急カーブ
よくわからない事を説明されていたかと思いきや、いつのまにか私の悪口に変わっていた模様。
「ちょっと何なんですか。悪口ですか。けんかですか。私の受け身の出番ですか」
眉間にしわを寄せながらボスベッドに横になったまま威嚇する。
全然威圧感が無いのはわかっている。
「褒めてる」
「どこがですか」
あれで褒めてるつもりなのか。
「褒めるのっていうのはですね――」
「細胞マッサージする?」
「……する」
この……! これで許したわけじゃないですからね……!
ぷりぷりしながらもその場でうつ伏せになる。怒りが長続きしない系。背中から頼んます。
「う゛おおおおぉぉぉ」
「う゛い~」
「うるさい」
仕方ない。背中から首周りのマッサージが最高なんだ。
ぷりぷりしていたのも一瞬で、今は天国。うい~。
ダクスが足をぱしぱし叩いてくるのが気になるけど。それマッサージ?
「チカチカさん次は足裏とふくらはぎをお願いします」
遠慮なくお願いし、ダクスを抱きかかえごろりと仰向けになるとチカチカさんは椅子に座ったままだった。
「あれ――わっ!」
まさかの、今までマッサージしてくれていたのは光る2つの球状の物体のようだった。
いやまあチカチカさんっちゃあチカチカさんなんですけど……。
なんか手抜きな感じがしなくもないような……。
「変な感じ……」
足裏をマッサージしてくれている物体を見ながら呟く。でもうとうとするくらい気持ちいい。
「ぴちゅ」
「あ、キイロの爪は肩にいいね。たまに強すぎるけど」
もふもふを抱えながらマッサージ中の私……セレブリティ。
抱えるのはチワワとかの方がそれっぽいかな。
しかしうとうとしてきたところでマッチャに揺り起こされた。
「フォーン」
「ああ、はいはい」
サンリエルさん達が戻ってきたようだ。
慌ててよだれをぬぐい髪をささっと直す。
この短時間でここまで人間を堕落させるとは……惑星の恐ろしさよ。
あくびをしながら階段を下りていると店の扉がノックされた。
「へい」
なんか変な返事が出た。
「お休みだったんですか~?」
扉を開けて入ってきたのは今日もきらきらしい笑顔のカセルさん。
あくびをしていたのがばれている。
「ちょっとうとうとしてました」
「出直しますか?」
「いえ、大丈夫です」
さすが出来る男は違う。
「アルバートさんも毎日すみませんね」
「いえ……!」
さっそくこじんまりに近距離威嚇をされているアルバートさん。今日は白フワがいないけど。
それにしてもサンリエルさんが大人しい。圧が無い。
まだ御使いショックから抜け出していないようだ。
「私達を迎えに来た時からこのような感じでして」
私の視線に気がついたカセルさんが不思議そうに教えてくれた。
「心当たりはあるんですけど……」
苦笑しながら返事をすると、カセルさんは納得したようだった。
「大事な話ですね?」
「そうです。こちらでお話ししますので――」
キッチンにみんなを案内する。
慌ててアルバートさんがお茶の準備を始めたのでお願いする事に。
こじんまりの監視の下必死で準備をしているアルバートさん、それを見て笑顔のカセルさん、椅子に座りこちらをじっと見ているサンリエルさん。
人間……だよなあ?




