ち着いた。



「枝を集めて砂浜に運んで~」



 あまりやりすぎると森林破壊になりかねないのでほどほどの所で声を掛け、自分でもひと抱えほどの枝を持って砂浜に移動する。



 仕分けた食べ物が傷まないようにいったん洞窟に移動させ、それから棺の入っていた船に枝を載せ、自らも乗り込む。


 みんなが集めてくれた枝も載せられるだけ載せ、ボスに少し船を動かしてもらう。

 そしてタツフグのいる辺りまで移動して、枝を浅瀬に等間隔で差し込んでいく。



 みんなも海に入って近くまで寄ってきた。特にマッチャは器用に枝を同じようにさしてくれる。

 同じようにというか……、私がほぼ差し込めていないのでフォローで仕上げ作業をやっている感じになっている。ごめん、そんな簡単なものじゃなかったね。



 時間をかけて崖と枝の柵でぐるりとタツフグを囲う。念の為柵は2重にしておいた。

 ボスにタツフグの傍から離れてもらい、タツフグの様子を見ると――



「全然変わってないね……」



 相変わらず壁にくっついていた。



「島の中だからしょうがないのかな~」



 ちょっと悪い事したかなと反省した。

 でもインクを使うたびに捕まえるのもな~と考えたところで、せっかく交易を始めたんだから筆記用具も、意図が伝わるかは不明だが何とかお願いすればよかったんだと気づいた。

 いつもこういうのって後で思い付くんだよね。そりゃあ<地球>さんにも優秀じゃないって事で選ばれるなと思った。



「この子って素手で触っても大丈夫そう?」



 ロイヤルに聞きながらスカートを腰のところまでめくり上げて結ぶ。下着丸見えの完全な痴女だがここは無人島だ。少しずつ恥じらうという気持は薄れてきている。



 私に害はないと言うので、砂浜側からさぶざぶと柵の内側に入ってタツフグの方へ。

 外に逃がしてあげようと思ったのだ。

 ところが、私が近付いて行くと猛然と近寄って来て両足の間に収まった。



「お……? なんだ?」



 少し歩いて移動しても、慌てて両足の間に潜り込もうとする。

 試しに足を閉じてみたら体を薄くして無理やり挟まろうとしてくるタツフグ。



「なにこれ。懐かれてんのかなあ?」



 本来のサイズであろう大きさのタツフグを触ってみるが特に逃げたりするそぶりはない。

 ダクスもコアラ泳ぎですいっと寄ってくるが逃げ出すそぶりはない。


 意外とここでもこの子生活できるかもと思い始めたところで、ナナが近付こうするとまた崖にびたんとくっついた。



「ちょっとみんな1人ずつこの子に近寄ってみて」



 ひどいとは思ったが確認の為お願いする。


 結果、タツフグは今のところ私とダクスが近付くのは大丈夫だということが判明した。


 野生の生き物って鋭い、と思いました。





「タツフグはここで生活出来そうだから環境を整えたいよね。ロイヤル、海藻とかサンゴ的なものがあれは持って来れそう?」


「キュッ!」



 気軽に尋ねただけなのにロイヤルは返事と同時にすでに海の中。はやいよ!


 ダクスも水深が深めの場所で潜って何かを探している。

 貝を探しているんだろうなと思った。得意だもんね。


 どうせなら、とマッチャに座れそうな大きめの岩を持ってきてもらう事にした。

 足湯ならぬ足海水浴になるのかな? 柵の内側に設置してタツフグと触れ合えるコーナーを作りたい。

 あー、ビーチパラソル欲しい。




 タツフグにあげるご飯を果実の中から見繕っているとマッチャが戻ってきた。

 ゴロゴロと岩を転がしながら運んで、ちょうどいい場所に設置してくれた。



「ありがと~」



 マッチャに抱き着いて感謝の気持ちを伝える。

 マッチャもそうだけど、みんな自然の良い匂いがするんだよね。さらに陽の暖かさでほかほかだ。


 ニヤニヤしていると残っている面々も寄ってきたのでそれぞれを堪能する。



 抱き着いた事により少し服が濡れてしまったので海水浴をする事に決めた。


 服を脱いで下着姿になる。タンクトップぽい服とパンツさんは用意されていたので下着にしているが、もうちょっと数欲しいな。

 ……しっかし人間の欲って底が無いよね~。



 タツフグにあげる果実を持って海の中に入るとちょうどロイヤルも戻ってきた。



「キュッ」


「おかえり~ありがとね!」



 ロイヤルから見せられたのは苔むした岩と、口にくわえていたサンゴのようなもの。岩にはひよろっとした海藻も生えていて、希望通りのもので嬉しい。

 しかし、岩を受け取り柵の中に置こうとした時に岩の底が目に入った。



「うわっ……」



 ついついその場で固まってしまう。



 なんとその岩の底には色とりどりの石がくっついており、地球だと狙って発掘されそうなものだった。



「ねえ、この岩についてる綺麗な石ってどこにでもあるありふれたもの?」



 とんでもないものを持ってきたんじゃ無いよね? という意味を込めて聞く。



「キュッキュッ」


「そっか……」



 ロイヤルとボスの説明によると、この島の周りの海底にはたくさんあるという事だった。

 島の周囲には近寄れないから手つかずで残っているのか、それともこの島の周辺だからか――。

 なんとなく後者な気がした。



 思いがけず価値がありそうな岩が手に入ってしまったが、予定通り柵の中に設置する。

 いやあ贅沢だなあ。猫に小判、豚に真珠とも言うが。

 残りのサンゴとダクスの取ってきた真珠の入っている貝もそれぞれ設置するとそれっぽくなったきた。



「いいねいいね」



 ワクワクしながらバナナもどきを小さくちぎってタツフグにあげてみる。

 期待はしていなかったが意外や意外、ぱくりと食べた。



「おお~!」



 なんだかうれしくなって他の果実や野菜もあげてみると食べた。



「タツフグは雑食なんだね~」



 これは他の生き物でもいけるかもしれない。どうにか熱帯魚も愛でてみたいな。

 タツフグがみんなに早く慣れますように。




 ご飯もあげ終わり、さあこれから海水浴でも楽しむか! ということろでボスからパクリとくわえられた。


「わっ! なんだどうした!?」



 驚いてボスに聞くと、人間が貢物の船に乗って島にやって来ようとしていると言われた。



「えっなんで?」



 砂浜に下ろされながらも混乱が続く。




 人間は注文してないんですけど……。






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