いざ
「……おお? とうごく……?」
「そう」
「とうごくって…………投げる地獄のとうごくさんで合ってます?」
「あってる」
「牢屋に入れられてる……?」
「そう」
「えーーーー!?」
「声が大きい」
頭をがっと掴まれたがそれどころじゃない。
「ちょ、ちょっとちょっと2号何したの? 不正? 横領? そんな事する子には見えなかったんだけど……」
頭を掴まれたまま、あわわあわわと質問する。
アルバートさんに似ている子に悪い子はいないと思うのに……。
「戦を止めようとした」
「おお?」
「神の使いの恐ろしさを訴えてた」
恐ろしさって所がなんか引っかかるけど……。
「それでなんで投獄?」
「権力者にとって都合の悪い道を説く者は迫害される」
「……ああ」
そうだった、ミナリームという国はそんな感じの国だった。
というかどの国もそうだろう。地球でもそうだし。
「もともと使者団の責任を押し付けられてたし権力がない貴族だし人身御供にはぴったりの人材」
「いや言い方……」
就職面接じゃないんですから……。
「……お……なんでもないです……」
教えてくれても良かったのに、という言葉は飲み込む。
チカチカさんにとってまばたき程の些細な当たり前の出来事に過ぎないんだろう。
私も聞かなかったし。
「……御使いの威厳とかもうどうでもいいんでとりあえず2号を助けに行きます」
周りからよく見られたいとか思ってる場合じゃない。
「どうやって?」
「……わかりません」
上手い立ち回りなんてちっとも浮かんでこないし、助けた後どうなるかもわからない。
でもこのままじゃ嫌だという事は分かる。
チカチカさんに抱き着いて頭をがんがん胸にぶつけながら「わかりませんけど助けたい」とひたすらアピールする。
しばらくがつがつがんがんやってたら気持ちがだいぶ落ち着いてきた。
「――御使い降臨に2号救出を付け加えるだけでいい話でしたね」
特に難しく考える必要はなかった。
好きにすればいい。
「チカチカさん、申し訳ないんですけど2号君がいる牢までの瞬間移動も追加していいですか?」
「いいけど」
「ありがとうございます!」
ダッシュからの抱き着きをチカチカさんにプレゼント、その後島のみんなにもそれぞれプレゼント。
途中からロシアン受け身ごっこになってしまったが、気持ちはすっきり。
そしてボスからミナリームの使者の名前を教えてもらった。
2号はクルト・ルーデンス、おじさんはフレーゲル・ミールケ。
ずっと2号呼びもあれだしルーデンスさんと呼ばせてもらおう。おじさんはしらん。
「首を洗って待っておれミナリーム!」
「なにそれ」
ふふふ、こんな感じのセリフを言いたかったんだ。ふふふ。
もううじうじなんてしない。
保護者のツン発言も気にしない。




