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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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100%の親切心

 






「え? そうなの? よかったね!」


「そうなんですよ。こう頑張れよという気持を込めて背中をばしばしと」





 楽しい。





「ヤマチカさんは地の族長に憧れてるのね」


「はい。強さと優しさとかっこよさがあふれ出てます」


「そ、そう」



 楽しすぎる。




「フランシスさんには素敵な恋人がいますから地の族長には興味ないですよね……?」


「え? フランシスさんの恋人とか絶対に素敵な人じゃないですか!」


「ちょっとスヴィ」





 女性の集まりってとても良い。





「だから神の踊りも辞退されたんでしたっけ? あの人フランシス隊長の事大好きですもんね! 嫉妬で大変!」


「違うわよ。年頃の男女には私の年齢だと当てはまらないってだけよ」


「あの……お付き合いされてもう長いんですか?」



 なりそめとか気になりすぎる。



「もう5年かしら」



 長!



「フランシス隊長への気持ちなんて周囲にもばればれなのに本人は隠し通せてるつもりだったのが笑えますよね! いまだに皆さんその当時の事を話してくれますし」


「ライハ……」



 フランシスさんは苦笑した顔も美人。というか頭ちっさ。スタイル良すぎ。髪ツヤツヤ。






 オープン記念セールを無事終えた翌日、私は街に遊びに来ていた。

 島でごろつくつもりだったのだがS青年のお店に行く約束を思い出したのだ。

 簡単に言うと、S青年とエリーゼちゃんのじれじれ具合を見たかった。


 カセルさん達もまさかこんなにも早く街に来ているとは考えないだろう。ふふふ、結果的に策士御使い。

 S青年とエリーゼちゃんの仲も良いじれじれ具合だったしランチも美味しかったし遊びに来てよかった。


 しかも挨拶がてら訪れたまどろみ亭で集団演武の際に目立っていたフランシスさんとも知り合いになれたし。

 なんとフランシスさんはライハさんの上司で隊長さんらしい。女性隊長……素敵さの極み。





「――お客さんが増えてきましたね。では私はそろそろ。追加の茶葉は後日持ってきますね」


「待ってるよ~!」


「フランシスさんもまたお会いできたら嬉しいです」


「女性ならではの気配りで本当に助かっています……。騎士の男性は威圧感が少し……」


「ふふ、ごめんね」



 マケドの間者はもういないが、念の為騎士達が交代でライハさんと共に店員兼ボディガードの役割を果たしているのだ。

 これでさらにたくさんのお客をさばけるとスヴィちゃんが嬉しがっていた。将来大物になる予感しかしない。









「――ふふふ」


「その顔なに」



 今の私は何も言われても平気だ。



「嬉しい幸せ顔ですー。女性同士ですけどちかさん腕組みます?」


「遠慮しとく」


「へーい」



 ジョゼフ家へと向かう途中、相変わらずチカチカさんはチカチカさんだった。



「お店はいつくらいからジョゼフさん達にお願いしようかな~」



 店が思いのほか繁盛しているのでジョゼフさん1人だと大変だ。

 かといっていつもガイアちゃんを連れて来てもらうのもミュリナさんとガイアちゃんに負担がかかる。



「ちかさん、赤ちゃんってあんまり外出させない方がいいですよね?」


「意外と丈夫だけど」



 いやそれ惑星目線。



「やっぱり近くに引っ越してきてから短時間勤務にしてもらおうかなー」



 まさかファンタジー世界で勤務のシフトを考える事になるとは……。










「――こんにちは、ヤマチカです」


「いらっしゃい」



 ジョゼフ家の扉をノックしたらまさかのアレクシス親分がこんにちは。



「え? あれ?」



 到着する少し前に別れたチカチカさんをつい視線できょろきょろと探してしまう。

 アレクシスさんがいるなんて言ってなかったのに。ちょうど良かったけど。



「今ミュリナが授乳中だから」


「そうなんですか。時間をずらした方がいいですか?」


「大丈夫よ~」



 出直そうとしたら家の奥からミュリナさんの声が聞こえてきた。



「ではお邪魔します」



 お言葉に甘え、アレクシスさんの女神っぷりを堪能しながら案内された席に着く。

 どうもお茶会の最中だったようだ。



「いらっしゃい」



 ガイアちゃんを抱っこしたミュリナさんもやって来た。

 うん、今日もガイアちゃんは目力強め。



「急にごめんなさい。今後のお店についてお話しできればと思って。あとこれ食べてください」


「ありがとう。ジョゼフはジーリさんと引越しの下準備で少し出掛けてるの」


「そうなんですか」



 やった。美女とネコ科の素敵ペアがまた見られるかも。



 そして男性の帰りを待つ間また楽しい女子会が始まった。今回は育児話がメインだったが。

 知識は蓄えたので地球で活用できればいいな。






「ただいま」



 ガイアちゃんの視線にずっとさらされながらも幸せなひと時を過ごしているとジョゼフさんがジーリさんと一緒に帰ってきた。



「おじゃましてます」


「あれ? 久しぶり」



 きゃっ、ネコ科の笑顔だわっ。



「お店の事で来てくれたの」


「そうなんだ。わざわざありがとう」


「アレクシスただいま」


「お疲れさま」



 良いなあ。夫婦の距離感って良いなあ。あー結婚したい。



「アレクシスさん警護をありがとうございました」


「いつでも頼ってちょうだい」



 はい、ウインク出ました。眼福。



 男性達も席に着き、私の買ってきたお菓子を食べながらお店の事を話し合う事に。

 でもガイアちゃんはそろそろ寝た方が良いんじゃないかな。目が疲れそうよ。





「――商売ってやっぱり楽しいってミュリナとも話してたんだけどね、昨日のようになると迷惑をかけてしまうから……」


「クダヤに住む限りずっと変わらなさそうですよね。もう住民に?」


「そうなの! いきなりでびっくりしちゃったけど」



 ミュリナさん達が嬉しそうで良かった。



「しかも新しく用意してもらった家なんだけどね、そこでも商売可能な造りなんだよ」


「許可も頂いているからすぐにでも始められるの」


「ヤマチカちゃんも知ってると思うけど、御使い様関連の事となると一族の人間は張り切ってしまうんだ」



 ジーリさんの恥ずかしそうな顔、素敵です。



「それならご自宅で商売された方が楽じゃないですか? こちらの事は気にしないでくださいね、領主様に色々と助けてもらえそうですので」



 店は自由に閉めればいいしアルバートさんもいるし。

 もともとミュリナさん達がお店を持てれば嬉しいよねっていう安易な発想からスタートしたし。



「そうね、家の隣に騎士の詰所が出来るから安全だし――ね? ジーリ」



 まじか。権力があるとほんと便利だな。



 結局、しばらくの間店は私とアルバートさんの2人体制でやっていく事になった。

 アルバートさんが教えていた学校から経験を積ませるために数名の生徒を引き受けるという話も出て大いに盛り上がってしまった。まさに教育実習。

 今後教育者の肩書もついちゃったらどうしよう。忙しいな。



 そしてジーリさんは仕事に戻り、私はそのまま当たり前のようにアルバート家に連れて行かれた。

 親分には誰も逆らえない。













「――う~ん、羽の色が合っていないのかしら?」


「御使い様によりお近づきになるならこっちなんだけど……」


「もう少し全体的に可愛らしい方がいいかもしれませんね」



「ずっと立っていては疲れてしまうよ。ほらヤマチカさん、座って」



 おじいちゃんありがとう。



 私は今女性達の着せ替え人形になっている。

 着せ替えているのは帽子だけだが。



「あの……体型的にその優美な帽子は私にはまだ早いんじゃないかと」



 そんな貴婦人帽子かぶった事ないですし。

 御使い仕様のはただの麦わら帽子ですし。



「そうねえ……ならこれはもう少し年を取ってから。ひとまずこの帽子にしましょう」


「ありがとうございます。大事にします」



 アレクシスさんに手渡された帽子をかぶりキリリとした顔を見せる。

 初めてお宅訪問した時に御使い帽子を私の分も頼んでくれるとは言っていたが、まさかこんなにたくさん御使い帽子を注文しているとは……。

 笠バージョンの帽子も流行りそうで怖い。



「あとね、献上品を扱っているんだからこれも必要かと思って――」


 そう言いながらアレクシスさんが取り出したのは祝祭の時に見たあのグラデーション衣装。アンド帽子。



「……これは?」



 商人ヤマチカとしてはいったいどの反応が正しいのか必死で考えながら質問する。



「これは神の踊りの際の衣装なの。イシュリエお婆様のお力で用意して頂いたのよ」



 ……ほんと権力って使ってなんぼだよね。別に悪い事じゃないし。



「出来るだけ早く神の踊りを習得した方が良いと思いますよ」

「住民としての名誉ある務めね!」


「……はい」


「少し休んだら舞踏室に行きましょう」


「ローザは張り切り過ぎては駄目だよ。少しずつだよ」



 よし……やってやる。私はやれる子だ……!








 神の踊りの特訓は遊びに来たご近所さんも巻き込み、仕事に戻ったジーリさんからヤマチカ来訪を聞いたアルバートさんが涙目で止めに入るまで続いた。


 カセルさんは率先して参加しようとしていた。








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