独断
忘れられない登場の仕方で現れた男性はルーデンスさんのパパだった。
「父親でしたか」
何となく親近感。息子さんには1回しか会ってませんけど。
「は、はい。……御使い様が息子をと聞き……神罰を下されるのかと……」
なるほど。
そりゃあ慌ててあんな登場の仕方にもなるわ。
「神罰は下しませんよ。――――クルト・ルーデンスには」
何となく後半はマントさんに向けて言う。
そのマントさんは眉間にぐっと力を入れた。
「それで? あなたが彼を連れてくるのですか?」
ルーデンスさん……クルトパパでいいか、に話しかける。
「いえ、私は助命の嘆願の為に城に……。そこで御使い様の話を聞き居ても立ってもいられず……」
「ではお互い考えている事は同じですね」
助命って事は危なかったな。
「――それでいつ彼はここに?」
クルトパパを追いかけてきた騎士達に近付き質問する。
「は、話し合いをしている最中だ……です……」
「そうですか」
「はる、時間かかりそう」
「あ、じゃあもう連れてきちゃいましょう」
さっとこなしてさっと終わらせたいしお腹も空いてきた。
ボスにお願いしてマントさんの近くまで寄ってもらう。
「時間がかかるようですので私から出向きますね。それと、城にいない、すぐ登城出来る発言権のある人間も招集するように。もちろん王におもねる人間だけではないですよ?」
「おっお待ちく――――」
マントさんに丸投げしてそのままクルトさんの所まで瞬間移動した。頼んだぞ、マントさん。
瞬間移動した牢は想像していたのとは少し違った。牢というより部屋だ。
そして部屋の隅にはベッドに腰かけているクルトさん。
俯いているのでこちらにはまだ気がついていない。
「チカチカさん、パパとクルトさんを連れてお城の人がいない所にいったん移動をお願いしてもいいですか?」
ひそひそとお願いをすると、次の瞬間には豪華な部屋の中にいた。
ルーデンス家の2人ももちろん。
「「え―――?」」
さすが親子、シンクロした。
が、クルトパパは部屋を見渡し、目の前に息子がいるのを見て我に返りがしっと抱きしめた。
「……父上……?」
泣いている父親にこの状況、クルトさんはかなり混乱しているが、しっかりと抱きしめ返している。
良かったね良かったねと思いながらその辺のソファーに座ってくつろいでいると、ようやく落ち着いた2人がこちらに視線を向けた。
「御使い様! も、申し訳ありません!! 感謝致します!!」
あたふたとクルトパパが走ってきて謎の謝罪と感謝。
「こちらが勝手に連れてきただけですのでお気になさらず」
「み、御使い様!?」
そしてクルトさんまでダッシュ土下座挨拶を行おうとしたのでその前に言葉を重ねる。
「クルトさん、お久しぶりです。無駄な戦を諫めたが故の投獄という事で大変な目に遭いましたね。私としては人間同士の無駄な争いは止めさせたいのでこちらまで参りました。この後王達に話があるので私はいなくなりますが、どうします? 私がクルトさんの投獄を無かった事にするのは簡単ですが、私が島に戻った後もお2人はこちらで生活を続ける事になります。勝手にここまで連れて来たのは私なんですが、今後に問題はありますか? 命の危険という意味で」
都度返答を待っていると話が進まなさそうなので、一気に言いたい事を言い切る。
私の質問に、案の定2人は「それは……」と苦しそうな顔をした。
御使いなんていう怪しげな女に指図されてこの国の権力者たちが良い気分になるわけがないし、クルトさんをそっとしておくようにお願いしても何かしら遺恨は残るだろう。
「この国に未練はありますか?」
「え……?」
「御使いの人質兼大使館職員としてクダヤに来ますか?」




