ほめ上手
適度な運動とおしゃべりでで心身ともに爽やかな午後――
「申し訳ありません申し訳ありません申し訳ありません……!」
そんな午後に図書室で謝罪リピートを受けている私。
「いえ、私も初心に返って神の踊りを踊る事ができましたし」
「覚えが早いって褒められてましたね~!」
「おい……!!」
「へへ、褒められちゃいました」
アルバートさんはそろそろ落ち着こうか。
神の踊りは店の話し合いの為という事でいったん中断している。カセルさんのファインプレー。
あくまでもいったん、だが。
「皆さんの完成度の高さには驚かされました」
「アルバートの家族は特に熱心に稽古していますので。衣装もお似合いです」
「おい……!!」
褒められて悪い気はしないがアルバートさんがなんだか可哀想……。
「すみませんね、頻繁に街に来てしまって」
「喜ばしい事ですが油断しておりました」
「あ、やっぱり? ――ほら、アルバートさんも食べて落ち着いて」
用意してもらったお菓子をもしゃもしゃ食べながら話を進める。
カセ&アルはサンリエルさんに内緒で家に帰ってきたらしい。
知ってたら今ここに彼いるよね。当然のような顔をして参加してるよね。
そして使者達は明日帰る事も教えてもらった。ララウルク首長が相変わらずな事も。
「――それでは店の管理者の話は無くなったと」
「アルバートさんとひとまずは2人で。商品はジョゼフ家に納品しますが――エン、そこアルバートさんの足の上だからもうちょっとこっちに来て」
隠し切れない悲壮感を漂わせているアルバートさんの足の上にナチュラルに座り込んだエンに注意する。
なんでわざわざテーブルとソファーの間に埋まりこむんだ。
「ぴちゅ!」
「えーしょうがないよー。私もお偉いさんと2人きりのシフトとか嫌だし。緊張しかしないし」
「ひっ……!」
「ロイヤルは羽バシバシやめようか。ダクスも牙――カセルさんはそのままで平気ですか?」
「はい!」
白フワは何がしたいんだかカセルさんのお茶の上でふるふる動いていた。
カセルさんは嬉しそうだけど。
「アルバートさんの教えていた学校の子供達に学びの場として提供する案も出ていますから安心してくださいね」
「あの……いえ……」
御使いを目の前にして素直に喜べないよね。わかる、わかるよ。
「それじゃあ次はお店をいつ開けましょうかねえ」
マッチャにすこし乱れた髪を直してもらいながら考える。
「拠点が仕上げ段階にはいっておりますので完成してから、というのはいかがでしょうか」
「おお~いよいよですね~」
あっという間に2軒目の所有物件だ。ありがとうイージーモード異世界。
岩のゲートも本格的に活躍する時がきたな。
「ではそうしましょうかね。茶葉なんかの補充品は店と拠点に分けて届けてもらえると嬉しいんですけど」
「かしこまりました」
打ち合わせも終わり、名残惜しそうにしながらもカセ&アルは仕事に戻る事に。
アルバートさんが何度も家族に「あまり無茶な事は……」と念をおしていたのが面白かった。
サンリエルさんが拠点の仕上げで執務室にいない場合はすぐに戻ってくるようなので楽しみにしておこう。




