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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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出来る人が出来る事を

 



 ボスの新陳代謝アップを十分に祈ったところで、ありがたくウロコを使わせていただく。


 ウロコは手のひらサイズだが冷気を存分に放出している。

 これ、どうやって活用しよう。こういう時プラスティック容器のありがたさが身に染みるなー。

 カゴに魚そのままはちょっとな、とカゴに目をやった時に思い付いた。



「エン、カゴを作った時に使ったこの大きな葉をまた集めたいんだけど乗せてもらえるかな?」



 陸の監視役だから場所もすぐわかるだろう。



「クー」



 快く引き受けてくれたので早速向かおう。もちろんキイロも肩にとまってスタンバイ。



「キャンッキャキャンッ」



 ダクスの、自分も行くアピールがすごい。いいよ、一緒に行こうか。

 マッチャとナナもついてくるようだ。ロイヤルとボスは魚の近くで待っていてくれるようなので安心。



「じゃあいってきます。すぐ戻ってくるよ」


 冷やしウロコを魚の近くに置き、魚見守り組に手を振って出発した。

 が、一生懸命足を動かして走り始めたダクスのお腹が木の根にひっかかった。足短いもんね……。

 マッチャがひょいとダクスを持ち上げナナの甲羅の上に乗せる。気を取り直してさあ出発。




 あの大きな葉をつけた植物は森ゾーンであれば至る所で目にしたのであまり時間はかからないだろうとは思う。

 そして予想通り少しエンが走っただけで見つけることが出来た。



「ひとまず10枚くらいかな?」


 そうみんなに伝えてさっそく集め始める。いつかこの葉を使ってお弁当を作ってみたいな。夢が広がる。


 葉っぱ活用法をあれこれ考えながら2枚目にとりかかったところでマッチャが10枚集めて持ってきた。



「早いね~。ありがとう! じゃあ戻ろうか」



 マッチャと半分こして砂浜に持ち帰ることに。




 砂浜に近づくにつれてボスの巨体が目に入る。改めてすごいよな~。でもあれで刺身見守ってるんだよね。



「ただいま」



 声をかけながらエンから下りる。

 早速とってきた葉を重ね魚をどんどんのせていき、ボスのウロコを最後にのせて葉でくるむ。



「おお~、それっぽい」



 一風変わった駅弁でこんな感じのがあってもおかしくない。

 生ものなのですぐ家に持って帰ることにした。みんなもついて来るそうだ。

 そうそう、今日の予定は1階のテーブルセット作成と洗濯物を干せる何かを作ることだった。家の周りで作ろう。





「海の監視は離れていても大丈夫なの?」



 少し気になったのでロイヤルとボスに質問する。

 陸はある種孤立しているから侵入するなんて中々ないだろうけど、海は外海と繋がっているからどうなんだろうと心配になったのだ。


 ボスがいうには、島の周りに自分のエネルギーを張り巡らしているから何かあればすぐに分かるし、そもそもこの島の力を恐れて本能で生きているモノは近付きすらしないようだ。



 ふ~ん。それって本能だけで生きていないモノは例外ってことかな。――例えば人間とか。


 そっか、みんながある意味監視しているのは人間なのかも。監視役、管理者ってどういう事だろうと思ってたけどそういう事か。よく考えたら人間がこの島に目をつけない訳がないもんね。巨木からして目立ってるし。


 どうしても人間の本質に開拓精神というか、支配欲みたいなものは多少つきものだから過去この島を目指した人間もいたんだろうな。私だったら天までそびえ立つ巨木の時点で腰が引けちゃう。ばちが当たりそう。


 まあ開拓精神のある人達がいたおかげで今まで豊かな生活を送れていた部分もあるからどちらが正しいとは言えないけど……。

 これからここで生活していくにあたって、今後あるかもしれない現地人との関わり方に注意しようと思った。



 気になることも解消したのでみんなでぞろぞろと家に向かう。全員での空中散歩も提案されたが、ダクスが危なそうなのでのんびり行くことにした。ほらあの子、落ちちゃいそうだし。


 そしてボスはもうウロコが復活していた。さすが。では、騎馬民族も復活だ。








 のんびり移動し家に着いた。ボスは透明になり飛んできたが。


 みんなには外階段からテラスに上がってもらい待っていてもらおう。マッチャはお手伝いする為について来てくれた。キイロとダクスも。やってもらえる事あるかな?



「チカチカさんただいま~。今日3人のお仲間が増えましたよ~。それで――」



 今日あった出来事をつらつらと報告しながら梱包刺身を空いているカゴに入れ、とってきた葉で蓋をし簡易冷蔵庫にした。


 マッチャにはテラスに干している果実容器を持ってきてもらうよう頼む。その間にチカチカさんにダクスについて質問する事に。



「チカチカさん、この子私の異世界訪問と関係ありますか」



 ダクスを抱きかかえながら聞いてみる。



 チカチカッ



「特に役割とか、他のみんなの様な能力が無いようなんですけど何かありますか。そういうもんですかね?」



 チカチカッ



 そうか。そういうものか。どういう意図でとか、疑問はあるけどまあいいか。



「よし、じゃあダクスはみんなを和ませる係で!」



 こういうものは後から身に付けるのが難しい要素だから大事だ。みんなそれぞれ見ていて癒されるけど正式な和ませ係に勝手に任命します。



「キャン!」



 うん、良い返事だ。マッチャも果実容器を持って戻っていたので作業を進めることに。



 コップを使い健康水と木の滝の水をそれぞれ果実容器に入れてテラスに持っていってもらう。私は食器と食べ物が入ったカゴをもって後に続く。マッチャとダクスはわざわざ外階段を使って移動しているようだ。


 ……わざわざすいません。でもベッドルームは土足禁止にしたいんだ。


 2人に続いてテラスに。みんなは自由にくつろいでいたが、ボスが1階から首だけ参加していてビクッとしてしまった。



「お待たせ。色々と持ってきたよ」



 そう伝えながら椅子に座り水をごくごく飲む。ごくごく飲む場合は木の滝水に限る。

 みんなはお皿に入れて飲んだり、果実を食べ始めた。ハーブティは後のお楽しみで。



 さて、飲みながらやることを整理しよう。

 まず、洗濯物に関しては自分の生活を思い出すと物干し竿が思い付いた。



「ナナ、たくさんお願い事があるんだけど……。こういう細長い棒2本作れる?」



 身振り手振りで長さ形を伝える。



「作れるんだね、良かった。あとみんなの分の食器類も揃えたいからお皿、コップ、あとはお箸。お箸はこういう形の――」



 申し訳なく思ったが、気にするなと言ってくれたのでどんどん頼む。菜箸やお玉、まな板も頼んだ。ほんとに遠慮せずにごめんね。



 ナナは今から作りに行くとの事で休憩を終え、手伝いのできるマッチャとボスの3人で虹色ゾーンに向かった。よろしくお願いします。空きカゴも持って行ったので持ち運びはなんとか大丈夫だろう。


 これでテラス関係は落ち着いたのであとはテーブルセットと物干し竿を設置する土台だ。テラスの床が土ならY字棒をざくっと埋め込めば問題ないが、材質は木だ。しばらくう~ん、と考え丸太2本をドンと置いてなんとかしようという結論に。


 なんにせよ木は切り倒す必要があるなと思いチカチカさんに伐採許可を得ることに。ほんとここの自然は遺産認定級なので少し気が引けるんだよね。



「チカチカさん、家の周りの木を少し切ってもいいですか」



 室内に向かってお願いすると点滅して許可してくれたので早速作業を始めよう。ありがとうございます。





 マイ斧を持って階段を下り、手頃な大きさの木を探す。しっかり自立して倒れない太さがあればいいかな。

 結構な大きさの木が多かったが、少し砂浜寄りに移動すると見つかった。あれくらいの太さなら切れそうな気がする。よし、樹木入刀だ。みんなは見守ってて!



「よっ」



 斧をフルスイングで木に叩き付ける。ガッ! という音と共に木の表面がえぐれた。



「おお~!」



 謎の感動が。しかし、素人とはいえ1回でこれだけかー。これは中々先が長いかも。

 ま、とりあえずやってみるかと作業を続ける。



「よっ」


「よっ!」


「やあ!」


「おらぁ!」





 …………だめだ、そこそこ続けてみたが飽きてきたし手も疲れてきたし変なテンションになってきた。自分の飽きっぽさが憎い。



「……きゅうけいー」



 斧を放り出し、その場にどかりと足を投げ出して座り一旦クールダウンする事に。

 さっそくエンとダクスが寄ってくる。適度な休憩、大事。


 エンに寄りかかりながら、チカチカさんに頼んだ方が早いし綺麗だよね、なんでこんな事やってんだろうかと深夜のテンションで書き上げた企画書を冷静になって見返す気分になっていた時、キイロが話しかけてきた。



「ぴちゅぴちゅ」


「え? キイロがやるの? ああ、スパッと?」



 オレンジ果実を粉々にしたやつか。大丈夫なのかと疑問に思ったが自信があるようなので任せてみる事に。

 距離を取ってキイロの行動を見守る。



「ぴちゅ!」





 ……すごい! あちこちの木にも傷がついたが目的の木の根元にも集中して当たったようで綺麗に倒れた!



「キイロすごいね! かっこいい! ありがと~! コントロール出来るじゃん!」


 興奮してキイロにお礼を言っていると、横からロイヤルが話しかけてきた。



「キュッ」



 ……マジ? ロイヤルも出来るの? 

 出来るそうなので良さげな木を指差してじゃあこれを、とお願いする。



「キュッ! キュッ!」


 ロイヤルはキリリとしながら羽からナイフを長く伸ばして交互に切りつけ始めた。

 そのナイフって伸縮自在なんだ。




 何回か繰り返すとこれまたあっさり木は切り倒された。



「おお~! ロイヤルもすごい!」



 私のお仲間ほんとハイスペック。そう思いながらロイヤルを見ているとキイロがロイヤルに近付いて仲良くじゃれあっていた。


 私に対してじゃないと何を言ってるか分からないんだけど、お前もやるじゃねーか、そっちこそ、みたいな会話が脳内で勝手に変換されてしまう。

 さっきの掛け声もオラオラって感じだったし。





 これがオラオラ系かと変に納得した。






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