職人技
昨日のうちにナナが勾玉っぽく加工してくれたいくつもの虹色鉱石をがさがさと布の上に広げる。
この形、ファンタジー感にあふれている。私日本人だしね。
これに三つ編みにしたボスの尻尾の毛を通すだけの簡単なお仕事。
まだミュリナさんにアクセサリー作りを習っていないからこれが精一杯。
「色味とかそれぞれ違うからみんな好きなの選んでね。もちろんチカチカさんも! 残念ながら拒否権はありません~」
下唇を突き出しながら腹の立つ顔をする。
しかしチカチカさん(女性バージョン)は真顔でじっとこちらを見ているだけなので自分が子供っぽく思えて恥ずかしい。いつも真顔だけど。
精神的な攻撃を受けた気分。
でもみんなが選び終わった後に無言でそっと1つを選んでくれた。好き。
ニヤニヤしていたらまた真顔で見られたので視線を逸らして作業を開始。
誰のネックレスから作るかというところでひと悶着あったが、当初の予定通り最初はコーンのものから作る事に。
次はダクス。アピールがすごい。
集合体白フワソファーに優雅に座りながら――というか上半身を起こせる介護ベッドに近い――のんびり話をしながら作業を進める。
完全に幸せな余生を過ごしているお婆ちゃん。
島のみんなは白フワファミリーが怖がるので少し離れてもらっているが。ダクスはもちろん問題なし。
「――そうそう、私その内実家に帰っちゃうんだけど――そこの島の家じゃなくて違う惑星ね。その時白フワはどうする? いちおう街の拠点のキャットタワーに住み続けてもいいんだけど。お店もあるから守り神みたいな感じでそこに住んでもいいし。ここに戻る?」
そう話しかけると、ソファーの一部から飛び出して来て目の前でふるふるしている白フワ。
うん、よくわからん。
でもボスが通訳をしてくれた。
「あ、そうなの? それじゃあ2階の窓を少し開けておいてもらうから自由に過ごしてね」
ボスの通訳によると「それぞれの場所をパトロールする」という事だった。
さすが白フワ界の猛者は違う。
「お店はどうしようかな~。ミュリナさん達は自分のお店だし……守役スペシャルの作り方を教えたら誰でも出来るかなあ? ある期間だけ営業するお店とかゆとり感がかっこよくないですか?」
チカチカさんに話しかけてはいるが、特に返事は必要としていないのでそのままだらだらと話し続ける。
「家も人が住まないとすぐボロボロになっちゃうんですよねー。その辺はサンリエルさんがこまめに掃除してくれそうだけど――住むとか言い出しそうだな……」
恐らく1年未満で新築住宅を退去する事になると思うので誰かに住んでもらう分には構わないんだけどな……。
あの人のはしゃぎっぷりがな……。顔には出さないけどさあ……。
「――ま、いっか。その辺は帰る話をした時に向こうから色々提案してもらえるだろうし」
先の事を今あれこれと考えなくてもなんとかなるだろう。




