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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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なんちゃってネゴシエーター

 



 ずっとだんまりの王様に対し、周りの取り巻きらしき貴族が目で必死に何かを訴えている。

 護衛の騎士達も。

 にもかかわらず王様は何も言葉を発しない。


 これどうしよう。







「――わかりました」



 私の声に、はっとした顔でこちらに視線を向ける取り巻き達。



「早い方が恐怖する時間は少ないでしょう。先に民に伝えないといけませんね、王が国を見捨てたので逃げなさいと」



 そう言いながら踵を返すふりをすると、ようやくここに集まった人達から一斉に「お待ち下さい……!」という言葉が。



 よし! ありがとうありがとう!



「陛下! なぜ何も仰らないのですか!?」

「国を滅ぼしたいのですか!」

「そもそも戦を決めたのは陛下ではありませんか……!」



 うわ、あの王様すごい責められてるな……。



「……チカチカさん、扉開けてもらっていいですか?」



 王様の所に人が詰め寄っている隙にお願いする。

 そしてゆっくりと開いてゆく扉。


 ……演出ぱない。



「民やそなた達の家族に逃げるよう伝えなさい。ですが王族は捕らえ城から出さないように」



 ここまでしてようやく王様が口を開いた。



「待て……!」



 長かった……。

 完全に新たな黒歴史が刻まれたけど。

 自分で言い出したけどさあ。『黒歴史は繰り返さない決意』はうすっぺらだったな。



「何様のつもりだ……!!」



 ……いやまあまったくもってその通りなんですけどね。そうくるか。

 周りの人はあなたの発言に死にそうな顔してます。


 とその時、手に持っていた杖が数本の鞭のように変形し、まるで意思を持っているかのように王様めがけて伸びた。


 そしてあっという間に壁に串刺しにされる王冠。






 え? ……ちょ、え!?



 さらにぼうっと青白い炎に包まれてみるみるうちに溶けていった。






 やばい。



 罪状に器物損壊が加わってしまった。

 島のみんなが、というかチカチカさんが怒ってるかもしれん。



 やばい。



 偉い人(王様)が腰を抜かしてる。

 私も抜かしたい。



 そして白フワ、今は金粉はいらん。タイミングぴったりすぎだ。






「――言ったでしょう、そちらが何もしなければこちらもしないと」



 心の中ではがくがくしながら、なんとかそれっぽいセリフを絞り出す。

 何かされた訳じゃないけど……! 王様すまん!




 人々は再度閉まった扉に張り付くように集まり、こちらを震えながら見ている。

 王の周りの人達は茫然とどろどろの元王冠を眺める事しかできない。



「チカチカさん、ルーデンス家お願いします……」



 空気を変えるため2人を呼び出す事にした。

 打ち合わせ通りに進められるうちに進めておこう。



 そしてぱっと王様の目の前に現れるクルトさんとパパ。

 お互い「ひっ」と言いながら周りを見渡している。



「クルト・ルーデンス」



 ごめん、いきなり開演する。



「は、はい!!」


「神の力をこの者達は知らないのですか?」


「も、申し訳ありません! 私の力が至らず……! 私の命をもって怒りをお収め下さい!」

「私の命もお好きになさって下さい……!」



 すごい。

 この2人演技うますぎる。



「私はこの国、王家に忠誠を誓っております……! どうかこの国をお助け下さい……!」


「私からもお願い致します! どうか……!」



 ひぃっ。

 穏健派トップ髭男さんも参加してきた!






「……そなた達の国に対する忠誠心に免じて許します」



 その言葉にばっと顔を上げる2人と髭男さん。



「ただしクルト・ルーデンス及び家族は、人質として神の御許、クダヤでの生活を命じる」


「寛大なご処置感謝致します……!」


「戦をやめない限り、近隣諸国共々最古の魔物に滅ぼされるという事も覚えておくように」


「心致します……!」



 最後に、事態の収拾を丸投げするために穏健派トップの名前を聞く。



「そなたの名前は?」


「はっ、メルヒオール・ヨーゼフ・アイト・ホフマンと申します!」



 長!



「……後の事は任せます」



 あの、王様のフォロー頼みます。







 これでようやく、成功したんだかそうじゃないのかよくわからないミナリーム降臨は終わった。

 チカチカさん、島のみんな、白フワ、助けてくれてありがとう。


 でも偉そうな口調御使いは意外と楽しくなかった。

 現実はやっぱり違うんだなあとぼんやり思った。



 神の武器は別だけど。






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