そりゃあ言いにくいわ
カセルさんとアルバートさんの名前を出した途端にはきはきしなくなったサンリエルさん。
「あ、あの、サンリエルさんにはどういう事か先にお話ししておきますね。サンリエルさんに1番に。サンリエルさんにしか解決できない問題でして」
これから大変申し訳ないお願いをする身としては、気分良くいて欲しい。
あなただけなの特別よ作戦でいこうと思う。ごますり御使い。
サンリエルさんは私の言葉を聞き、嬉しそうな顔をしたから成功だと思う。
チカチカさんの力の影響を人の3倍受けてるってある意味大変だよね。
「えーと、ミナリームが魔物の件を理由にクダヤに攻め込もうと計画していたので、あちらの権力者達の前に降臨して争いを起こさないようお願いしてきました」
瞬間、サンリエルさんの顔が酷く不快そうに歪んだ。
ここまで表情が変わるのも珍しい。笑顔事件に次ぐ事件だ。
「ヤマ様の尊いお姿を目にしたのですか? ――ミナリームの無能な権力者共が」
……え、違う。そういう事じゃないんだ。
「ヤマ様のお手を煩わせた事、謝罪致します。神の社前での愚かな振る舞い以降じわじわと弱らせてきたつもりですが手ぬるかったようです」
ブ、ブラックサンリエル……。そんなことしてたのか。
「二度とこちらに手を伸ばさぬよう思い知らせます」
「ま、まあ神の力は十分実感したでしょうからね、もうクダヤには構わないかもしれませんよ?」
どうしよう。超言い出しづらい。
ミナリームの貴族住まわせてねって超言いづらい。
「――サンリエルさん、すみません」
思い切ってとりあえず謝罪。
「あの時来ていた使者の若者が、戦を止めるよう進言したせいで投獄されていました。ですので助けるついでに表向き人質としてクダヤに移り住むよう命令してきました。国籍はそのままで大使館で働いてもらおうと考えています。勝手に政に口を出して本当にすみません。理不尽に命を奪われるところでしたのでミナリームにはもう忠誠を誓っていないようですが……」
サンリエルさんの顔色を見ながら説明する。
「御使いに助けられた事によりミナリーム国内では逆恨みされる可能性があったので、家族全員で数日中にはクダヤに来ます。サンリエルさん、勝手なお願いで申し訳ありませんが、私を助けると思って彼等が住む事を許可して頂けませんか?」
「もちろんです。私にすべてお任せください」
「ありがとうございます!」
サンリエルさんはかぶせ気味にお願いを快く受け入れてくれた。優しい。
「助かります。――あ、カリプス持って帰ります? お礼です。島の野菜も食べます? 大変なお願いに釣り合ってます? どうしましょう、族長さん達にももちろんご迷惑をお掛けする事になりますよね。それなら族長さん達も呼んで拝謁する形にしますか? きちんとした対価をお支払いしたいのですが……」
何もしないというのも気が引けるのであれこれ話しかける。
物で子供に好かれようとする大人っぽくてあれだけど。
「ありがたきお言葉です――――ヤマ様」
「はい」
「私は……神の食べ物を賜る事はこの上なく名誉な事であり幸福なのですが……」
なんだ? また急にはきはきしなくなったぞ。
「…………もし私に褒美を与えて下さるのであれば……」
どうしよう、なんか告白される前みたいな雰囲気なんですけど。
告白されんの?
「……ヤマ様ご不在の間も含め、こちらを管理する為私の住まいを近くに建設する許可を頂けないでしょうか」
……お、おう。




